男性不妊とサプリメント(栄養素)の関係性は?また効果が出るまでどれ位時間が必要になるの?

【監修】
江夏 徳寿:
医師、英(はなぶさ)メンズクリニック 院長。鹿児島大学医学部卒業、神戸大学大学院医学研究科卒業。生殖医療専門医。泌尿器科専門医。指導医。
二宮 英樹:
医師、データサイエンティスト。福岡県出身。東京大学医学部卒業。専攻は公衆衛生学。
阿部 裕紀:
薬剤師。東京都出身。星薬科大学薬学部卒業。専攻は薬物治療学。
※詳細プロフィールは記事の最後に記載しております。
サプリメントは薬ではなく、日々の食事で不足する栄養素を補うためのものです。そのため、様々な要因が考えられる男性不妊の場合、時間がかかり、即効性というものはありません。その効果が出てくるまで、最低でも三カ月は必要と考えた方がいいでしょう。
そして目安となるこの「三カ月」ですが、これは新しい精子が作られ、成長し、一人前になるまでの期間を指します。つまり、サプリメントの効果が表れる場合は、四カ月目からです。しかし、精子の質というのは、目で確かめられるものではありません。
ではどうやってその効果を確認したらいいのか?それは、“サプリの服用を始めてから体調が良くなった”、または“やる気が出て調子がいい”など、そういった今までと比較し良くなったかどうか等をその判断基準にしてみるといいでしょう。
それでもどうにも漠然としていて、なんだか自分の感覚だけでは頼りない、ということであれば、病院(泌尿器科、不妊治療専門病院、産婦人科など)で保険適応の精液検査を定期的に行い、結果を比較するのもいいかもしれません。精子の質や量を確認できるものなので原因を明確にすることができます。
男性妊活の代名詞、「亜鉛」「マカ」の効果
亜鉛

男性妊活と言えば、まず最初に名が挙がってくるのが亜鉛です。滋養強壮や健康な精子の生成など、男性の妊活には必須です。
どのような効果が期待できるの?
男性の勃起障がいで亜鉛のサプリメントを摂取している場合、個人差はあるようですが、早い人になると翌朝には「朝だち」していた、という人も中にはいるようです。これは稀なケースかもしれませんが、長い間、朝だちをしていなかったような人のほうが、意外に効果を感じやすいところがあるようです。
また、男性の精子の数を増やすのに、亜鉛のサプリメントを摂取している人がいると思いますが、即効性はないと考えておいたほうがいいでしょう。これはサプリに効果がないのではなく、精子自体が一人前になるまでに70日間ほどかかると言われているからです。まさに、“ローマは一日でならず”!僅か一日や二日でいきなり精子の量が増えることはないと心しておいてください。薬ほどの即効性はありませんが、その分副作用も小さく、体への負担も少ないのがサプリメントのいいところです。焦らずゆっくりした気持ちで効果が出るのを待つほうがストレスにもなりません
亜鉛のベストな摂り方
亜鉛はサプリメントの中でも吸収率が低いという特徴があります。朝食後や昼食後の30分から1時間くらいの、吸収率の良い時間帯に摂ることをお勧めします。起床直後や空腹時は、胃に負担がかかるため、できるだけ避けましょう。
また、亜鉛はビタミンCとクエン酸と一緒に摂ると吸収率が向上します。サプリだけでなく、食事の際もビタミンCとクエン酸を含む食べ物を意識するようにしましょう。
マカ

亜鉛と共に、男性妊活の代名詞とも言えるのが「マカ」。マカの一日の摂取量の目安としては、1,000mgから3,000mgといわれています。ただ、ほかのサプリメントと併せて摂取している場合には、他の成分との兼ね合いや相性などもあります。ですので、不妊治療を専門とする医師や薬局の薬剤師などに相談しながら、記載の摂取量を守っていくのが好ましいでしょう。
また、マカのサプリメントのみの摂取でも、薬ではないとはいえ副作用が出ることもあります。少量からはじめは摂取し、体調を見ながら自分に適した量を見定めていくようにしましょう。
サプリメントの食べ方に、特に決まりはありませんが、1日の摂取量を数回に分けて摂るようにした方が、体への負担も少なくすみません。空腹時の摂取は、胃もたれの原因にもなりかねませんので、食後の摂取をおすすめします。粉末の場合は、食事と一緒の摂取がいいでしょう。
数カ月を目安に長期的スパンで効果を期待

マカの効果を「妊娠」と考えるならば、その摂取期間を具体的にお伝えするのは、なかなか難しいものがあります。良質な睡眠や、バランスのいい食事など、妊娠に至るまでにはほかの要素も関わってくるからです。
また、その人その人のサプリメントに対する感性の良し悪しや、体そのものの個体差というのがあります。摂取して3カ月ほどで妊娠したという人もかなり多くいますし、1カ月で妊娠した、なんていう人もいるぐらいです。
なににせよ体質を改善すること自体、時間がかかるもの。だいたい2〜3カ月目ぐらいから徐々に変化するケースが多いです。なるべくなら半年ほど摂取してみるといいでしょう。ただし、マカもいいことばかりではありません。先ほどもお伝えしたように、サプリメントは小さくても副作用が出ることもあり、マカの場合、逆にホルモンバランスが崩れてしまうようなケースもあります。体調がすぐれないなど何らかの異変があれば、摂取をすぐに中止してください。
何よりサプリメントの効果を期待するあまり、妊娠はまだかまだかと日を数え、それが返ってストレスとなることもあります。
男性は特に妊活自体にまだまだ抵抗感のある人も多いと思われます。奥様も夫のサプリメントの飲み忘れなどに目くじらを立てず、広く穏やかな心で一緒に妊活に取り組まれるといいでしょう。
【この記事の監修】

江夏 徳寿(えなつ のりとし)
医師、英(はなぶさ)メンズクリニック 院長。鹿児島大学医学部卒業、神戸大学大学院医学研究科卒業。生殖医療専門医。泌尿器科専門医。指導医。
大学卒業後、済生会福岡総合病院にて研修医として従事。その後亀田総合病院にて泌尿器科後期研修医プログラムを終了し、より専門的な分野を学ぶために神戸大学附属病院へ転職。
男性不妊を専門として臨床経験を積む傍ら、神戸大学大学院へ進学し研究にも従事した。
大学院卒業後は神戸大学にて教鞭をとりつつ、泌尿器科全般の臨床に従事し、腹腔鏡手術の技術認定医も取得。
神戸医療センター西市民病院副医長を経て、専門分野をより深く極めるために英ウィメンズクリニックへ就職。
男性不妊に留まらず、不妊をトータルで診療するために、婦人科診療も行っている。

二宮 英樹(にのみや ひでき)
医師、データサイエンティスト。福岡県出身。東京大学医学部卒業。専攻は公衆衛生学。
東京大学医学部卒業後、関西医科大学枚方病院、セレオ八王子メディカルクリニックなどで診療に従事。薬や手術に頼るだけではなく、コミュニケーションや触れ合いを活かした診療をモットーに患者との対話を重視する一方、データサイエンティストという異色の肩書きを持ち、医療技術や医薬品などの有効性について原典にあたり、評価手法やデータの有効性について常に確認を欠かさない。
地域包括ケア研究所にて医療局長を務め、医療者として地域社会のひとりひとりのための医療や正しい知識の普及活動に従事している。これまでヘルスケアメディアを通じて、正しく、分かりやすい健康情報の発信に携わってきており、医療や健康は一人ひとりの個人差がとても大きいため、個人にあわせた情報を記事で発信することの難しさを実感。情報を丁寧に紐解くことで、自分にあった正しい情報が分かるような発信を心がけている。

阿部 裕紀(あべ ひろき)
薬剤師。東京都出身。星薬科大学薬学部卒業。専攻は薬物治療学。
現在、化粧品会社に製造責任者という立場で品質管理などに携わる傍ら、薬に頼らないセルフケア(予防)を追求し、啓蒙活動を行う。ドラッグストアでの勤務経験を活かし、ライフスタイルに合わせた健康食品やサプリメントのアドバイスなども行う。
個人的には、薬はあまり好きではなく、自然なもの(食品に近いもの)で身体の不調を治すことを常に考え、アドバイスを行っている。