不妊とは?不妊症検査や治療について
「不妊症」――この言葉をメディア等でよく耳にするようになって長い時間が経ちました。では実際、どれくらいの認知度がある言葉なのでしょう。
不妊症という言葉を目にして、一般的に思い浮かぶのは「赤ちゃんが欲しいのにできないことで悩む人々」ということですよね。最近では、産婦人科の中などに不妊専門外来という部門が設けられていることもありますし、芸能人カップルが不妊に悩み、治療を行っているという情報も良く入ってくるようになりました。
では不妊症はどのようなどのような状態のことを言うのでしょうか?この記事では不妊症についてや赤ちゃんを授かるためにどうすればよいか詳しく解説していきます。
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不妊症とは?病気とは違う?
では不妊症という病気があるのかというと、そういうわけではありません。「え?不妊症って病気じゃないの?」と思われる方もいるかもしれませんが、不妊症と呼ばれる病気があるわけではないのです。
不妊症には、日本産科婦人科学会が定めている定義があります。実際には「不妊症」ではなく「不妊」と呼ばれています。この点からも、ある特定の病気ではないことがなんとなくうかがえますね。
日本産科婦人科学会によると、「不妊」は「妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交をしているにもかかわらず、一定期間妊娠しないもの」(http://www.jsog.or.jp/public/knowledge/funin.html日本産科婦人科学会公式サイトより引用)と定めています。「一定期間」とは、1年が一般的とされています。
では普通、どれくらいの確率で妊娠するものなのでしょうか。不妊症ではない夫婦が、避妊せずに性交渉を持っていれば、結婚後半年で70%程度が妊娠すると言われています。また1年経過すれば9割になり、2年経過するころには約100%の夫婦が妊娠するとされます。
1年経過したところでまったく妊娠の兆候がない場合、不妊症ではないかと考えられるのです。不妊は必ずしも「病気」が原因とはかぎらず、不妊という「状態」や「症状」と考えた方が良いかもしれません。
それでは、不妊に関わる病気にはどのようなものがあるのでしょうか。
実は不妊に関する病気は非常にたくさんあります。女性の場合は排卵が正常に行われない排卵障害をはじめ、子宮内膜症や子宮筋腫が妊娠を妨げている場合があります。
また男性の側にも原因となる病気があるケースもあります。たとえば造精機能障害や性機能障害などが挙げられます。
さらに、男女ともに特にこれといった病気がないのに、卵子と精子が正常に受精できない場合や、受精してもきちんと育たないケースもあります。男女ともに加齢が妊娠を妨げる原因になっていることもあります。
さまざまな検査をして不妊の原因を調べても、まったくわからないというケースもあります。
その根本に病気があるにせよ、無かったにせよ、赤ちゃんが欲しいと思って行動に移している男女に赤ちゃんが授からない状態、それを不妊と呼んでいるのです。
また、本来は1年くらい経過を見て不妊かどうかを定義しているのですが、現在ではもっと短い期間でも不妊症と考えることが増えています。男女ともに不妊に関係するような既往症がある場合や、お家でも手軽にできる「タイミング法」などを試してみたのに赤ちゃんができないといった場合は、もっと早く不妊治療を始めるカップルもいます。さらにカップルの年齢が高い場合も、妊娠のしにくさを見越して早めに不妊治療をスタートさせるケースも増えているようです。
日本における不妊症で悩むカップルの割合
それでは、日本ではどのくらいのカップルが不妊症で悩んでいるのでしょうか。
日本産科婦人科学会によると、不妊のカップルの割合は1割程度ということです。つまり、10組に1組のカップルは不妊に悩んでいるということですね。しかし、最近は結婚や妊娠の高齢化が進んでいるため、この割合はもっと高まっています。
国立社会保障・人口問題研究所の調査によると、2010年には不妊カップルの割合はすでに16%を超えており、それ以前のデータと比較しても少しずつ増えています。今後は、不妊症に悩むカップルがもっと増えていくかもしれません。
不妊症の割合といっても、「それって男女どっちの話?」と疑問に思う方もいるかもしれませんね。
一昔前は不妊症といえば女性が原因と思われることが多かったようですが、現在ではそういった認識は古いものとなっています。
実は、不妊症の原因は男女ともに持っている可能性があるのです。
WHOの調査では女性のみに不妊症の原因がある場合が41%、男性のみに原因がある場合が24%、男女ともに原因がある場合は24%とされています。さらに11%のケースでは、原因がどちらにあるのか、何なのかはっきりわからないというデータもあります。このデータを見てみると、男性側にも原因があるケースは48%にも及びます。つまりカップルで「赤ちゃんがなかなかできない」と不安に感じた場合、その原因が男性にある場合も半分近くあるということになります。男性の不妊症はすでに、他人事ではない段階まで来ているのです。
古い考え方を持っているおじいちゃん・おばあちゃん世代にはまだ「赤ちゃんを授からないのは嫁のせい」と言ってはばからない人もいます。しかし、それは完全に間違いです。もし不妊に悩んでいる時にこうした心無い言葉を投げかけられたら、ひとりで抱え込まずにカップルで話し合い、男性はパートナーの女性の気持ちを守ってあげるよう努めたいものですね。
現在ではカップルの16%が実際に不妊症に悩んだり、治療を受けたりしていることがわかりました。しかし、不妊症になんとなく不安を持っているカップルはもっとたくさんいます。先ほどもご紹介した国立社会保障・人口問題研究所の調査によると、カップルのうち約3割が不妊に対して不安を感じたり、心配をしたりしたことがあると回答したようです。この数字は2005年の同調査と比較すると、5.3ポイントもアップしており、不妊に対する認知度が高くなっていることや、実際に不妊かもしれないと感じるカップルが増えていることがわかります。
実際に治療に踏み切るカップルは2割に満たなくとも、3割ものカップルが不安を感じたことがある不妊症。これから赤ちゃんを迎える準備をしようと思っているカップルにとっては、かなり大きな数字に感じるのではないでしょうか。
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どうやって調べるの?不妊症の検査方法について
それでは、どうやって不妊症かどうかを調べればよいのでしょうか。
まずは不妊症かどうか確認するタイミングについてご紹介します。
早い方だと、結婚前に「ブライダルチェック」として不妊症の検査を受ける方もいます。特に最近は30歳、35歳を過ぎて結婚し、妊娠を望むカップルも少なくありません。女性はもちろん、男性でブライダルチェックを受ける方もいます。ただ、一般的な詳しい不妊症検査とは異なり、一度で完結する簡単なチェックで済ませることが多いようです。
結婚後は、30歳未満のカップルであれば1年以上、30歳以上であれば半年間、避妊をせずに一般的な性交渉を持っているにも関わらず、妊娠の兆候が無い場合は一度検査を受けてみることがおすすめです。
また、年齢に関係なく、女性で生理不順や子宮内膜症などの既往症がある方や、男性で大人になってからの耳下腺炎を経験してムンプス精巣炎という病気にかかって精子の質に低下がみられる方など、自分の妊娠能力に不安がある場合は、今すぐにでも検査を受けた方が安心できるのではないでしょうか。ストレスも男女ともにホルモンバランスを崩す原因になるため、ストレスを軽減することも大切なのです。
では、男性の不妊症検査から詳しく見ていきましょう。男性の場合は泌尿器科が基本となりますが、パートナーと一緒に産婦人科の不妊外来や、総合病院の不妊専門科に行くという方法もあります。東京など大都市には、男性不妊専門のクリニックもあります。
また、忙しくて病院へ行けなかったり、恥ずかしかったりする場合は、ベビーライフ研究所の郵送精子検査(郵送精子検査の申し込みができるページに移動します)なども活用すると良いでしょう。これは自宅で採精し郵送することで検査を受けられ、結果はメールで誰にも知られず受け取ることができます。
実は男性が原因の不妊は増加傾向にあると言われています。環境ホルモンによる環境汚染の影響や、ストレス社会によるEDの増加が関連していると考えられているようです。
男性の不妊症検査の基本は精液検査です。精液はとてもセンシティブなもので、検査時の心身の状態によって結果にかなりばらつきが出ます。そのため、検査を数回行って、状態をしっかりチェックする必要があります。
さらに必要であれば、FSHやLH(性腺刺激ホルモン)、テストステロン(男性ホルモン)、プロラクチン(乳汁分泌ホルモン)などのホルモン検査を行うこともあります。なぜ男性が乳汁分泌ホルモン?と不思議に思うかもしれませんが、プロラクチンの値が高すぎると、性欲減退やEDなどの原因になることがあるのです。こうした検査を受け、なにか問題がないかをチェックしていきます。
女性の場合は、男性よりもはるかにたくさんの検査が存在します。といっても、最初からすべての検査を受ける必要があるわけではありません。
まずは6大基本検査と呼ばれるものを受けます。6つのうち、ひとつは精液検査です。ほか5つは女性側の検査です。基礎体温・頸管粘液検査・フーナーテスト(性交後の粘膜内精子検査)・子宮卵管造影検査・経腟超音波検査の5つです。ただし病院によっては基礎体温や頸管粘液検査・フーナーテストなどをあまり重視しないこともあり、基本的に重要なのは子宮卵管造影検査と経腟超音波検査のようです。さらに男性同様各種ホルモン検査のほか、クラミジアなどの感染がないかどうかの検査、精子に対して抗体を作ってしまうかどうかの抗精子抗体検査なども必要に応じて行っていきます。
こうした検査で異常が見つかれば、子宮鏡検査や卵管鏡検査、腹腔鏡検査などを行うこともあります。
女性には月経や排卵など、バイオリズムのサイクルがあります。これらの検査はいつ受けても良いわけではなく、バイオリズムのサイクルに合わせて正しい時期に検査を受ける必要があります。そのため、女性の方が不妊症検査に時間とお金がかかります。お仕事を持っている女性の場合は特に、検査をすべて受けるだけでも大きな負担になることがあるようです。
不妊症治療はどうすればいいの?
不妊症かな、と思った時、どんな治療を行えばよいのでしょうか。
不妊症は、単一の病気の名前ではありません。ですから、この薬で治る、この治療で治るというものはありません。
まずは男女ともに専門科できちんと検査を受け、何か問題があるかどうかを調べることが先決です。
女性の場合、子宮筋腫や子宮内膜症・骨盤腹膜炎・排卵障害などの病気が見つかった場合は、それぞれの病気の治療が先になります。こうした病気の治療が行われ、子宮や卵巣の状態が良くなれば、妊娠の可能性が高くなることもよくあります。
男性の場合も、EDや精巣で作られた精子が通る精管が詰まっているなどの異常が見つかった場合は、まずそういった不調の治療をする必要があります。
でも、こうした病気が特に見つからなくても、赤ちゃんがなかなか授からないケースもあります。例えば加齢による影響です。
女性も男性も、加齢によって妊娠する力や妊娠させる力が低下していきます。女性の場合は30歳を過ぎるころから少しずつ妊娠できる力が衰え始め、妊娠の確率も減っていきます。男性の場合は35歳くらいから精子の質の低下が起こり、精力の減退も始まります。男女ともに、40歳を過ぎるとこうした加齢による影響は顕著になり、妊娠しにくい状態が当たり前になってきてしまうのです。
またまだ若いカップルでも、生活習慣の乱れや過度なストレス・睡眠不足や食生活の乱れといったフィジカル・メンタル双方のストレスによって、妊娠する力と妊娠させる力が衰えてしまうことが多々あります。環境ホルモンの影響も大きいと言われているので、インスタント食品に偏った食生活なども注意が必要なのです。
不妊症が心配だけれど何をすべきか分からないというカップルや、検査をしたけれど原因が特定できなかったというカップルは、まず生活習慣&食生活習慣改善から行うと良いでしょう。
女性の場合は妊娠を考え始めたらまず葉酸をサプリメントなどで補い、お酒やタバコをやめて、身体を温めカフェインなどの刺激物を控えると良いと言われています。
男性の場合は女性のように妊娠向けサプリメントはたくさん販売されているわけではありませんが、ベビーライフ研究所のマイシードのように男性の妊活向けに開発されたサプリメントも存在します。こうしたサプリメントの力を借りつつ、パートナーと体調を管理し合いながら二人で赤ちゃんのために妊活計画を立てることが、妊活の第一歩となるのではないでしょうか。
【この記事の監修】
江夏 徳寿(えなつ のりとし)
医師、英(はなぶさ)メンズクリニック 院長。鹿児島大学医学部卒業、神戸大学大学院医学研究科卒業。生殖医療専門医。泌尿器科専門医。指導医。
大学卒業後、済生会福岡総合病院にて研修医として従事。その後亀田総合病院にて泌尿器科後期研修医プログラムを終了し、より専門的な分野を学ぶために神戸大学附属病院へ転職。
男性不妊を専門として臨床経験を積む傍ら、神戸大学大学院へ進学し研究にも従事した。
大学院卒業後は神戸大学にて教鞭をとりつつ、泌尿器科全般の臨床に従事し、腹腔鏡手術の技術認定医も取得。
神戸医療センター西市民病院副医長を経て、専門分野をより深く極めるために英ウィメンズクリニックへ就職。
男性不妊に留まらず、不妊をトータルで診療するために、婦人科診療も行っている。
二宮 英樹(にのみや ひでき)
医師、データサイエンティスト。福岡県出身。東京大学医学部卒業。専攻は公衆衛生学。
東京大学医学部卒業後、関西医科大学枚方病院、セレオ八王子メディカルクリニックなどで診療に従事。薬や手術に頼るだけではなく、コミュニケーションや触れ合いを活かした診療をモットーに患者との対話を重視する一方、データサイエンティストという異色の肩書きを持ち、医療技術や医薬品などの有効性について原典にあたり、評価手法やデータの有効性について常に確認を欠かさない。
地域包括ケア研究所にて医療局長を務め、医療者として地域社会のひとりひとりのための医療や正しい知識の普及活動に従事している。これまでヘルスケアメディアを通じて、正しく、分かりやすい健康情報の発信に携わってきており、医療や健康は一人ひとりの個人差がとても大きいため、個人にあわせた情報を記事で発信することの難しさを実感。情報を丁寧に紐解くことで、自分にあった正しい情報が分かるような発信を心がけている。
阿部 裕紀(あべ ひろき)
薬剤師。東京都出身。星薬科大学薬学部卒業。専攻は薬物治療学。
現在、化粧品会社に製造責任者という立場で品質管理などに携わる傍ら、薬に頼らないセルフケア(予防)を追求し、啓蒙活動を行う。ドラッグストアでの勤務経験を活かし、ライフスタイルに合わせた健康食品やサプリメントのアドバイスなども行う。
個人的には、薬はあまり好きではなく、自然なもの(食品に近いもの)で身体の不調を治すことを常に考え、アドバイスを行っている。
本記事の執筆者
ベビーライフ研究所編集部
ベビーライフ研究所では、妊活に取り組む多くのご夫婦に向けたタイミング法キットや栄養補給サプリメント等の商品を取り扱っています。
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