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コエンザイムQ10には還元型と酸化型が存在している

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【監修】

江夏 徳寿:
医師、英(はなぶさ)メンズクリニック 院長。鹿児島大学医学部卒業、神戸大学大学院医学研究科卒業。生殖医療専門医。泌尿器科専門医。指導医。

二宮 英樹:
医師、データサイエンティスト。福岡県出身。東京大学医学部卒業。専攻は公衆衛生学。

阿部 裕紀:
薬剤師。東京都出身。星薬科大学薬学部卒業。専攻は薬物治療学。

※詳細プロフィールは記事の最後に記載しております。

男性に不妊の原因がある場合、精子の数が少なかったり(乏精子症)、精子の運動が不活発だったり(精子無力症)、精子の形態が正常でない(奇形精子症)ことが考えられます。こうした症状を呈することをOAT症候群といい、乏精子症(Oligozoospermia)、精子無力症(Asthenozoospermia)、奇形精子症(Teratozoospermia)の頭文字から命名されています。

コエンザイムQ10がOAT症候群に対して改善が期待できる?

OAT症候群では、精子濃度、精子運動率、正常精子形態率のいずれもが基準値を下回ることが多く、どれか1つだけが悪化するケースは希だといわれます。
なぜ、OAT症候群になるのかというと、精巣の精子をつくる機能に何らかの障害があることが考えられます。しかし、その原因を特定するのはむずかしく、特効薬もまだ見つかっていないというのが現状です。

しかし、近年、抗酸化物質であるコエンザイムQ10が、OAT症候群の改善に効果があるという研究結果が数多く報告されています。
たとえば、イランで行われた研究では、OAT症候群の男性47名を2つのグループに分け、一方のグループ(23名)にはコエンザイムQ10を1日に200mg、もう一方のグループ(24名)にはプラセボ(偽薬)をそれぞれ3か月間服用してもらう臨床試験を行っています。

その結果、コエンザイムQ10を服用したグループでは、精子を守っている精奬という液体のコエンザイムQ10の平均濃度が44.74ng/mlから68.17ng/mlに上昇。さらに、精奬中の酸化ストレスの度合いを測ったところ、コエンザイムQ10の服用グループでは31.04pg/mlから22.86pg/mlに低下したのに対して、プラセボグループでは34.91pg/mlから42.54pg/mlに上昇したことがわかりました。

男性の不妊には抗酸化物質のコエンザイムQ10が効果的?

これらの結果から、コエンザイムQ10を服用することで、男性不妊患者の精液中の抗酸化能力を高め、酸化ストレスを低減させることに効果があると結論づけています。

また、同じくイランの研究で、OAT症候群の患者を2つのグループに分け、一方にはコエンザイムQ10を1日に200mg、もう一方のグループにはプラセボを、それぞれ26週間服用する臨床試験を行っています。服用終了後と服用終了の12週間後に精液検査、ホルモン検査をしたところ、コエンザイムQ10のグループでは、62%の男性の精子濃度が改善、27%は変化なし、11%は低下、精子運動率では、57%の男性が改善、27%は変化なし、16%は低下、正常精子形態率では、52%の男性が改善、25%は変化なし、23%は低下するという結果となりました。

これらの数値から、コエンザイムQ10は、男性不妊患者の精液所見を改善するのに効果があると結論づけられるとともに、服用期間が長くなればなるほど改善効果が期待されることがわかりました。

イタリアの大学でも、60名の男性不妊者(27〜39歳)を2つのグループに分け、一方のグループでは1日200mgのコエンザイムQ10を6か月間服用し、もう一方のグループではプラセボを服用する臨床試験を行っています。その結果、コエンザイムQ10を服用したグループでは、コエンザイムQ10の血中や精子細胞中の濃度が高まるとともに、精子の運動率が改善されました。

また、日本でも同様の臨床試験が行われています。OAT症候群の患者210名(23〜55歳)を対象に、1日にコエンザイムQ10を120mg、同じく抗酸化力があるといわれるビタミンE40mgを服用してもらい、服用後1、3、6、9、12か月後の値を調べました。
それによると、服用後3か月の時点で精子運動率の改善がみられ、精子濃度も上昇傾向にありました。精液量、奇形率については差がありませんでしたが、自然妊娠に至った症例が7例ありました。

コエンザイムQ10には「酸化型」と「還元型」があります。

このように、コエンザイムQ10には男性の不妊症状を改善する効果が認められます。
しかし、コエンザイムQ10なら何でもいいかというと、そんなことはありません。実は、コエンザイムQ10にはいくつかの種類があるのです。その代表的なものとして「酸化型」と「還元型」の2つがあり、サプリメントして広く流通しているのは、製造しやすく、コストがかからない酸化型のコエンザイムQ10になります。
しかし、酸化型のサプリメントは、体内にあるコエンザイムQ10とはタイプが異なるため、吸収率が悪くなります。体内で吸収させるためには、酸化型のコエンザイムQ10を還元型に変換させる必要があるのです。

もちろん、すべてを還元型に変えられるのであれば問題ありませんが、酸化型の何割かは変換されずに体外に排出されてしまいます。しかも、年齢とともに、酸化型を還元型に変換する能力は低くなるといわれています。

その点、還元型のコエンザイムQ10は、問題なく体内に吸収され、その効果を発揮します。市販されているサプリメントには酸化型が多く、値段も手頃ですが、デメリットとしては、上述したように吸収率の低さが挙げられます。それに対して、還元型のサプリメントは多少値段が高くなりますが、それに見合うだけの効果はあるといえるでしょう。

【この記事の監修】

江夏 徳寿(えなつ のりとし)

医師、英(はなぶさ)メンズクリニック 院長。鹿児島大学医学部卒業、神戸大学大学院医学研究科卒業。生殖医療専門医。泌尿器科専門医。指導医。
大学卒業後、済生会福岡総合病院にて研修医として従事。その後亀田総合病院にて泌尿器科後期研修医プログラムを終了し、より専門的な分野を学ぶために神戸大学附属病院へ転職。
男性不妊を専門として臨床経験を積む傍ら、神戸大学大学院へ進学し研究にも従事した。
大学院卒業後は神戸大学にて教鞭をとりつつ、泌尿器科全般の臨床に従事し、腹腔鏡手術の技術認定医も取得。
神戸医療センター西市民病院副医長を経て、専門分野をより深く極めるために英ウィメンズクリニックへ就職。
男性不妊に留まらず、不妊をトータルで診療するために、婦人科診療も行っている。

二宮 英樹(にのみや ひでき)

医師、データサイエンティスト。福岡県出身。東京大学医学部卒業。専攻は公衆衛生学。
東京大学医学部卒業後、関西医科大学枚方病院、セレオ八王子メディカルクリニックなどで診療に従事。薬や手術に頼るだけではなく、コミュニケーションや触れ合いを活かした診療をモットーに患者との対話を重視する一方、データサイエンティストという異色の肩書きを持ち、医療技術や医薬品などの有効性について原典にあたり、評価手法やデータの有効性について常に確認を欠かさない。
地域包括ケア研究所にて医療局長を務め、医療者として地域社会のひとりひとりのための医療や正しい知識の普及活動に従事している。これまでヘルスケアメディアを通じて、正しく、分かりやすい健康情報の発信に携わってきており、医療や健康は一人ひとりの個人差がとても大きいため、個人にあわせた情報を記事で発信することの難しさを実感。情報を丁寧に紐解くことで、自分にあった正しい情報が分かるような発信を心がけている。

阿部 裕紀(あべ ひろき)

薬剤師。東京都出身。星薬科大学薬学部卒業。専攻は薬物治療学。
現在、化粧品会社に製造責任者という立場で品質管理などに携わる傍ら、薬に頼らないセルフケア(予防)を追求し、啓蒙活動を行う。ドラッグストアでの勤務経験を活かし、ライフスタイルに合わせた健康食品やサプリメントのアドバイスなども行う。 個人的には、薬はあまり好きではなく、自然なもの(食品に近いもの)で身体の不調を治すことを常に考え、アドバイスを行っている。

本記事の執筆者

ベビーライフ研究所編集部

ベビーライフ研究所編集部
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