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妊活お役立ちコラム

#28

男性不妊の主な原因を探ってみる。男性不妊を知ることで何をしていけば良いかがわかってくる

コラムイメージ写真

【監修】

江夏 徳寿:
医師、英(はなぶさ)メンズクリニック 院長。鹿児島大学医学部卒業、神戸大学大学院医学研究科卒業。生殖医療専門医。泌尿器科専門医。指導医。

二宮 英樹:
医師、データサイエンティスト。福岡県出身。東京大学医学部卒業。専攻は公衆衛生学。

阿部 裕紀:
薬剤師。東京都出身。星薬科大学薬学部卒業。専攻は薬物治療学。

※詳細プロフィールは記事の最後に記載しております。

そんなこと考えたこともなかった・・「精子の質」が男性不妊の原因の一つだったとは

赤ちゃんが欲しいと思っているのにできないまま、歳月が過ぎた――決心の末、ふたりで受けた検査の結果は「男性不妊」だった…そんな経験をしているカップルは、少なくありません。

男性不妊とは、その名の通り男性側に原因がある不妊症です。不妊症は避妊をせずに一般的な性交渉を持っている男女が、1年以上妊娠しない状態を指しています。不妊症の検査をまだ受けていないカップルの場合、80%のカップルは1年以内に妊娠し、90%以上のカップルが2年以内に妊娠すると言われています。つまり1年目で20%、2年目には10%のカップルは妊娠できない状態です。健康な男女であれば、2年経過しても赤ちゃんができない場合は不妊症と言えます。ただし日本産婦人科学会では近年、1年以内に赤ちゃんができない状態を不妊症と定めました。結婚や出産の高齢化が進んでいることがその理由です。またこうした背景を受け、1年が経過していなくても不妊かどうか検査してみるカップルも増えています。

日本では、歴史的に見て不妊は女性側に原因があると考えられることが多かったため、現在に至っても「不妊症と診断された場合は、妻に原因があるのだろう」と思い込む男性は珍しくないでしょう。
しかし、男性不妊は不妊症に悩むカップルの半数近くにのぼります。この現実に、まず多くの男性が驚くのではないでしょうか。

さらに、精子の質が男性不妊の原因となっているケースがあります。男性不妊と聞くと、なんとなくセックスレスやEDといった、性交渉ができないことが原因となっている不妊症というイメージがあるかもしれません。射精がきちんと行えるならば、いつか妊娠するだろうと考えがちですよね。しかし不妊検査で精液をチェックすることからもわかるように、男性不妊の原因の多くは精子や精液に問題があるのです。
きちんと射精ができる状態の場合、男性側にはほとんど自覚症状がないことが少なくありません。しかし不妊症で検査を受ける人のうち10人に1人の男性は、精液や精子に問題を抱えています。決して少ない数ではありません。また若い時や健康な時は良い状態だったのに、年齢とともに悪化してしまうケースもあります。
では実際に、どんな問題が起きるのでしょうか。

男性不妊と関係のある精子の問題には「精子の量」や「精子の運動率」や「精子の形状」がある

男性側がきちんと性交渉を行えるにもかかわらず男性不妊と指摘されるとき、それは精液や精子に問題があることが疑われます。
精液や精子に問題があっても、一見普通に射精されているならば、自身では問題に気付くことはほとんどありません。精子は非常に小さな存在ですし、不妊を起こす異常はとても微細なものだからです。
精子はとてもデリケートです。精子の質にちょっとした異常が起きても、受精能力が低下してしまうことがあります。それでは、精子の質にどんな問題が起こり得るのかを詳しく見ていきましょう。

まずは「精子の量」です。精子は分泌物とまじりあって精液として排出されます。一度の射精に含まれる精子量は1億から4億といわれています。たった1ccにさえ、何千万という精子が含まれています。精子の濃度が1ccあたり2000万以上あれば正常と言われていますが、実際には4000万以上いた方が自然妊娠には効果的です。また精液の量についても、一回の射精あたり、2cc以上あった方が良いと言われています。

「精子の運動率」も非常に重要です。精子は自然に前進運動をするようインプットされています。前へと突き進む力が強ければ、女性の膣を泳ぎ切り、子宮をのぼり切って卵子にまで到達する可能性が高くなるからです。精子はとてもナイーブなので、女性の膣に入った段階でそのほとんどが死滅してしまいます。それでも生存競争を勝ち抜き、卵子1個あたり数百個の精子が生き残っていることが自然妊娠の理想です。しかし前進運動する力が無ければ、生存率がぐっと低くなり、卵子に到達できなくなります。射精から2時間経過した状態で、5割の精子が前進運動を行っているようなら正常といえます。しかし運動率が低く、前進運動する精子があまり見られないケースは少なくありません。精子が1時間もせずに動かなくなってしまうケースや、ほとんど動きがみられないケースなどさまざまです。

「精子の形状」も、不妊に影響を与えます。精子の中には、意外と奇形の精子が多く含まれています。正常な形の精子が少ないと、奇形精子症と呼ばれる病気となります。また、形だけでなく精子の持つ大切な「DNA」にキズがつくという問題も発生します。精子は男性のDNAを女性の卵子へと運ぶための方舟です。しかし、DNAにキズがついていると、妊娠しにくくなったり、流産しやすくなったりする原因になり得ます。

こうした3つの「精子の質」に異常が起きる原因はさまざまです。精索静脈瘤という病気をはじめ、造精機能や精子を排出する管の異常のほか、原因がわからないこともたくさんあります。

妊娠させる力を持った正常な精子が少なすぎる状態を「乏精子症」といいます。精液の中に精子がいない状態が「無精子症」ですが、精子自体が作られているのに通路がふさがっているだけであれば、治療によって自然妊娠も可能です。それ以外の原因の場合も、薬による治療などが行われます。精子の運動率が少ない場合は「精子無力症」といいます。

男性不妊は生活習慣や体質を改善していくことが効果的な場合がある

男性不妊は治療を受ける必要がある場合もありますが、生活習慣や体質そのものを改善していくことで良い結果に結びつくことも少なくありません。

男性の生殖機能が非常に繊細であることは男性自身がもっとも強く感じているのではないでしょうか。お酒を飲み過ぎてしまったり、精神的に参っていたりすると、目に見えて性的欲求が減退してしまうという状態は、多くの男性が経験していることでしょう。
あまりにも強いストレスやうつ状態が続くと、勃起障害を起こすこともあります。性交渉ができない状態では、妊活は難しくなってしまいます。

また精子の質も生活習慣や体質に左右されます。たとえば熱いお風呂に入り過ぎると熱に弱い精子がダメージを受けることもあります。「そんなことで?」と思われるかもしれませんが、自転車に乗りすぎるなど、外的な刺激によるダメージは少なくありません。また大人になってから耳下腺炎にかかり高熱が出ると、精巣炎(睾丸炎)になり、ダメージを受けることもあります。
こうした原因に思い当たらない場合も、現代人の生活習慣や食生活は、精子にダメージを与えることが少なくないのが現状です。

たとえば喫煙習慣。タバコは精子にも大きなダメージを与えるだけでなく、妊婦さんや赤ちゃんが副流煙を吸ってしまうことで、乳幼児突然死症候群の原因になることもあります。男性に限らず、妊活の第一歩は禁煙からといえます。喫煙習慣がある方は、今すぐに禁煙にとりかかりましょう。

また、食生活の乱れも非常に大きな悪影響を与えます。精子を生成する機能や、生殖機能に影響を及ぼす働きを持つ亜鉛や、精子の運動率を改善するという研究結果が出ている還元型コエンザイムQ10、細胞分裂や増殖に欠かせないポリアミンなどが不足すると、精子の質も低下してしまいます。
これらは食べ物から毎日必要量摂取することが難しいので、ベビーライフ研究所のマイシードのようなサプリメントで補うことが理想的ですね。
やはり野菜のビタミンやミネラル、肉や魚・貝類に含まれるたんぱく質は、良質で新鮮なものを食べたいものです。インスタントな食生活に頼り過ぎていると、やはり栄養にもかたよりがでますし、メタボリックシンドロームや生活習慣病といった不健康な体質にかたむいてしまいます。
昔から「精のつくもの」を食べると良いと言われたり、精力剤が好まれたりしてきましたが、こうしたものに本当に効果があるかどうかは科学的に検証されたわけではないそうです。それよりも、確実に精子の質を高める、栄養バランスの取れた食生活が肝心なのです。

最近は精子の質の中でも「精子の老化」が問題視されています。精子が老化すると奇形率が上がり、運動率が下がってキズも多くなります。35歳を過ぎると、精子はぐっと老化しやすくなります。精子の老化を防ぐためには、身体の若々しさを保つことがポイントですよね。食べ物や栄養素を見直すことから体質を改善し、若々しい精子を作り出す若々しい肉体を維持していきましょう。
また適度な運動は正常な精子を作り出す健康な体を維持するだけでなく、テストステロンという男性ホルモンの分泌をうながす効果もあります。テストステロンは妊活に欠かせないホルモンなので、運動不足を実感している方は軽い運動を生活に取り入れてみましょう。

心配な場合は早めに精液・精子検査をしてみる方法も

最近は妊娠を望む男女の高齢化が問題になっています。男性も女性も、年齢を重ねるごとに精子・卵子やホルモンバランスも老化の影響を受け、妊娠しにくくなっていくからです。女性は高齢出産という言葉があるので、より年齢に対して神経質になります。でも、男性はあまり妊活と年齢を意識していない方も多いですね。実際に高齢にさしかかっている芸能人が赤ちゃんを授かるニュースも報道されているので、男性はいつまでも妊娠させる力を持っているように錯覚してしまいます。でも、それはまさに「錯覚」でしかありません。男性の精子も、老化の影響を強く受けてしまいます。

先ほどもご紹介しましたが、老化した精子は奇形率がアップしたり、運動率が低下するなどの問題が起こりやすくなります。また精液の酸化が進んでDNAにキズもつきやすくなるため、受精能力はどんどん低下していきます。さらに老化によって、男性の体も前立腺肥大やEDといった病気のリスクが高くなります。こうした病気が起きれば治療が先決になり、妊活は後回しになってしまいます。

また、運動によって分泌が促進される男性ホルモン「テストステロン」も、加齢によって分泌が減ってしまいます。テストステロンが減少すると、男性更年期障害を引き起こす原因にもなります。
テストステロンは血液や唾液に含まれていますが、実は精液中には非常に濃厚に含まれています。しかし精液中のテストステロンは、20代から30代にかけて早くも減少しはじめます。
自然妊娠を望むのであれば、男性も20代から35歳くらいまでがピークです。それから先はどんどん妊娠力が低下していくと考えましょう。

精液検査での現状把握と栄養補給が大切です

男性は仕事が忙しかったり、食生活や生活習慣を改めることが難しかったりするため、妊活が思うように進まないことも考えられます。何度も病院に通うことと仕事は、両立がかなり大変です。

そこで、早めに精液検査を受けておくことをおすすめします。今は妊娠を積極的に望んでいない状態でも、いつでも赤ちゃんを迎えられるコンディションでいることは大切です。
郵送精子検査の購入も可能です。(郵送精子検査の申し込みができるページに移動します)

検査を受けて異常が見つかれば、すぐに妊活に取り組むことができます。また男性の精子はすべて作り変えられるまでに74日以上かかると言われています。そのため、生活習慣や食生活改善・体質改善を始めたとしても、その影響が精子や精液の状態に現れ始めるまでに短くても2~3ヶ月はかかってしまいます。栄養補給としてサプリメントを飲み始めた場合も同じです。影響が出始めるまでには時間がかかるため、少しでも不安や疑問、心配がある場合は早めに検査を受けましょう。

とはいっても、これまで妊活にまったく興味が無かったという方にとって、精液検査は非常にハードルが高いですよね。女性のパートナーと一緒に受ける場合は、総合病院の産婦人科や街の産婦人科クリニックでも受けることができます。ただ、男性ひとりで産婦人科を受診するのはかなり勇気が必要なものです。そういった場合は不妊専門外来を受診するか、泌尿器科で検査を受けましょう。妊活のための不妊症チェックとして精液検査を受けたい旨を、あらかじめ電話などで伝えておくとスムーズに検査を受けることができます。

もしパートナーの女性から「妊活のために検査を受けようと思うのだけれど」と相談されたら、必ず一緒に検査を受けたいですね。そうすることで一刻も早く異常に気付き、妊活に取り組むことができるようになりますし、パートナーとの信頼関係もぐっと高まるのではないでしょうか。

【この記事の監修】

江夏 徳寿(えなつ のりとし)

医師、英(はなぶさ)メンズクリニック 院長。鹿児島大学医学部卒業、神戸大学大学院医学研究科卒業。生殖医療専門医。泌尿器科専門医。指導医。
大学卒業後、済生会福岡総合病院にて研修医として従事。その後亀田総合病院にて泌尿器科後期研修医プログラムを終了し、より専門的な分野を学ぶために神戸大学附属病院へ転職。
男性不妊を専門として臨床経験を積む傍ら、神戸大学大学院へ進学し研究にも従事した。
大学院卒業後は神戸大学にて教鞭をとりつつ、泌尿器科全般の臨床に従事し、腹腔鏡手術の技術認定医も取得。
神戸医療センター西市民病院副医長を経て、専門分野をより深く極めるために英ウィメンズクリニックへ就職。
男性不妊に留まらず、不妊をトータルで診療するために、婦人科診療も行っている。

二宮 英樹(にのみや ひでき)

医師、データサイエンティスト。福岡県出身。東京大学医学部卒業。専攻は公衆衛生学。
東京大学医学部卒業後、関西医科大学枚方病院、セレオ八王子メディカルクリニックなどで診療に従事。薬や手術に頼るだけではなく、コミュニケーションや触れ合いを活かした診療をモットーに患者との対話を重視する一方、データサイエンティストという異色の肩書きを持ち、医療技術や医薬品などの有効性について原典にあたり、評価手法やデータの有効性について常に確認を欠かさない。
地域包括ケア研究所にて医療局長を務め、医療者として地域社会のひとりひとりのための医療や正しい知識の普及活動に従事している。これまでヘルスケアメディアを通じて、正しく、分かりやすい健康情報の発信に携わってきており、医療や健康は一人ひとりの個人差がとても大きいため、個人にあわせた情報を記事で発信することの難しさを実感。情報を丁寧に紐解くことで、自分にあった正しい情報が分かるような発信を心がけている。

阿部 裕紀(あべ ひろき)

薬剤師。東京都出身。星薬科大学薬学部卒業。専攻は薬物治療学。
現在、化粧品会社に製造責任者という立場で品質管理などに携わる傍ら、薬に頼らないセルフケア(予防)を追求し、啓蒙活動を行う。ドラッグストアでの勤務経験を活かし、ライフスタイルに合わせた健康食品やサプリメントのアドバイスなども行う。 個人的には、薬はあまり好きではなく、自然なもの(食品に近いもの)で身体の不調を治すことを常に考え、アドバイスを行っている。

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