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精液検査とは?手順と結果の見方やよくある質問について徹底解説

コラムイメージ写真

妊娠・出産への壁となる不妊症。その原因の50%は男性側にあるものと言われています。

たとえ性交渉において射精ができていても、出した精子に問題がある場合もあり、不妊症に気付かないこともあります。

そこで大切になってくるのが、精液検査です。

精液検査で自身のからだが現在どのような状態なのかを把握することで、自分にあった不妊治療を選び、パートナーと一緒に妊活を効率よく進めていくことが可能です。

今回は、精液検査とはどのようなものなのか、精液検査によって何がわかるのかなど、その手順や疑問について解説していきます。

精液検査とは

精液検査とは、1回の射精における精液の量と、精液内の精子がどのような状態なのかを調べることが目的の検査です。

精子は基本男性の精巣内で毎日作られており、その精子は体調や生活習慣によって状態が左右されるため、日を空けて複数回検査をすることが推奨されています。

その複数回の検査から総合的に数値を出し、精液・精子の具体的な状態を知ることができるのが精液検査です。

精液検査が必要な理由

最初にお伝えした通り、不妊の原因は50%が男性にあります。

精液や精子の異常は多くの場合自覚症状がなく、自身で気付くことはまずないと言われています。

加えて年齢を重ねると自然妊娠の確率も下がっていってしまうため、精液検査によって早めに異常を明らかにさせる必要があるのです。

精液検査と不妊症の関係

男性不妊症の原因として、射精障害や遺伝学的要因など様々な理由がありますが、中でも造精機能障害(精子を作る機能に問題がある)は不妊の原因として多くの比率を占めています。

ここで具体的に精子の問題を調べることで、さらなる原因の特定のために次のステップの検査、もしくは治療に進んでいくことができるのです。

費用相場

精子の数や運動率など、不妊治療を目的とする保険適用の範囲内での検査は、1回あたり1,000円程度の自己負担額で受けることができます。

精液検査が受けられる場所

ではこの精液検査はどこで受けることができるのでしょうか。

いくつか方法があるのでここで紹介します。

クリニック

まず精液検査が受けられる場所はクリニックです。

クリニックといっても一般的な総合病院をはじめ、不妊治療専門のクリニックもあるため、検査が受けられるのは以下の場所が主です。

・不妊治療専門クリニック

・男性不妊専門クリニック

・婦人科

・泌尿器科

先ほどお伝えした通り、精液検査には調べる項目が多くあり、その種類によって費用も変わってきます。

そのため、事前にクリニックを調べ、そのクリニックではどのような項目が調べられるのか、費用はどうなのか確認をしておきましょう。

検査キット

忙しくてクリニックに行く時間が確保できない…といった方には自宅で行う精子検査がおすすめです。

自宅で検査なんてできるの?と思われるかもしれませんが、正確には自宅で検査キットを用いて精子を採取し、郵送することで精液検査を行うことができます。

ここでおすすめの検査キットをご紹介します。

プレグナクト郵送精子検査

プレグナクト郵送精子検査は、ベビーライフ研究所が提供している郵送精子検査サービスです。

この検査では、1回の射精での精液量・精子数・精子濃度・精子正常形態率の4項目を調べることができます。

また、費用も4380円(税込)からと比較的安価なため、気軽に取り組むことができるかと思います。

詳しくはこちらの記事で詳しく紹介しているので、ぜひご覧ください。

精液検査で分かること

精液検査において調べることができるのは、主に以下の項目です。

・精液量

・精子濃度

・総精子数

・正常精子形態率

・前進運動率

・総運動率

・白血球数

また、WHOが2021年に発表した各項目の正常値は以下の通りとなっています。

検査項目下限基準値
精液量1.4ml以上
精子濃度1600万/ml以上
総精子数3900万/射精以上
正常精子形態率4%以上
前進運動率30%以上
総運動率42%以上
白血球数100万/ml未満

検査の結果が上記の数値を満たしていない場合、自然妊娠がしづらいと言われています。

ここからは精液検査で分かることについて、各項目がどのような意味を持っているかを含めて詳しく解説していきます。

精液量

精液量は、1回の射精においてどれだけの精液が出ているかを表す数値です。

この精液量が少ない場合は、逆行性射精や射精管の閉塞、精液の産生障害が疑われます。

精子濃度

精子濃度は、精液1mlあたりに含まれる精子の個数です。

精子濃度が1600万/mlより低い場合のことを、乏精子症と言います。

乏精子症の原因は精索静脈瘤や加齢などによる造精機能障害だとされており、特に精巣の温度が上昇しすぎると精子をつくることができなくなってしまいます。

総精子数

総精子数は精液の中に含まれる全精子の数です。

この総精子数は精液量と精子濃度から算出されるもので、基準値は3900万以上ですが、健常男性では多くの場合、1億以上あります。

精子が精液中に全くない状態を無精子症と言い、精子の通り道がふさがってしまっている閉塞性と、そもそも精子がほとんど作られていない非閉塞性の2つがあります。

正常精子形態率

正常精子形態率とは、正常な形をした精子がどのくらいいるのかを表した数値です。

正常ではない奇形精子の割合が多い場合、奇形精子症とされうまく受精ができず妊娠率が下がってしまいます。

奇形精子は、DNA情報が不完全であったり、前進能力が低かったりするため、精子は射精後の卵子への厳しい競争に適応できず、淘汰されます。その結果、正常な妊娠に結びつかないのです。

奇形精子が増える原因は明確にわかっていませんが、肥満や喫煙、精巣の温度の上昇、ストレスなども理由にあると考えられています。

前進運動率

前進運動率とは、精子が直進的な運動をしている割合を表す数値のことを指します。

精子の数が十分でも、精子が運動していなければ卵子まで辿り着くことができません。

また、精子が動き回っていても前進運動をしていない場合、同様に卵子に辿り着く確率が低くなってしまいます。

総運動率

総運動率は、運動をしている精子の割合を表します。

総運動率が基準値を下回ると精子無力症と診断され、ほとんど精子が動いてない場合は精子死滅症と診断されます。

この精子無力症は、乏精子症と同じく精索静脈瘤などの場合は運動率が低くなる傾向があります。

総運動率は精液検査の中でも重要視されている項目でもあり、それだけ精子の運動率は妊娠に深く関わってきます。

また、先ほど紹介したように運動率が基準を超えていても、前進運動する精子の割合が低い場合は卵子に辿り着く確率が低くなるため、前進運動率と合わせて考えることが重要です。

白血球数

白血球数は、精液内の白血球を染色することで測る数値です。

自然妊娠の基準を見たときに、ほとんどが「○○以上」なのに白血球だけ100万個「未満」?と思われた方もいるかもしれません。

本来、白血球は精液中に混ざらないものです。

しかし、感染症などにより白血球が精液に混ざり、基準である100万個以上白血球がある場合、膿精液症と診断されます。

白血球を含んだ精液では、精子の運動率が低下してしまうため、精子無力症につながる恐れがあります。

このように、精液検査では多くの項目を調べることで、細かな不妊の原因を特定する手助けができるのです。

これまで検査項目についてまとめてきましたが、大切なのは健康で妊娠可能な精子が精液中にどの程度存在するのかです。精子量は基準値より多いが運動率が著しく低い場合は妊娠しにくい体質とされるでしょう。

一方精子量が基準値より少なくても、濃度や運動率の数値が基準値よりもある程度高い場合、妊娠しやすい体質と言えるでしょう。

精液検査の種類と違い

先ほど精液検査の中でもクリニックで行うものと、自宅で行うものの2つを紹介しましたがこの2つにはどのような違いがあるのでしょうか?

クリニック

まずはクリニックで行う精液検査です。

クリニックで行う場合、自宅もしくはクリニックで採精し、そのまま検査へとスムーズに進めることが可能です。

医師や培養士などのクリニックに在籍する、熟練した専門家による結果を伺うことができるのが特徴です。

検査キット

検査キットは自宅で行う精液検査です。

自宅で採精し郵送で精液を検査に送るため、前進運動率・総運動率など動きに関する項目は調べられませんが、クリニックに行く時間が確保できない場合でも行うことができることが利点です。

どちらも別々のメリットがあるため、自身の都合や費用、検査したい項目などしっかりと調べて選ぶようにしましょう。

精液検査の手順

ここからは、精液検査の具体的な手順について解説していきます。

精液検査は、先ほど紹介したクリニックも、プレグナクト郵送精子検査どちらの場合もWHOの基準に則った手順で検査を進めていきます。

まずは採精室などの個室にて、マスターベーションで精液を採取し、液化するまで待ちます。

中にはクリニックでの採精に抵抗のある方がいるかもしれませんが、自宅にて採精したのちクリニックに持ち込むという方法も可能です。

この場合は、時間の経過で精子が死滅しないよう、クリニック推奨の時間内にクリニックに持ち込むことができるのが条件となってきます。

その後、顕微鏡などで各項目を1つ1つ検査していきます。

そして後日、検査結果を医師に説明してもらう、もしくは結果を郵送してもらうことで検査が終了します。

正しく結果を得るために注意すること

精子はストレスや生活習慣によって変化する、非常にデリケートなものです。

そのため、精液検査を行う場合は気を付けたいことがいくつかあります。

検査を受ける前に注意すること

まずは精液検査の前に気を付けたいことです。

検査には十分な量の精液が必要なため、2~7日の禁欲期間が必要です。

禁欲期間が短いと精子濃度が低くなり、正常な検査結果を得られない可能性があるのです。

ですが逆に、長く禁欲期間を設けてしまうと古い精子が多く排出されてしまい、運動率の低い精子や奇形の精子の割合が増えてしまう可能性があります。

そのため、事前に医師と相談し、適度な禁欲期間を設けるようにしましょう。

次に気を付けたいのが体調です。

体調が万全の状態での検査と比べると、発熱などの体調不良の状態での検査結果は数値が悪くなってしまうことがあります。

禁欲期間と合わせて、事前にからだを検査に適した状態にしておくことが、正確な検査結果を導くために大切になってきます。

専門の検査機関や検査キットを選ぶ

精液検査において重要なのは、その検査結果の正確性です。

現在は不妊治療専門クリニックや男性不妊専門クリニックも増えてきており、不妊治療や検査に力を入れているクリニックが多くあります。

そのような専門の検査機関を探し、事前に検査内容や評判などを調べておくことも大切です。

また、検査キットを使う場合は採精などを自身で進めなければいけないため、正しい手順をしっかりと踏まないと正確な検査結果が出ない可能性もあります。

検査キットを使って精液検査をする場合は、その点にも十分注意してください。

精神的なストレスを減らす

ストレスはからだに様々な悪影響を及ぼすことがありますが、それは精子も例外ではありません。

ストレスを抱えることで起こるからだへの悪影響には、精子の数の減少や運動率の低下など「精子の質の低下」も存在します。

精液検査の前だけではなく、普段からストレスを溜めすぎず、自分のペースで発散するように心掛けましょう。

生活習慣の改善

ストレスなどからくる生活習慣の乱れは、精子の質の低下に大きく関係してきます。

例えば睡眠時間が不足すると、夜間に分泌されている睡眠誘発ホルモンのメラトニンに存在する抗酸化作用が上手く働かず、精子の質が酸化によって低下してしまいます。

また、肥満も男性不妊になりうる要因の1つです。

適度な運動は肥満の解消のみならず、ストレスの解消にも繋がるため、睡眠時間の確保とともに取り組むようにしましょう。

複数回検査する

ここまで紹介してきたように、精子は生活環境や体調によってその数値が変わってしまうデリケートなものです。

例え生活習慣が整っており、健康的な男性でも精液検査の結果にばらつきが出てしまうこともあります。

そのため、検査への事前準備を万全にしたうえで複数回受けることで、より正確な検査結果を得られるようにしましょう。

精液検査で異常が見つかった場合の対処法

精液検査で何らかの異常が見つかった場合、精巣やホルモンなどのさらに詳しい検査を行うこともあります。

そのうえで自然妊娠が難しいと判断される場合、人工授精や体外受精などの生殖補助治療に進むことを検討します。

例えば、精子の運動率が悪く卵子まで辿り着きにくい場合は、AMH(抗ミュラー管ホルモン)、年齢、PCOS(卵巣多嚢胞性症候群)など、女性因子を考えた上で、運動率の良い精子を子宮内に直接注入する人工授精や体外受精へとステップを進めることがあります。

また、タイミングをご希望の場合は根治療法として精索静脈瘤手術を行い、造精機能の回復を図る場合もあります。

詳しくはこちらの記事をご参照ください。

精子を改善するためにできること

精液検査で精子の状態があまりよくないと分かった場合でも、精子の質を改善していくことは可能です。

具体的には、精液検査での注意点の項目で紹介した「生活習慣の改善」や「ストレスの軽減」です。

精子は基本的に毎日作られるものだからこそ、日々の生活に左右されてしまいます。

そのため、普段から健康的な生活を送るように心がけましょう。

また、食生活の改善ではサプリメントによって栄養素を補うという方法もあるので、生活習慣の改善を意識しすぎて、かえってストレスを抱えないような工夫も大切です。

こちらも詳しくまとめている記事がありますのでぜひ参考にしてみてください。

男性が妊活でやるべきこととは?妊娠するために取り組みたいこと | 妊活ならベビーライフ研究所 (babylife-lab.com)

精液検査についてよくある質問

最後に、精液検査に対する質問でよく挙げられるものを紹介します。

精液検査を受けたほうがよい人はどんな人ですか?

一定期間、性交渉を行っても妊娠ができない場合は男性女性どちらか、もしくは両方が不妊症である可能性があるため、パートナーとともに検査を受けましょう。

ですが妊活を始めるうえで自身の精液がどのような状態かを把握しておくことも大切なため、最初に受けておくのもおすすめです。

基準値以上であれば妊娠できますか?

各基準値は「1年以内にパートナーが自然妊娠した男性の精液所見」をもとに算出されています。「この数値を下回ると自然妊娠がしづらい」という指標です。

あくまでも自然妊娠の最低基準値として認識しておきましょう。

結果は日によってばらつきがあるって本当ですか?

はい、その日の体調や検査日までの禁欲期間など細かな条件でばらついてしまうことがあります。

そのため複数回の検査を受けることで、精子の状態を正しく把握するようにしましょう。

まとめ

皆さんの中には、不妊症=女性というイメージの方もいるかもしれませんが、今回紹介したように男性の不妊症も様々存在しています。

妊活をスタートするうえで自身のからだの状態を把握することはとても大切であり、精液検査を行うことで妊娠に向けた動き方も決めることができます。

これから妊活を進めていく予定の方は、ぜひパートナーとともに検査を受け、良いスタートをきれるようにしましょう。

本記事の執筆者

ベビーライフ研究所編集部

ベビーライフ研究所編集部
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本記事の監修者

塚田 寛人(つかだ かんと)
株式会社QOOLキャリア所属の胚培養士。日本獣医生命科学大学卒業後、検査会社にて動物の検査業務全般を担当。2015年から医療法人三秀会中央クリニックにてヒト胚を培養し、研究。2019年に千葉のクリニック開業に伴い培養室立ち上げに参画。2022年より、不妊治療情報センターにて妊活、不妊治療の技術について情報発信を行いつつ、QOOLキャリアの福利厚生サービス「TUMUGU」の学術統括として、企業へのプレコンセプションケアの導入促進を行う。

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