不妊は男性側にも50%の原因があった!男性が知るべき不妊の実態とは

【監修】
江夏 徳寿:
医師、英(はなぶさ)メンズクリニック 院長。鹿児島大学医学部卒業、神戸大学大学院医学研究科卒業。生殖医療専門医。泌尿器科専門医。指導医。
二宮 英樹:
医師、データサイエンティスト。福岡県出身。東京大学医学部卒業。専攻は公衆衛生学。
阿部 裕紀:
薬剤師。東京都出身。星薬科大学薬学部卒業。専攻は薬物治療学。
※詳細プロフィールは記事の最後に記載しております。
不妊と言えば「女性」というのは間違った認識かも!?男性にも不妊の原因が潜んでいる
赤ちゃんを授かりたいと願っても、なかなかかなわない…それが不妊です。不妊に悩んでいる人は少なくありません。実に日本のカップルの約3割は、不妊症かもしれないと不安を感じたことがあると言われています。結婚してからずっと赤ちゃんができないカップルだけではありません。一人目は授かったのに、何年たっても二人目を授からない、「二人目不妊」という状態に陥っているカップルもいます。
このコラムをお読みくださっているみなさんは男性でしょうか。それとも女性でしょうか。
「不妊症かもしれない」と自覚があってお読みくださっている女性は、すでに基礎体温を付け始めたり、検査を受けてみたりと不妊症対策を実行している方もおられるかもしれませんね。女性には月経や排卵といったバイオリズムのサイクルがあり、ホルモンバランスの乱れも自覚しやすいので、不妊も実感をともなった不安となりやすいものです。
お読みくださっているのが男性の場合、「うちはなかなか赤ちゃんが授からないけれど、どうしてだろう」「妻に何か原因があるのかな?」といった疑問を持っている方も少なくないかもしれません。
年配の方は特に「不妊の原因は嫁の方にある」という認識を持っている方も少なくないようです。そのせいで嫁姑問題にまで発展してしまうケースもあると聞きます。
しかし、この「不妊の原因は女性側にある」という認識は、完全に間違いです。実は不妊の原因は女性にある場合と男性にある場合、そして双方にある場合があるのです。
WHO(世界保健機関)の調べでは、不妊の原因が女性側にある場合は41%となっています。しかし男性側に原因がある場合も24%あるのです。さらに男女ともに原因があるケースも24%あり、実は男性側に何らかの原因があるケースは、48%にもおよびます。ほとんど5割に届くカップルの男性に、不妊の原因があるというのは驚きの事実ですよね。

さらに原因不明の不妊も11%にのぼります。これは現在行われている医学的な検査では、男女ともに不妊の原因が解明されなかったというケースで、今後研究が進んでいけば究明されていくことがあるかもしれません。
不妊症に悩むカップルのうち、約50%が男性側にも原因がある…男性にとってはかなりショックを受ける結果かもしれません。
女性側に原因がある場合、子宮内膜症を持っていたり生理が不順だったり、なんらかの自覚症状があるケースもあります。しかし男性側に原因がある場合は、まったく自覚がないという方が多いようです。
では男性側に不妊の原因があるかもしれないと不安に思った時、どうすればよいのでしょうか。
男性不妊が気になる方は精液検査を受けてみるのも有りかも
男性側に不妊の原因があるかどうかを不安に思って悩むよりも、まずおすすめしたいのは、カップルで一度不妊に関する検査をきちんと受けてみることです。何も問題が見つからなければそれで安心できますし、もし問題が見つかった場合でも、対処する道が見えてきます。疑心暗鬼になってカップルがそれぞれを疑うよりも、きちんとした専門医の検査を受けて協力の道を選びましょう。
不妊検査には非常にたくさんの種類があるので、ちょっと調べただけではどれを受ければよいのかわからず戸惑ってしまいますよね。

そこで、最初に受けておきたい主な検査をご紹介します。不妊の検査はカップルが一緒に受けに行くべき検査です。
男性の受けるべき検査が、精液検査です。精液を採取し、その中に存在する精子の状態を観察する検査です。精液や精子はとても繊細です。体調はもちろん、メンタルの影響を受けてしまうこともあります。そのため、精液検査は何度か行い、平均的な値を求めます。直接クリニックで検査を受けるのが難しい場合は、ベビーライフ研究所の郵送精子検査(郵送精子検査の申し込みができるページに移動します)のように、郵送で受けられる検査もあります。
女性の受ける検査は基礎体温のチェック、頸管粘液検査・フーナーテスト・子宮卵管造影検査・経腟超音波検査の5つが基礎的な検査になります。基礎体温は数か月間規則正しい生活を送りながらつける必要がありますし、他の検査も女性のバイオリズムに合わせて行う必要があります。女性の受ける基礎的な検査だけでも、かなりの時間がかかることがわかりますよね。
こうした検査で正常値であっても、かならずしも簡単に妊娠に結びつくわけではありません。これらの検査で正常値が出ても、赤ちゃんが授からない場合はもっと詳しい検査が必要になります。また、万一異常が見つかればその先の「治療」に進むことになります。
これらの検査を受けられる場所もご紹介します。まずは産婦人科です。産婦人科では不妊治療を行っているところもたくさんあります。不妊治療で有名なクリニックも多いので、口コミなどで実績を調べてみると良いでしょう。さらに長期で通院することも念頭に置いて、通いやすい場所にしておくことが大切です。
パートナーの女性がすでに検査を受けてしまっているとき、男性一人で産婦人科の検査を受けるのはかなりつらいものがありますよね。そういった場合は泌尿器科でも受けることができます。事前に電話で対応しているかを確認しておきましょう。さらに総合病院などには不妊専門外来を置いているところもあります。また東京などには不妊専門クリニックもあります。こうした検査関連は自費になるため、クリニックや病院によってもかかるお金が違ってきます。そういった点も事前に公式サイトなどで調べておくと、長く通院する場合も安心できます。
では、「男性側に原因のある不妊です」と診断された場合、どうすれば良いのでしょうか。次項で見てみましょう。
男性不妊とは良くなるものなのか?気になる対処方法
専門医で男性不妊と診断されなくても、「なかなか赤ちゃんができないかもしれない」と感じたら、すぐに不妊症に対する対処を男女ともに行っていくことが大切です。
さきほどもご紹介したように、男性側に原因がなくても、「原因不明」と診断されるケースが11%も存在しています。このなかには、今は診断がつかない細かな不調が含まれている可能性もあります。
また、女性側の原因で不妊と分かった場合でも、ふたりで力を合わせて不妊症治療に取り組むことが重要なのです。女性は、自分に原因があったことによるショックでしばらく落ち込んでしまったり、気持ちを立て直したりすることができないかもしれません。そんなときに、パートナーの男性が「俺には問題が無かったんだから、お前が頑張ればいいんだ」というような態度で放置してしまうと、女性はもっと思いつめてしまう可能性もあります。男女の心が離れてしまえば、女性にさらなるストレスをかけることになり、ますます妊娠しにくくなる可能性もあります。また完全に女性の心が男性から離れてしまえば、セックスレスの原因となったり、最悪の場合は離婚の原因になったりすることもあります。病院で女性側に原因があると言われた場合でも、男性は女性の気持ちをくんでサポートし、自分も一緒に改善するという気持ちで乗り越えたいですね。
では、男性側に原因があると言われた場合はどうすれば良いのでしょうか。
男性側の原因は非常にさまざまですが、多くは精子や精液に原因があるケースです。実は精子や精液に原因がある男性は、精液検査を受けた男性のうち1割にのぼります。
それでは、主な男性不妊の原因をご紹介します。
まずは無精子症です。無精子症とは、精液中に精子がいない、もしくは運動率が非常にわるい状態です。運動率とは精子が前進運動を行う割合のことで、しっかり前進運動ができない精子は受精までたどりつく力を持ちません。精子の運動率が2~3割程度以下となると、妊娠の可能性はかなり低くなります。無精子症は男性不妊最大の原因のひとつで、精液検査を受けた男性のうち1%と言われています。無精子症と診断されても、現在の医学ならば治療や改善も可能です。
乏精子症という病気もあります。精子の数が精液1ccあたり4000万以下を指します。一般的には6000万から8000万はいるといわれており、重度の乏精子症になると100万を切ります。こちらも治療は可能です。
精子無力症は、前進運動ができる精子が非常に少ない状態です。活発に前進運動している精子が40%を切ったり、動いている精子自体が5割を切った場合に診断されます。中には精子がまったく動かない状態の方もいます。
精索静脈瘤は、男性不妊原因の40%といわれるポピュラーな病気です。精巣の静脈がこぶ状に腫れる病気で、精巣機能を低下させ、乏精子症や精子運動率の低下などを引き起こします。治療を受けることで改善します。多く発生する割に知名度が低いので、検査を受けることは重要です。こうした病気が原因で乏精子症などが起きることがあります。
ほかにも勃起不全(ED)や無精液症・逆行性射精・閉そく性無精子症などさまざまな病気が存在しますが、それぞれ治療方法があります。またどうしても難しいという場合は、人工授精や体外受精といった方法もあります。
加齢による精子の質の低下もあります。運動率が低下することはもちろん、奇形率やDNAのキズなども増えてきます。妊娠率が下がるだけでなく、流産などの原因になる可能性もあります。最近は30代くらいの男性でも精子の老化に伴う質の老化が見られることがあるそうです。精子の質を高めることが、年齢に関わらず男性の妊活のポイントといえます。
自分でできる男性不妊の対応策は食生活や栄養バランスそして適度な運動?
では、男性不妊と診断された場合や、男性不妊をできるだけ防ぎたいという場合は、どうすればよいのでしょうか。
まずは、食生活を改め、栄養バランスを考慮した食事に改善していくことが重要です。精子は男性が体内で作り出すものですが、その原料となるものはもちろん食べ物から摂取したさまざまな栄養素です。栄養がかたよっていたり、不足したりしていれば当然作り出される精子にも悪影響を及ぼします。

お仕事が忙しいと、ついつい簡単に食べられるレトルトやカップものに手が出てしまいがちですが、できるだけ素材から調理されたものを食べたいですね。また塩分や糖質・脂質の摂り過ぎも精子の質にダメージを与えます。メタボリックシンドロームと診断される男性は、精子の状態も悪化することが多く、また糖尿病などの生活習慣病は性欲の減退にもつながるからです。また、精子は非常に熱に弱く、大人になってからの高熱や熱すぎるお風呂・サウナ、下着のしめつけなどでも傷ついてしまいます。
とはいえ、昼は仕事で忙しく、共働きだからお弁当も難しい…という男性がほとんどではないでしょうか。そこで、男性不妊に悩む方や妊活にいそしむ男性のために開発された、ベビーライフ研究所のマイシードのような男性用妊活サプリメントが役立ちます。サプリメントなら手軽にかたよりがちで不足しがちな栄養をしっかり補給できますし、同じく女性用のサプリメントで妊活にはげむ女性のパートナーと一緒に取り組むことができるからです。サプリメントをしっかり飲んで頑張る姿を見せることは、パートナーの気持ちの安定にもつながりますよ。
また、適度な運動や睡眠時間の安定も重要です。適度な運動は血行を改善する力があり、夜しっかりと眠るためにも役立ちます。またテストステロンという男性ホルモンの分泌も促します。女性は水分がたまりやすくむくみを起こしやすいのですが、東洋医学ではむくみを万病のもとととらえます。男性の血行不良も、健康面にさまざまな悪影響を及ぼします。メタボリックシンドロームを防ぐためにも、毎日適度な運動を生活習慣に取り入れましょう。パートナーと一緒にジムに通ったり、軽いウォーキングやジョギングをスタートしたりすることもおすすめですよ。
睡眠時間の乱れや不足も非常に危険です。睡眠は私たち人間のバイオリズムを整える重要な役割を担っています。睡眠時間が乱れると、ホルモンバランスや免疫・代謝などにも大きな影響を与えます。睡眠負債を抱えないように、早寝早起き&就寝前のスマホ禁止にトライしてみましょう。
精子は男性の体内で毎日作られています。人間は新陳代謝によって骨から髪の毛まで数年かけてすべて新しく生まれ変わると言われていますが、部位によってその速度は大きく異なります。たとえば爪や髪の毛は分かりやすく日々成長を続けていますよね。精子が男性の体内で作られ始めてから卵子を受精させる力を蓄えるほどに成熟するまでには、だいたい74日間かかるとされています。人によっても前後しますが、2ヶ月から3ヶ月たてば精子はすべて新しく生まれ変わると言えるでしょう。
この日数は何を表しているのかというと、不妊状態の精子が、妊活をスタートしてから努力の結果が出始めるまで最短でもその期間はかかるということです。
妊活をスタートしても、すぐに結果がでるわけではありません。まずは3ヶ月、パートナーと一緒にチャレンジしてみませんか。
【この記事の監修】

江夏 徳寿(えなつ のりとし)
医師、英(はなぶさ)メンズクリニック 院長。鹿児島大学医学部卒業、神戸大学大学院医学研究科卒業。生殖医療専門医。泌尿器科専門医。指導医。
大学卒業後、済生会福岡総合病院にて研修医として従事。その後亀田総合病院にて泌尿器科後期研修医プログラムを終了し、より専門的な分野を学ぶために神戸大学附属病院へ転職。
男性不妊を専門として臨床経験を積む傍ら、神戸大学大学院へ進学し研究にも従事した。
大学院卒業後は神戸大学にて教鞭をとりつつ、泌尿器科全般の臨床に従事し、腹腔鏡手術の技術認定医も取得。
神戸医療センター西市民病院副医長を経て、専門分野をより深く極めるために英ウィメンズクリニックへ就職。
男性不妊に留まらず、不妊をトータルで診療するために、婦人科診療も行っている。

二宮 英樹(にのみや ひでき)
医師、データサイエンティスト。福岡県出身。東京大学医学部卒業。専攻は公衆衛生学。
東京大学医学部卒業後、関西医科大学枚方病院、セレオ八王子メディカルクリニックなどで診療に従事。薬や手術に頼るだけではなく、コミュニケーションや触れ合いを活かした診療をモットーに患者との対話を重視する一方、データサイエンティストという異色の肩書きを持ち、医療技術や医薬品などの有効性について原典にあたり、評価手法やデータの有効性について常に確認を欠かさない。
地域包括ケア研究所にて医療局長を務め、医療者として地域社会のひとりひとりのための医療や正しい知識の普及活動に従事している。これまでヘルスケアメディアを通じて、正しく、分かりやすい健康情報の発信に携わってきており、医療や健康は一人ひとりの個人差がとても大きいため、個人にあわせた情報を記事で発信することの難しさを実感。情報を丁寧に紐解くことで、自分にあった正しい情報が分かるような発信を心がけている。

阿部 裕紀(あべ ひろき)
薬剤師。東京都出身。星薬科大学薬学部卒業。専攻は薬物治療学。
現在、化粧品会社に製造責任者という立場で品質管理などに携わる傍ら、薬に頼らないセルフケア(予防)を追求し、啓蒙活動を行う。ドラッグストアでの勤務経験を活かし、ライフスタイルに合わせた健康食品やサプリメントのアドバイスなども行う。
個人的には、薬はあまり好きではなく、自然なもの(食品に近いもの)で身体の不調を治すことを常に考え、アドバイスを行っている。