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妊活お役立ちコラム

#26

男性にも不妊がある!男性不妊とはいったいどういうことなのか?

コラムイメージ写真

【監修】

江夏 徳寿:
医師、英(はなぶさ)メンズクリニック 院長。鹿児島大学医学部卒業、神戸大学大学院医学研究科卒業。生殖医療専門医。泌尿器科専門医。指導医。

二宮 英樹:
医師、データサイエンティスト。福岡県出身。東京大学医学部卒業。専攻は公衆衛生学。

阿部 裕紀:
薬剤師。東京都出身。星薬科大学薬学部卒業。専攻は薬物治療学。

※詳細プロフィールは記事の最後に記載しております。

男性不妊?耳慣れない言葉だけど男性不妊って一体何?

このコラムをお読みくださっている方は、「不妊」という言葉を調べているうちにここへお越しくださった方でしょうか。
中には、男性の不妊でお悩みの方もいるかと思います。またご自身は女性で、パートナーの不妊に悩んでいるという方もいるでしょう。実は最近、「男性不妊」に悩む方が少なくないのです。

これまで不妊治療というと、女性主導で行うものという認識が強かったですよね。でも、不妊治療は女性だけで取り組んでもうまく行きません。なぜなら、赤ちゃんを授かるためにはカップルで心と力を合わせる必要があるからです。
カップルで協力する必要があるのには訳があります。それは、男性側に原因がある不妊症は決して少なくないからです。

WHOの調査によれば、不妊症に悩むカップル全体の41%が、女性側の原因で不妊となっているそうです。しかし男性に原因があるケースは24%もあり、男女ともに原因があるケースも24%あります。合わせれば、男性にも原因がある、というカップルは48%にも上るのです。ほかにも11%は原因不明とされ、男性に原因があるのか女性に原因があるのか判然としません。

WHOの調査によると、男性の約半数に不妊の原因があるとされている


男性が原因で不妊になるなんて、一昔前までは想像もしなかったという年配の方も少なくないかもしれません。でも男性が持つ「妊娠させる能力」はとてもセンシティブ。さらに男性の生産する精子も、とても傷つきやすい存在なのです。熱に非常に弱く、耳下腺炎などの病気がもとで精子をつくる能力が低下することもあれば、熱すぎるお風呂やサウナ、長時間の自転車こぎ、しめつけのきつすぎる下着などが原因で精子の質が低下することもあります。

また、現在働き方が問題視されていますよね。労働に従事している男性の多くが、非常に強いストレスにさらされています。ストレスは精神的なものばかりではありません。満員電車に長く揺られる通勤や、スモッグにくすんだ空気、不規則になりがちな食事やメタボリックシンドロームも、身体的なストレスとなります。

もちろん、上司からの叱責や業績不振・同僚との折り合いの悪さなど、精神的なストレスも大いに関係してきます。睡眠不足も身体に悪い影響を与えます。長い通勤時間とさらに長い労働時間、終電間際までの残業に追われて、どうしても毎日規則的で十分な睡眠がとれないという男性は少なくないですよね。また、就寝前のスマートフォンなど、ブルーライトを長く見つめすぎることなども、脳がしっかり休み疲れがリセットされる「質の高い睡眠」を阻害する一因と言われています。
「忙しすぎて、疲れすぎて妻と仲良くする気になれない…」なんてため息をつくことがある方も増えているようですね。パートナーの女性から切ない目で見つめられて、良心の呵責に苦しんでいる男性も多いようです。実は、セックスレスも不妊症と関係しているのです。

セックスレスも不妊症と関係があるの?

先ほどもご紹介したように、セックスレスと不妊症には大きな関係があります。
「それでは男性にばかり原因があるみたいじゃないか」と、不満に感じる男性がいるかもしれません。ここで、不妊症について少し詳しくご紹介しましょう。
不妊症とは、避妊をせずにごく一般的な性交渉をもっている男女が、1年以上経過しても赤ちゃんを授からない状態を指します。不妊症は「病気」というよりも、カップルが妊娠したいのに妊娠できない「状態」を不妊症と呼んでいます。

不妊症の原因は非常にさまざまです。女性に原因があるケースも、男性に原因があるケースもあるとご紹介しましたが、女性に原因があるケースだけでもとてもたくさんの病気や異常が関わっています。たとえば、子宮や卵巣といった女性器に子宮内膜症や卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)・卵管のつまりや奇形のような病変があれば、妊娠をさまたげる原因となります。
男性の場合は、無精子症や乏精子症、性交に支障が出るEDなどの病気が原因となります。男性に原因がある場合も、かなり多くの病気が存在しているので、本格的に原因を究明して不妊治療を行うためには詳しい検査が必要になります。
そして、セックスレスも非常に大きな原因となります。セックスは生殖行為です。男性と女性の愛情を確かめる行為であるとともに、受精のためには欠かせない行為です。そのため、不妊治療の一環で体外受精を行っているカップルでない限り、セックスをしなければ赤ちゃんは授かりません。

では、どんな状態がセックスレスなのでしょうか。定義上は「1ヶ月以上性交渉のないカップル」をセックスレス状態と呼んでいます。しかしある調査によると、日本のカップルの実に44%がセックスレスとも言われており、まったく他人事ではない状況です。
セックスレスは離婚の原因にもなるため、非常に深刻な状態といえます。ではなぜ、セックスレスになってしまうのでしょうか。
まず多いのが、夫婦のいずれかが、あるいは夫婦ともに、パートナーに性的魅力を感じられなくなったという理由です。
また、二人目の赤ちゃんを考えている場合などは、妻が産後の忙しさや体調不良から夫の誘いを断っているうちに、それが当たり前になってしまうということも多いようです。

セックスレスは、愛情の減退と思われがちですが、そうではありません。日本人は性に対して奔放な性格ではない人が多数ですし、ちょっとしたストレスやホルモンバランスの変調で性欲が減退することはよくあることです。セックスは夫婦がお互いに愛情を確認し、保ち続けるためにもとても大切なので、セックスレスから愛情レスに発展してしまう前に、お互い話し合ったり、解消に向けて動き出してみましょう。
セックスレスかもしれない、と感じたら、まず手をつなぐ、肩を寄せ合うなどのボディタッチをしながらゆったりと話をしてみましょう。カフェやお散歩など、夫婦でいる時間を楽しめる工夫も効果的です。今はセックスレスに関するカウンセリングもあるので、カップルで気が合えばカウンセリングを受けることもおすすめです。
もちろん男性のEDなどが原因の場合もあるので、そういった場合は泌尿器科など専門医に相談しましょう。

精子にも老化がある?男性不妊には精子の質が関係している?

女性が結婚を急ぎたいと感じる理由のひとつに、「卵子が老化して妊娠しにくくなる前に結婚したい」というものがあります。女性の卵子は月に1度排出されますが、30歳を境に老化しはじめ、妊娠しにくくなっていきます。35歳を過ぎるとさらにさらに妊娠が難しくなり、40歳を超えるとかなり難しくなります。また更年期障害の時期となり、ホルモンバランスも乱れやすくなりますね。

では男性はどうなのでしょうか。芸能人など、60歳を過ぎても子宝に恵まれる人もニュースで見かけますが、こういったケースはごく稀と考えた方が良いそうです。
女性ほど早くはありませんが、男性の生殖機能にも老化は非常に大きく関係します。男性の妊娠させやすさは35歳くらいから老化しはじめ、やはり40代中盤からはかなり難しい状態となります。

またセックスレスではなく、一見きちんと性交渉が持てているように見えても、その「質」が問題となります。
加齢によって影響を受けた精子には、運動率が悪くなったり、奇形率が上がったり、精子量が減ったりといった変化が起きることがあります。
精子の数が少ないケースは乏精子症と呼ばれます。運動率が悪いケースは精子無力症(運動無力症)と呼ばれます。精液1mlあたり1500万以上精子がいれば正常、また40%以上の運動率(40%以上の精子が十分な前進運動をしている)があれば正常とされています。
これを下回ると、もともと健康体の男性であっても受精させる能力はぐんと低くなります。

男性は一度の射精で1億から4億の精子を排出します。しかし、そのほとんどが女性の膣の中で死んでしまうため、子宮にたどりつくのはたった1%と言われています。非常に厳しい生存競争を勝ち抜いて子宮に到達し、卵子までたどりつく精子は数百まで減っています。そして、幸運にも卵子に飛び込み受精できる精子は、たった1個なのです。
しかしもともとの精子量が非常に少ない場合や、前進運動がしっかりできる精子があまりいない状態では、妊娠の可能性は非常に低くなることは明白です。

さらに、老化によって弱ってしまっている精子は、受精したとしてもその後に必要となる細胞分裂を促す力が働きにくいことが指摘されています。それでは、受精卵が赤ちゃんとして成長することができません。
精子の奇形率というとちょっと怖い気がするかもしれませんが、健康な男性の正常な精液の中にも、一定量の奇形精子は含まれています。しかし老化によって奇形率は高まります。奇形の精子は受精する力が弱く、妊娠が難しい状態になります。また近年、精子の老化で問題視されているのが、「目に見えない変質」です。精子の中のDNAが、加齢によって損傷を受けているケースが発見されるようになってきたのです。DNAに損傷がある精子は、受精しても妊娠を継続させる力が弱く、赤ちゃんが育ちにくくなる危険性があります。
これまでは精子の量に目が行くことが多かったのですが、今後は精子の「質」が重視されるようになることは間違いありません。精子の質が衰えると、妊娠そのものが難しくなるだけでなく、せっかく妊娠した場合も流産につながってしまうおそれがあるということです。
近年の欧米の研究では、欧米男性の精子濃度がこの40年で半減してしまったという調査結果が出たそうです。日本人は、欧米人と比べて精子の数が少ないとも言われています。世界的に見ても男性の精液・精子は質・量ともに悪化していると言えます。そんな中で、どうすれば妊娠・出産へとたどりつくことができるのでしょうか。

男性不妊とわかったら、まずは治療と生活習慣改善を

「どうして赤ちゃんができないんだろう」「結婚してもう2年経つのに妊娠しない」…こうした疑問を感じたら、まずはカップルで検査を受けることが重要です。女性と比べ、男性は精液の検査を受けることに大きな抵抗を感じる方が多いようですね。しかし、原因が特定できなければ、対策を行うことができません。不妊検査は必ずカップルで受けましょう。

男性の場合は産婦人科の不妊外来のほか、男性専門の不妊クリニックや、泌尿器科の不妊外来などで受けることができます。最初は数回精液を採取して、量や質をチェックすることから始まります。恥ずかしいと感じるかもしれませんが、女性の場合は粘液検査や超音波検査・ホルモン検査などもっとたくさんの検査を受け、より痛い思いやつらい思いをすることになります。カップルで支えあうためにも、男性も積極的に検査を受けましょう。直接クリニックで検査するのが恥ずかしいという男性は、ベビーライフ研究所の郵送精子検査(郵送精子検査の申し込みができるページに移動します)といった、郵送での検査を受けるのも良いかもしれません。
検査を受け、精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう・精巣の静脈の血液が逆流してこぶができる病気で、精巣機能を低下させ、不妊症男性の40%近くに見られる)や勃起不全(ED)などの病気が発覚した場合は、その治療から行う必要があります。
たとえば精子がほぼ観察できなかったり、運動率が非常に悪かったりする「無精子症」と診断された場合でも、治療によって改善が可能です。無精子症から治療を経て、赤ちゃんを授かるカップルも珍しくはありません。
精子や精液にトラブルがある男性は10人に1人、無精子症と診断される人は100人に1人と言われています。どちらも決して珍しくはなく、治療法が無いわけではありません。怖がらず、きちんと検査を受けましょう。

検査を受け、治療を受けることになった場合も、原因が分からなかった場合も、ぜひ取り組んでいただきたい事があります。
それは生活習慣の見直しです。タバコや過度の飲酒は精子の質を低下させるだけでなく、性欲の減退にもつながります。またタバコは妊婦さんにとって大変悪影響を及ぼすため、できるだけこの機会に禁煙を心がけたいものです。

食生活の改善も非常に重要です。人の体は食べたもので作られます。それは精子も同様です。精子が体内で作られるまでには約74日間かかると言われています。食生活を改善したとしても、その結果が出るまでには2ヶ月半以上かかってしまいます。赤ちゃんが欲しいと思ったら、すぐにでも改善するようにしたいですね。
それでも仕事の付き合いでどうしても食生活が乱れてしまうという方、3食きちんとバランスを考えて食べられないという方は、サプリメントを上手に活用することもおすすめです。現在は男性の妊活専用サプリ・ベビーライフ研究所のマイシードのようなサプリメントも販売されています。仕事によっては食事の時間や質がバラバラになってしまうということもあるでしょう。しかしサプリメントなら食事の内容に関係なく、必要な栄養素を手軽に摂取することができます。またサプリメントを飲み、妊活に取り組んでいる姿を見せることで、パートナーの「自分だけがつらい思いをしている」「自分だけが頑張っている」という思いを緩和し、協力して取り組んでいるんだという気持ちになりやすくなります。
さらに、体調を整えホルモンバランスや自律神経を整えるためにも、睡眠時間も毎日きちんと取りましょう。身体を適度に休め、パートナーとの時間を大切にすることも、生活習慣を改善するために役立つのではないでしょうか。

【この記事の監修】

江夏 徳寿(えなつ のりとし)

医師、英(はなぶさ)メンズクリニック 院長。鹿児島大学医学部卒業、神戸大学大学院医学研究科卒業。生殖医療専門医。泌尿器科専門医。指導医。
大学卒業後、済生会福岡総合病院にて研修医として従事。その後亀田総合病院にて泌尿器科後期研修医プログラムを終了し、より専門的な分野を学ぶために神戸大学附属病院へ転職。
男性不妊を専門として臨床経験を積む傍ら、神戸大学大学院へ進学し研究にも従事した。
大学院卒業後は神戸大学にて教鞭をとりつつ、泌尿器科全般の臨床に従事し、腹腔鏡手術の技術認定医も取得。
神戸医療センター西市民病院副医長を経て、専門分野をより深く極めるために英ウィメンズクリニックへ就職。
男性不妊に留まらず、不妊をトータルで診療するために、婦人科診療も行っている。

二宮 英樹(にのみや ひでき)

医師、データサイエンティスト。福岡県出身。東京大学医学部卒業。専攻は公衆衛生学。
東京大学医学部卒業後、関西医科大学枚方病院、セレオ八王子メディカルクリニックなどで診療に従事。薬や手術に頼るだけではなく、コミュニケーションや触れ合いを活かした診療をモットーに患者との対話を重視する一方、データサイエンティストという異色の肩書きを持ち、医療技術や医薬品などの有効性について原典にあたり、評価手法やデータの有効性について常に確認を欠かさない。
地域包括ケア研究所にて医療局長を務め、医療者として地域社会のひとりひとりのための医療や正しい知識の普及活動に従事している。これまでヘルスケアメディアを通じて、正しく、分かりやすい健康情報の発信に携わってきており、医療や健康は一人ひとりの個人差がとても大きいため、個人にあわせた情報を記事で発信することの難しさを実感。情報を丁寧に紐解くことで、自分にあった正しい情報が分かるような発信を心がけている。

阿部 裕紀(あべ ひろき)

薬剤師。東京都出身。星薬科大学薬学部卒業。専攻は薬物治療学。
現在、化粧品会社に製造責任者という立場で品質管理などに携わる傍ら、薬に頼らないセルフケア(予防)を追求し、啓蒙活動を行う。ドラッグストアでの勤務経験を活かし、ライフスタイルに合わせた健康食品やサプリメントのアドバイスなども行う。 個人的には、薬はあまり好きではなく、自然なもの(食品に近いもの)で身体の不調を治すことを常に考え、アドバイスを行っている。

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