男性妊活とマカの関係を探る。マカが妊活サプリとして認知されているのはなぜか?マカとはいったい…

【監修】
江夏 徳寿:
医師、英(はなぶさ)メンズクリニック 院長。鹿児島大学医学部卒業、神戸大学大学院医学研究科卒業。生殖医療専門医。泌尿器科専門医。指導医。
二宮 英樹:
医師、データサイエンティスト。福岡県出身。東京大学医学部卒業。専攻は公衆衛生学。
阿部 裕紀:
薬剤師。東京都出身。星薬科大学薬学部卒業。専攻は薬物治療学。
※詳細プロフィールは記事の最後に記載しております。
男性不妊を指摘されたり、男性妊活をスタートしたりする人にとって、初めにしてみることのひとつが「男性妊活にピッタリのサプリメント探し」ではないでしょうか。男性妊活にピッタリのサプリメントと言われても、どんな成分が良いのかがわからず、いろいろと検索してみると思います。その中で、よく目にする植物のひとつが「マカ」です。ノニやアガリクスなどとともに、健康に良い植物として知られるようになりましたよね。
特にマカは、男性の精力剤の成分として知られているようです。でも、精力をアップさせるだけでは、男性妊活に最適とは言えません。男性妊活に必要なのは、健康で元気な精子をたくさん作り出すパワーです。精子の質を高めてこそ、妊活につながります。
ではマカは、本当に男性妊活にふさわしい植物なのでしょうか。まずはマカについて調べてみましょう。
マカは南米ペルーが原産のアブラナ科の植物で俗に言う「強壮作用」で有名

マカとはそもそもどんな植物なのかご存知ですか?マカという響きからどんなものを想像するでしょう。明日葉のような葉っぱでしょうか。それともアサイーのような果実でしょうか。実は、マカはアブラナ科の植物で、根菜の一種なのです。アブラナ科はカブやダイコンも属していて、マカもカブのような見た目をしています。カブといっても、日本の聖護院かぶらや桜島だいこんのように立派なものではありません。スーパーで売っている普通のカブとも異なります。葉っぱはとてもショボショボとしていて、カブの本体部分も、なんだかシワシワしています。大きさも、子どもの握りこぶしくらいしかありません。「本当にこのカブに、そんなにすごいパワーがあるの?」と不思議に思うかもしれませんが、マカの故郷、育つ環境がすごいのです。
マカは南米ペルーが原産です。アンデス地方の4000~5000mという高山地帯で育ち、とても過酷な環境に耐えています。そこは富士山の山頂よりもずっと高くて空気も薄く、昼と夜の寒暖差が30度にものぼります。さらに紫外線も非常に強いので、森林限界(森林が育つ限界の区域)とされています。灌木のしげみすら見当たらないような一面の荒野の中で、マカはひっそりと成長しているのです。
マカはペルーの人々に親しまれてきた野菜ですが、西洋の人々がマカのことを知ったのは15世紀にさかのぼります。スペイン軍のペルー進攻時に、軍馬があまりにも過酷な環境に慣れず、子どもが生まれなくなってしまった時、現地の人が教えてくれたのがマカの葉でした。マカを普段から食べているアンデス地方の人々は、背が高く、子どもも多く生まれると伝えられていて、マカのパワーの恩恵と考えられているそうです。
では、マカはいったいどんな栄養素を秘めているのでしょうか。
男性の妊活サプリとしてよく耳にする「マカ」その栄養素について調べてみた
マカは、あまりにもたくさんの成分をたっぷりと含んでいるため、完全食と呼ばれています。非常に厳しい、作物もあまり収穫できない場所で育つため、アンデスの高地に住む人々にとって大変貴重な栄養源になっています。西洋に伝わっても、その栄養素の高さからさまざまな効能をもつハーブとして、薬代わりに使用されてきました。では具体的にどんな栄養素が含まれているのかを見ていきましょう。
○アミノ酸18種(必須アミノ酸を含む)
○ビタミンB群
○アスパラギン酸
○カルシウム
○リン
○鉄分
○亜鉛
○アルカロイド
○デキストリン
○アントシアニン
○サポニン
○テルペノイド
○ステロイド
○マグネシウム
上記のような成分がたっぷりと含まれているのです。骨の形成や精神の安定に欠かせないカルシウムは牛乳の約3倍、鉄分もレバーの約3倍も含まれているんですよ。アミノ酸、特に必須アミノ酸は、たんぱく質を構成するためには欠かせない成分です。もちろん精子もアミノ酸から合成されたたんぱく質から作られます。質の良い精子を作るためには、質の良いアミノ酸を摂らなければなりません。その点で、マカは非常に適していると言えます。鉄分やカルシウムも非常に豊富なので、最近では男性妊活だけでなく、女性の妊活にも用いられるようになりました。
なぜマカにはそんなに優れた栄養素がたくさん含まれているの?
では、なぜマカにはそんなに優れた成分がたっぷり含まれているのでしょうか。マカが育つアンデスの高原は、決して植物に優しい場所ではありません。たとえば北海道や長野の大地のように、美味しい果物や野菜がたっぷりと栽培されるような豊かな土地ではまったく無いのです。実は、この厳しい環境こそがマカのパワーを作り出しているのです。植物には、自らを守るための力がもともと備わっています。
たとえば、ポリフェノールがそのひとつです。こういった成分を二次代謝産物と呼んでいます。二次代謝産物は、繁殖力や美しさなどに影響を与えると言われています。ポリフェノールの一種でありマカにも含まれているアントシアニンは、ブルーベリーに豊富な成分として知られています。特に北欧産のブルーベリーには通常の何倍ものアントシアニンが含まれているのですが、その秘密は北欧の「白夜」による「強い紫外線」なのです。アントシアニンやフラボノイドといった植物がもつ薬効成分や有効成分の中には、植物が自らの身を紫外線から守るために作り出したものがいろいろあります。
マカが育つ空気の薄い高地も、紫外線が非常に強い地域です。そのために、マカは大地の養分を徹底的に蓄え、有効成分をたくさん作り出すのです。あまりにも貪欲に大地の栄養を吸い上げるため、一度マカを収穫すると大地が枯れ果ててしまうと言われています。そのため、連作することはできず、数年間土地を休ませて養分を蓄えさせる必要があるほどなのです。同じアンデス原産のトマトも、限界まで水や養分を与えない方が甘くて栄養豊富な実が生ると言われています。トマトも、厳しいアンデスで生き延び種という子孫を残すために、厳しい環境下におかれたほうが徹底的に養分を貯めこむという性質を持っているのです。
マカに含まれているステロイドも、ポリフェノールと同じ二次代謝産物です。サポニンも同様で、植物ステロイドと呼ばれています。テルペノイドも二次代謝産物です。つらい境遇に育ち、立ち向かうために自らを守るための成分を作りだす……マカはとても健気でたくましい植物なのです。そんなマカは乾燥させてから利用されます。水分をより多く飛ばした方が、栄養価がしっかり残るそうですよ。
精力増強でマカが取り上げられること多いが本当のところどうなのか?

マカはスーパーフードということが分かりましたが、実のところ昔から言われてきた「精力増強」という点についてはどうなのでしょうか。マカに含まれているアルカロイドという成分は、ストレスからくる勃起障害(ED)に良い影響を及ぼします。
亜鉛は、男性のミネラルと呼ばれ、性欲減退などにも効果を発揮します。ほかにも、マカはストレスを軽減し自律神経を整えたり、男性ホルモンを整えたりする働きも持っていると言われています。
男性の性欲をもっとも削ぐもののひとつがストレスですよね。人間関係のいざこざや過労・睡眠不足などストレスにさらされると、性欲が減退してしまいます。マカには、そんな男性の元気を減退させてしまうストレスを軽減し、心と身体を整える働きがあるのです。さらにアスパラギン酸には、慢性疲労を改善する働きがあると言われています。新陳代謝やタンパク質の合成を促進させることで、疲労回復や滋養強壮に役立つと考えられています。こうした働きが注目されて、男性のための精力増強剤としてもてはやされるようになったのです。
そこで思い出していただきたいのが、アンデス地方には「背が高い人が多く、子どもも多く生まれる」という話です。繁殖力を失った軍馬も元気になったというマカには、やはり精力増強パワーがあるのでしょう。実際に滋養強壮になる成分がたっぷりと含まれていますし、勃起障害などにも効果的な成分を含んでいるので、精力剤としてのパワーも持っていると言えますね。
マカと一緒に摂取してほしい成分…亜鉛
これまで見てきたように、マカには驚くほど優れた成分がたくさん含まれています。しかし、マカだけを食べるよりも、はるかにマカの効果を際立たせる摂取方法があるんです。マカには亜鉛が含まれているのですが、亜鉛は男性のためのミネラルと呼ばれるほど、男性の生殖機能には欠かせない成分です。実は精液の中にも亜鉛がたくさん含まれています。亜鉛は生命維持に関わる必須ミネラルで、多くの酵素の働きに関わっています。そして、新陳代謝や細胞分裂を促します。精子も細胞の一種なので、健康で元気な精子を作り出すためには欠かせません。
万一亜鉛が不足すると、細胞分裂が活発な精子形成の機能が低下してしまいます。つまり精子が正常に作られなくなってしまうのです。若いころに亜鉛が不足すると、精機能の成熟を阻害してしまうこともあります。また精機能には関係ありませんが、味覚障害や免疫力減退など恐ろしい症状にもつながります。亜鉛は精液の一部の前立腺液というものにたくさん含まれているのですが、なんと1度で射精する精液の中に、1㎎も含まれているそうですよ。
亜鉛が不足すると、爪に白い斑点ができます。また味覚障害の先駆として、口の中が常に苦く感じるようになるそうですよ。亜鉛はヒトの身体の中では作ることができないので、絶対に食べ物やサプリメントで補う必要があります。亜鉛が吸収されるのは小腸なのですが、吸収率が悪く30%くらいしか身体に取り込まれないのです。亜鉛の吸収を助けてくれる成分は、クエン酸やビタミンC、動物性たんぱく質などです。マカと亜鉛を摂取するためのサプリメントなら、クエン酸やビタミンCも配合されているとより良いですね。
マカと一緒に摂取してほしい成分…コエンザイムQ10
もうひとつマカと一緒に摂取してほしいのが、コエンザイムQ10です。コエンザイムQ10も、強い抗酸化作用を持っています。コエンザイムQ10は、お肉や魚類、野菜やナッツ類なども含まれています。特に青魚には多く含まれます。またコエンザイムQ10はもともと人の身体の中にも存在しており、エネルギー生産にも大きく関わっています。しかし、加齢とともにどんどん減少していってしまいます。その結果、抗酸化作用が低下して活性酸素による老化が進んだり、エネルギーが上手に産出できなくなったりするのです。
40歳を過ぎたころからコエンザイムQ10は減少していくと言われています。「40の坂を越えると疲れが取れなくなる」と言われるのも、そのせいかもしれませんね。コエンザイムQ10には酸化型と還元型があり、還元型の方が無駄なく働いてくれます。逆に酸化型だと、無駄が多くエネルギーを上手に作り出すことができません。そのため、コエンザイムQ10が含まれるサプリメントを選ぶときは、還元型を使用しているものを選ぶことが重要です。

【この記事の監修】

江夏 徳寿(えなつ のりとし)
医師、英(はなぶさ)メンズクリニック 院長。鹿児島大学医学部卒業、神戸大学大学院医学研究科卒業。生殖医療専門医。泌尿器科専門医。指導医。
大学卒業後、済生会福岡総合病院にて研修医として従事。その後亀田総合病院にて泌尿器科後期研修医プログラムを終了し、より専門的な分野を学ぶために神戸大学附属病院へ転職。
男性不妊を専門として臨床経験を積む傍ら、神戸大学大学院へ進学し研究にも従事した。
大学院卒業後は神戸大学にて教鞭をとりつつ、泌尿器科全般の臨床に従事し、腹腔鏡手術の技術認定医も取得。
神戸医療センター西市民病院副医長を経て、専門分野をより深く極めるために英ウィメンズクリニックへ就職。
男性不妊に留まらず、不妊をトータルで診療するために、婦人科診療も行っている。

二宮 英樹(にのみや ひでき)
医師、データサイエンティスト。福岡県出身。東京大学医学部卒業。専攻は公衆衛生学。
東京大学医学部卒業後、関西医科大学枚方病院、セレオ八王子メディカルクリニックなどで診療に従事。薬や手術に頼るだけではなく、コミュニケーションや触れ合いを活かした診療をモットーに患者との対話を重視する一方、データサイエンティストという異色の肩書きを持ち、医療技術や医薬品などの有効性について原典にあたり、評価手法やデータの有効性について常に確認を欠かさない。
地域包括ケア研究所にて医療局長を務め、医療者として地域社会のひとりひとりのための医療や正しい知識の普及活動に従事している。これまでヘルスケアメディアを通じて、正しく、分かりやすい健康情報の発信に携わってきており、医療や健康は一人ひとりの個人差がとても大きいため、個人にあわせた情報を記事で発信することの難しさを実感。情報を丁寧に紐解くことで、自分にあった正しい情報が分かるような発信を心がけている。

阿部 裕紀(あべ ひろき)
薬剤師。東京都出身。星薬科大学薬学部卒業。専攻は薬物治療学。
現在、化粧品会社に製造責任者という立場で品質管理などに携わる傍ら、薬に頼らないセルフケア(予防)を追求し、啓蒙活動を行う。ドラッグストアでの勤務経験を活かし、ライフスタイルに合わせた健康食品やサプリメントのアドバイスなども行う。
個人的には、薬はあまり好きではなく、自然なもの(食品に近いもの)で身体の不調を治すことを常に考え、アドバイスを行っている。
【本記事の執筆者】

ベビーライフ研究所編集部
ベビーライフ研究所では、妊活に取り組む多くのご夫婦に向けたシリンジ法キットや栄養補給サプリメント等の商品を取り扱っています。
私たちが長年培ってきた妊活の知識や経験を活かして、より多くの方に正しい情報を発信いたします。