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禁欲期間は短いほうが効果的!精子が満タンになるのは何日?【妊活男性必見】

コラムイメージ写真

一昔前まで不妊治療といえば、女性に対するものという考えが一般的でした。男性に不妊の原因があるとは考えられなかったからです。

しかし、いまでは男性の精子に問題がある場合も多いことがわかっており、不妊症とされた夫婦の約5割が、男性側にも原因があるケースと言われています。

いまや、不妊治療は女性だけのものではなく、男性も妊活が必要な時代になっているのです。

ではその精子の問題とはどのようなものがあり、改善することは可能なのでしょうか?

今回は男性不妊の原因として多い精子の問題と、それに関する禁欲期間や精子の質の上げ方など詳しく解説していきます。

精子の数より、精子の質が問題って本当?

男性の精子を弱らせる原因としては、タバコやお酒の飲み過ぎ、長風呂やサウナ、不規則な生活、育毛剤や筋肉増強剤の使用、過度のストレス、膝の上でのノートパソコンの操作、ブリーフパンツやボクサーパンツの着用、ロードバイクでの走行、長期の禁欲などがあります。

これらの原因のうち、誤解されることが多いのが「長期の禁欲」です。

以前は、「長く禁欲している方が、精子の数が増えるから妊娠しやすいのではないか」と思われていました。確かに、禁欲期間が長ければ、精子の数は増えます。

しかし、近年の研究により、妊娠に大切なのは精子の数だけではなく、精子の質も大切だということが分かっています。

精子は精巣で作られますが、射精後3日ほどで精子の数が満タン状態になります。

増えてしまった古い精子はどうなるかというと、分解されて体内に吸収されたり、尿といっしょに排出されたりします。

それでも、すべての精子がなくなるわけではありません。古い精子が残っている状態で、新しい精子が作られることになります。

そうすると、まったくの空っぽの状態で精子が作られる場合に比べて、生産速度はかなり遅くなります。当然のことながら、新しい精子より古い精子のほうが増えてしまいます。

精子が古くなると、どうなるのでしょうか?

古い精子は運動能力も低く、精子のDNA損傷率も高くなってしまいます。精子の運動能力が低ければ、卵子に到達するのがむずかしくなります。

また、精子のDNAが損傷していたら、受精後に受精卵が十分に発育せず、妊娠に至らない確率も高くなります。

あるいは、胎児が出産まで成長したとしても、先天的な障害を持つ可能性があります。

このように、長期にわたる禁欲は妊娠を成功させるどころか、かえって悪影響を及ぼしてしまう可能性があります

禁欲期間は短い方が妊娠率は上がる?

海外で行われた研究では、禁欲期間は短いほど妊娠しやすく、10日以上禁欲すると妊娠率が非常に低くなるというデータがあります。

参考:Effect of ejaculatory abstinence period on the pregnancy rate after intrauterine insemination – Fertility and Sterility (fertstert.org)

そのデータは自然妊娠ではなく、人工授精によるものですが、禁欲期間3日以下だと妊娠率14%、禁欲期間4〜10日で妊娠率10%、禁欲期間10日以上で妊娠率3%という結果となっています。

これらの数字から禁欲期間が短いほど、妊娠率が高くなることがわかります。

ちなみに、禁欲期間が1日なら、どうなるかというと、妊娠率が19%と高い数字になります。一方、禁欲期間が14日以上になると、妊娠率は0%になってしまいます。

では、自然妊娠の場合はどうなのでしょうか?

スペインの研究グループによる試験で、精液所見が正常な男性21名(25〜35歳)に96時間(4日間)の禁欲の後、そして、その後、24時間ごとに射精した96時間後のDNA損傷率を比較したデータがあります。

参考:Shorter abstinence decreases sperm deoxyribonucleic acid fragmentation in ejaculate – Fertility and Sterility (fertstert.org)

それによると、96時間の禁欲後の平均の精子DNA損傷率が22.2%であったのに対して、その後、24時間ごとに射精した96時間後のDNA損傷率は17.0%と5.2%も低くなっていました。

また、セックスの回数と妊娠の確率を調べたアメリカの研究によると、毎日セックスした場合、1周期あたりの妊娠率は37%だったのに対して、1日おきでは33%、週に1回だけだと15%という数字になっています。

ある意味当たり前の結果ですが、セックスの回数が多ければ多いほど、妊娠の確率は高くなるというわけです。

それでも「セックスの回数が増えると、精子の数が減ったり、運動率が悪くなるんじゃないの?」と心配する方もいるでしょう。

しかし、約1万人の男性を対象にした調査で、毎日射精しても精子の数は減ることがなく、運動率も変化しないことがわかっています。

しかも、精子の数が少ない乏精子症の男性の場合でも、毎日射精することで精子の数が増え、運動率がアップすることがわかったのです。

以上のことから、必ずしも長期間禁欲することによって、妊娠の確率が高まるとは言えないことが分かります。

むしろ長期間の禁欲は、精液に放出される精子が古くなり、妊娠しにくくなる可能性もありますので、お気をつけください。

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3日で満タン?精子がたまる理想の禁欲期間

長期間の禁欲によって精子が古くなり、妊娠率が下がると分かったうえで、どのくらいの期間で精子が満タンになるのか、気になりませんか?

精巣には最大で約10億個ほどの精子を保存することが可能で、精子は基本的に1日あたり5000万〜1億個ほど作り出されていきます。

1度の射精で2〜4億個ほどの精子が排出されるので、満タンの状態から射精した場合残りは6〜8億個ほど。

そのため1日あたり1億個精子が増える場合は最低で3日、最長で6日で再び満タンになると言われています

しかし先ほど紹介したように、たまった精子は体内に吸収されたり、尿と一緒に排出されたりしますが全てが無くなるわけではないため、徐々に質が低下していってしまいます。

精子の状態を確認することのできる精液検査も、検査の前には2~7日の禁欲期間を設けることで、精子のコンディションが良い状態にしてから行います。

また、精子のコンディションは体調や生活習慣で変化する非常にデリケートなものです。

精子のたまる期間も食生活などによって左右されるほか、年齢での個人差等もあるため、2〜7日が理想的な禁欲期間という認識でいましょう。

ですが、禁欲をしても精子がたまらなくなってしまう場合もあります。

ではその原因は何なのでしょうか。ここからは禁欲をしても精子がたまらない原因について解説していきます。

禁欲しても精子がたまらなくなる原因

禁欲しても精子がたまらない原因は、主に男性不妊などによる精液量/精子数の不足の可能性が高く、その不妊の原因は様々です。

ここからはその各不妊症の原因について見ていきましょう。

無精子症

無精子症とは、精液の中に精子がまったくない状態のことを指します。

無精子症の原因は遺伝子異常や染色体の異常など先天性のものが多いですが、まれに後天的に引き起こされる場合もあります。

以下の病気はその後天的な無精子症の原因になることがあるので注意しましょう。

  • ムンプス精巣炎(おたふくかぜのウィルスによる精巣炎)
  • クラミジア、淋病等の性感染症
  • 幼少期のヘルニアの手術の後遺症

また、この無精子症には「閉塞性無精子症」と「非閉塞性無精子症」の2種類が存在します。

閉塞性無精子症は、精管と呼ばれる精子の通り道や射精菅などが、何らかの原因で塞がってしまうことで精子が出てこない状態であり、精巣には通常通り精子が存在します。

基本的には塞がっている場所の開通ができれば再び精子が出てくることが期待できるため、再建術・開通術を行います。

2つ目の非閉塞性無精子症ですが、こちらは精子の通り道には問題がなく、そもそも精子が精巣内で作られにくくなっていることで生じる無精子症で、造精機能障害とも呼ばれます。

次はその造精機能障害について解説します。

造精機能障害

造精機能障害とは精子を作り出す機能に問題がある状態のことを指し、上記のようにそもそも精子が作られなくなってしまう場合や、精子の質の低下を引き起こします。

たとえ禁欲をしてもこの造精機能障害の場合、特に精子が作れない状態の場合は、精子をためることができません。

造精機能障害は男性の不妊症のうち多くの割合を占めるものでもあり、約半分ほどが原因不明の一方、造精機能障害の35%以上は精索静脈瘤が原因となっています。

精索静脈瘤は、精巣から心臓に戻る静脈にある逆流防止弁がうまく働かなくなったために血液が逆流し瘤(こぶ)になったものです。

精索静脈瘤ができると

  • 精巣内の温度の上昇
  • 活性酸素や代謝産物の増加
  • 精巣内の低酸素状態

   ↓      ↓      ↓

◎精子を作る機能の低下
◎精子の質が悪くなる

 (濃度・運動率の低下、DNAの損傷)

   ↓      ↓      ↓

  不妊の原因に

という構図です。

精索静脈瘤の検査は触診とエコーで行われ、その程度によってグレードⅠ〜Ⅲ

に分類されます。

精索静脈瘤に対する手術は必ずしもパートナーの妊娠を保証するものではありませんが、グレードⅡ以上の静脈瘤では精子を作る力が改善する可能性があります。

また、抗酸化作用のある薬剤やサプリメントを内服することにより、精液所見が改善することがあります。

精索静脈瘤はほとんどの場合は無症状ですが、稀に痛みや違和感を感じる場合があります。また、ある程度は自分で診断することができ、お風呂上がりに陰嚢を触って、左側(両側に見られる場合もあるが約80%は左側)の精巣の周りに血管がギョロギョロ透けて見える方は

グレードⅢの静脈瘤の可能性があります。

妊娠に向けてベストな選択ができるよう、男性側の精液所見に問題がある場合や症状のある場合は早めに検査を受けましょう。

禁欲期間が長く精液がたまりすぎると健康に悪影響に

長い禁欲期間によって精液をためすぎることで、健康へ悪影響が及ぶことはあまりありませんが、ここまで紹介してきたように精子の質は低下してしまいます。

またそのほかにも、長い禁欲期間は妊娠に対してあまり良くない影響を与える可能性も考えられるので、いくつか紹介します。

まずは、勃起不全(ED)の可能性です。

定期的なマスターベーションなどによる射精は、骨盤底筋という筋肉を鍛える効果があります。

この骨盤底筋は、収縮して圧迫することで陰茎海綿体に血液をとどめる役割があり、とても大切なはたらきをしています。

そのため、長い禁欲期間によりこの骨盤底筋が緩んでしまうと、勃起力の低下が引き起こされてしまう可能性があるのです。

また年齢を重ねることで勃起不全のリスクも高まってくるため、適度な射精は妊娠においてとても大切なのです。

また、もう1つの影響として考えられるのがストレスです。

射精は通常、様々な脳内物質の分泌も伴うことが分かっています。主に挙げられるのは

  • ドーパミン
  • エンドルフィン
  • オキシトシン
  • プロラクチン

などの物質です。

例えばストレスの緩和に有効なドーパミン。

このドーパミンは別名「幸福ホルモン」とも呼ばれており、人の「楽しい」「嬉しい」といった感情につながるほか、集中力のアップにも効果があると言われています。

次に挙げられるエンドルフィンは、ドーパミンのように多幸感を与える効果に加え、苦痛を和らげる作用も存在します。

そしてオキシトシンは血圧を下げる効果が、プロラクチンは興奮を抑える効果がそれぞれあり、からだのリラックスや眠りの誘発にも繋がります。

このように脳内物質の分泌には様々な効果があり、適度な射精はストレスを緩和してくれます。

そのため、長い期間禁欲してしまうとこれらの脳内質による精神的な健康への効果が得られないほか、射精ができないことそのものからくるストレスもたまりかねません。

精子の質と心の健康を守るためにも、過度に長い禁欲期間は避けるようにしましょう。

禁欲中に精子の質を高める対策やポイント

では具体的に、精子の質を高めるにはどうすればよいのでしょうか?

禁欲中にも行える対策やポイントについてまとめていきます。

食事の改善

精子の質は、食事により摂取する栄養素にも左右されます。ここでは主に関わってくる栄養素について解説します。

まずは大きく関わってくるのが「亜鉛」です。

亜鉛はテストステロンと呼ばれる男性ホルモンの代謝に深く関わる物質で、このテストステロンは精巣や前立腺の発達に欠かせず、性機能の向上にも役立ちます。

そのため、亜鉛をしっかりと摂取すると精子の数を増やすだけでなく、精子の運動率の改善も期待できます。

亜鉛が多く含まれている食材は以下の通りです。

  • 生牡蠣
  • うなぎ
  • レバー
  • 卵黄
  • チーズ

次に大切なのが「ビタミンC」です。

精子は酸化ストレスによって老化し質が低下してしまいますが、ビタミンCにはこの酸化を抑える「抗酸化作用」が含まれています。

酸化を抑えることで精子のDNA損傷を抑えることができるほか、運動率の低下を防ぐ効果も期待できます。

ビタミンCが多く含まれる食材は以下の通りです。

  • 菜の花
  • 赤ピーマン
  • キウイ

最後に紹介するのが「葉酸」です。

葉酸と聞くと、女性の妊娠に効果があるものじゃないの?と思う方もいるかもしれませんが、実は男性にも効果が見込めるものなのです。

アメリカのカリフォルニア大学バークレー校で行われた研究によると、葉酸を十分に摂取している男性はそうでない男性に比べて、精子の染色体異常率が20%も低いようです。

そのため、妊活中のカップルは特に、パートナーと合わせて葉酸を摂取するのもおすすめです。

葉酸が多く含まれる食材は以下の通りです。

  • ほうれん草
  • レバー
  • ブロッコリー
  • 枝豆

このほかにも精子の質の向上に良いとされる食材は多くありますが、その全てを意識して食事に気を使うのはとても大変です。

まずはバランスの良い食事を毎日3食とるところから意識していきましょう。

サプリメントによる栄養素の補給

食事での栄養素の補給は大事ですが、それが難しい場合はサプリで補うことも可能です。

また中には、食材からは効率よく摂取することが難しい成分も存在します。

例えば「コエンザイムQ10」という成分は精子の濃度や運動率、正常形態率など多くの項目に効果が期待できますが、1日の推奨される摂取量がイワシに換算するとなんと約26匹です。

そういった場合に活躍するのがサプリです。

もちろんサプリに頼りすぎて過剰に摂取することはからだにも良くないため、あくまで精子の質改善の手助けといった認識で使用していきましょう。

適度な睡眠時間

食生活とともに意識したいのが睡眠時間の確保です。

先ほど抗酸化作用について紹介しましたが、夜間に分泌されている睡眠誘発ホルモンのメラトニンにもこの抗酸化作用があります。

そのため、睡眠時間に問題があるとこの抗酸化作用が上手く働かず、精子の質の低下を引き起こしてしまいます。

また、夜更かしや不規則な生活リズムによって体内時計が狂ってしまうと、同じようにメラトニンの分泌に悪影響を及ぼしてしまいます。

睡眠時間と妊娠力の相関について調べた北アメリカの研究によると

  • 男性の睡眠時間が6時間を切ると妊娠力が下がる
  • ベストの睡眠時間は7~8時間

ということが分かっています。

睡眠時間の不足や、逆に寝すぎてしまうことも良くないため適度な睡眠時間を確保するようにしましょう。

喫煙を控える

喫煙の習慣がある方は、それらを控えることで精子の質の低下を抑えることができるかもしれません。

たとえば喫煙には精子の濃度や運動率の低下のリスクが考えられるほか、精子のDNAが損傷してしまう可能性もあります。

禁欲と合わせて喫煙を控えることは難しいかもしれませんが、徐々にタバコの本数を減らすなど工夫しながら、精子の質の改善を図りましょう。

ストレスの軽減

禁欲期間を設けることをあまり意識してこなかった方は、急な禁欲でどうしてもストレスがたまりやすいものです。

しかもストレスはためすぎることで、ここまで紹介してきた生活習慣の乱れにつながりやすいのも悩ましいです。

たとえば心配事や悩みからくる睡眠時間の減少・イライラして暴飲暴食してしまったり過度な飲酒をしてしまう・喫煙されている方はタバコの本数が増えてしまうなどなど…

さらに、近年急増している「妊活ED 」とよばれるものも、ストレスなどからくる心因性がほとんどのようです。

たしかに、ここまで紹介した項目を実践することで精子の質の改善を図ることは大切ですが、さらに大切なのはそれらを「習慣化」することです。

妊活はその多くが長い期間をかけて妊娠に向かって進めていくものであり、一時的に実践するよりも、少しづつでいいので長く続けることがとても重要なのです。

ですのでまずは、自身のストレスにならない程度から徐々に実践していくことを心掛けましょう。

また普段から、自分なりのストレス解消法を見つけて実践していくのも妊活を続けるコツでもあります。

まとめ

今回は禁欲期間やその効果などについてまとめてきました。

たしかに禁欲期間を設けることで精子はたまりますが、妊娠において大切なのは精子の質です。

どのような状態の精子がいいのか、いまの自分の精子は妊娠に適しているのかなどは、クリニックなどで受けられる精液検査にて詳しく調べることができます。

これから妊娠を目指す方は、特に精子の質を意識するようにしてみましょう。

本記事の執筆者

ベビーライフ研究所編集部

ベビーライフ研究所編集部
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私たちが長年培ってきた妊活の知識や経験を活かして、より多くの方に正しい情報を発信いたします。

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本記事の監修者

大石 明代(おおいし あきよ)
看護師歴17年。
正看護師。静岡県出身。
静岡県立国際関係学部卒業。
社会人経験を経て看護学校に入学。卒業後、看護師となる。
現在産婦人科クリニックに勤務。自身も不妊治療経験者。
高度生殖医療は卵子と精子を出会わせてくれる手段であり、大切なのは自身の身体の力を高めること。
言われるがままの不妊治療では心身共に疲弊し、金銭的な不安も大きくなることから、妊娠の土台となる普段からの食事や運動、睡眠、心の持ち方が大事と考え、妊娠する力を高めるための発信の他、マンツーマンでの講座や施術を行っている。

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