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シリンジ法の成功率はどれくらい?人工授精などの妊娠率と比較

コラムイメージ写真

近年、妊活の新しい形として注目されているシリンジ法というものがあるのをご存じでしょうか? 

不妊治療や妊活は精神的・肉体的に負担のかかるものも多く、比較的負担の少ないタイミング法でも、毎月妊娠しやすいタイミングに合わせて性交を重ねるのはなかなか難しいという声も聞きます。

シリンジ法は何らかの理由で性交を行うことが難しい、もしくはストレスを感じる方に有効な妊活方法です。さらに、妊娠を急ぐという精神的負担を軽減できるような方法となっております。

ではこのシリンジ法とはいったいどのようなものなのでしょうか?シリンジ法の細かなやり方や成功率、成功率を上げるコツから疑問まで詳しく解説していきます。

シリンジ法とは?

シリンジ法とは、性交をしなくても妊活することができる方法で、シリンジ法のキットという針のない注射器のようなものを使います。

具体的には、マスターベーションで採取した精液を、このシリンジ法のキットを使い女性の膣の中に直接注入する、というものです。

使い方もシンプルなため、自分たちで試すことができます。

また、シリンジ法が注目されている大きな理由の1つが、その費用の安さです。

シリンジ法は1回あたり500〜1,000円と安く、精神的・肉体的な負担のほか、経済的負担も軽減できる方法となっています。

シリンジ法についてもっと詳しく知りたい方はコチラ

シリンジ法の対象となるカップル・おすすめ

ではこのシリンジ法とはどのような方が対象なのでしょうか。

具体的には「男性・女性ともに明らかな不妊原因がなく、自然妊娠が可能」ということが条件になってきます。

シリンジ法は採取した精液をそのまま膣に注入するため、あくまで自然な受精の手助けのようなものです。

例えば、無精子症や精子無力症などの男性側の問題や、排卵障害・卵管障害などの女性側の問題、これらが1つでもある場合はシリンジ法による妊娠は難しいです。

そのため、自身の身体がどのような状態なのか、自然妊娠が可能なのかをクリニックでしっかり検査することが大切になってきます。

また、シリンジ法は以下のような方におすすめです。

  • 腟内射精障害などにより性交が難しい
  • 仕事の時間や疲れで性交の時間を確保できない
  • 連日での性交にストレスを感じている
  • タイミングを増やし、少しでも妊娠の確率を高めたい

妊活を進めていくと、どうしても焦りや不安、疲れなど精神的・肉体的な負担がかかってしまい、上記のような悩みも出てきます。

シリンジ法を上手く使うことで、これら様々な負担を軽減することも可能になってくるので、1つの選択肢として視野に入れてみるのもいいかもしれません。

シリンジ法の成功率は?本当に妊娠できるのか。

シリンジ法について興味をもった時に、まず考えるのは「本当に妊娠するの?」という疑問だと思います。

結論からいうと、シリンジ法は通常の性交と同程度の妊娠率とされています。

海外の研究(M.Sara Rosenthal.The Fertility Sourcebook.Third Edition より)によると、避妊をしていないカップルの排卵1周期あたりの自然妊娠確率は以下の通りです。

年齢1周期あたりの妊娠率
25歳25~30%
30歳25~30%
35歳18%
40歳5%
45歳1%

このように、年齢が上がるにつれて妊娠の確率は徐々に下がっていってしまいます。

そして年齢を重ねると、体力の低下など様々な理由から、性交自体も難しくなってきます。しかしそういったときに性交の代わりになるのがシリンジ法なのです。

※40歳以上では自然妊娠率がかなり低下するため、不妊治療をメインとして妊活を行う事を推奨いたします。

また、インドの不妊治療医ら(Kaberi Banerjee and Bhavana Singla)が発表した論文によると、年齢に関係なくシリンジ法は十分に妊娠する可能性があり、シンプルで使いやすく効果的な方法とされています。(通常の性交における妊娠率と同様で、20代から40代と年齢が上がるにつれて妊娠率は低下していく。)

具体的な研究結果として、排卵予定日の前後でシリンジ法のキットを用いてタイミングをとり、排卵日6周期目までに妊娠した確率として、20~33歳で68.9%(29組)、33~36歳で42.8%(14組)、36歳以上で25.0%(12組)という妊娠率でした。

(参加した被験者は膣痙やEDなど何らかの理由で通常の性交ができない、もしくは難しいカップル)

出典:Pregnancy Outcome of Home Intravaginal Insemination in Couples with Unconsummated Marriage

人工授精との違い

シリンジ法のやり方を聞いて、人工授精と似ている?と感じた方もいるかもしれませんが、人工授精とシリンジ法には細かな違いがあります。

まず、シリンジ法は採取した精液をそのまま膣に注入するのに対し、人工受精は運動機能が良好(運動率が高い)な精子を回収し、雑菌や死滅した精子を排除した後に、子宮内に注入するという点です。

そのため、精子の運動率が悪い方などは人工授精による精子の洗浄・濃縮を行わないとなかなか受精させることができません。

※精子の運動率が20%未満の極めて低い方や、精子濃度が薄い方は人工授精での妊娠は難しいとされています。

次に、精液を注入する場所の違いがあります。

通常、膣内に射精された精子は、子宮頸管内を泳いで子宮内を通り、卵管を通過して卵管膨大部に達し、排卵された卵子と受精します。

シリンジ法は、膣に精液を注入し上記のような通常の過程での受精を促しますが、人工授精では、より受精がしやすいように医師が専用のカテーテルを用いて直接子宮に精子を注入します。

最後に、シリンジ法と人工授精は費用が大きく違います。

シリンジ法は1回あたり500〜1,000円と紹介しましたが、人工授精はクリニックによって差はありますが、検査や薬剤の費用を含め平均で約35,000円ほどかかります。

また、人工授精で妊娠に至った方の半数近くが3回以上行っているというデータもあり、複数回繰り返すことで費用の負担も大きくなってしまいます。

このように、シリンジ法と人工授精には様々な違いがあるため、それぞれのメリット・デメリットを把握することが大切です。

シリンジ法の成功率を上げるコツ

シリンジ法はやり方が簡単な一方で、様々なコツが存在します。

妊娠率を上げるためにもこのコツについて見ていきましょう。

まずは卵子と精子の寿命を知る

精子と卵子にはそれぞれ寿命が存在します。

精子は一般的に射精後、女性の体内では48〜72時間が寿命だと言われています。

また、精子の寿命は女性の膣の環境にも左右されます。排卵日付近ではない場合の膣内は酸性に傾いており、この環境は酸に弱い精子の寿命を数時間ほどに減らしてしまうと言われています。

一方、卵子の場合、排卵後24時間程度が寿命と言われています。この24時間以内に受精しない場合は妊娠することができません。

これらの条件から、シリンジ法を実践する場合でもしっかりと排卵日を予測し、卵子が排卵される時に精子が卵管膨大部(卵管の先端)で待っている状況にすることが大切です。

排卵日を知るために基礎体温をつける

ご自宅で排卵日を予測するのに必要不可欠なのが基礎体温です。

基礎体温とは安静状態にある時の体温であり、寝ている間の体温のことを指すため、朝起きたタイミングで測ります。

基礎体温には低温期と高温期を繰り返す周期があります。女性は排卵をすると体温が上昇し高温期に入るため、基礎体温を毎日つけることでこの周期を把握し、排卵日を予測することができます。

普段から基礎体温を記録するようにし、シリンジ法をスムーズに進められるように準備しましょう。

排卵誘発剤の使用

シリンジ法やタイミング法などを進めてもなかなか妊娠ができない場合、排卵が上手く行われていない可能性があります。

このような場合、排卵をさせるためにクリニックにて排卵誘発剤を使うことがあります。

排卵誘発剤とはその名の通り、排卵を促すための薬です。この排卵誘発剤には経口薬と注射薬があります。

それでもあまり効果がない場合、次の段階として注射薬によって直接卵巣を刺激し排卵を促します。

シリンジ法を試してもなかなか妊娠ができない場合は、メリット・デメリットをしっかりと把握したうえで、排卵誘発剤の使用も検討してみましょう。

採精のポイント

男性からの精子の採取にもコツがあります。それが、精子の質を低下させないよう普段から意識しておくことです。

精子は基本的に毎日新しいものがつくられています。そのため、マスターベーション等をせずに精子を溜めても、古い精子は死に、生きている精子にも悪影響を及ぼしてしまいます。

射精をせずに精子を溜めておけば、精液量が増え妊娠しやすくなると考える方もいるかもしれませんが、精液量が多くても精子の質が悪ければ意味がありません。

また、過度なアルコールの摂取や喫煙は精子の生産を低下させてしまいます。それだけではなく、性欲の低下や精子の運動率の低下にも繋がると言われています。

もちろん、適度な量の飲酒ではそのような影響は少ないため、普段から飲酒する方はアルコールの量に気を付けましょう。

アルコールと同じように気を付けたいのがストレスです。ストレスが重なると睡眠や食事など生活習慣に悪影響を及ぼしてしまいます。

このような生活習慣の乱れは免疫力の低下や精子の減少に繋がってしまいます。

シリンジ法での妊娠率を高めるために、普段から精子の質の低下を防ぐように気を付けましょう。

確率をあげるためにも回数が重要

そもそも性交や不妊治療などどんな形であれ、1回きりで妊娠するということはとても難しいです。

しかし、排卵日に合わせて性交を毎回行うのは身体的負担も大きく、そこまで毎回時間を取れないという声も多く聞きます。

そこで上手く使いたいのがこのシリンジ法です。

シリンジ法は、男性から採取した精液を膣内に注入するという、通常の性交と同じような構造のため、妊娠率も自然妊娠とあまり変わらないと言われています。

そのため、性交よりも少ない負担で妊娠を目指せ、回数も重ねやすいものとなっています。

1回あたりの値段も比較的安いため、タイミングを合わせて多く実施してみましょう。

シリンジ法のキットで成功率を上げる使い方のコツ

ここまでは普段から心がけるコツをまとめてきましたが、ここで実際にシリンジ法のキットを使う際のコツに注目してみましょう。

性交と合わせて使用する

普段から性交に抵抗がなく、ある程度の頻度で行える方でも、毎月排卵日に合わせて時間を空けるのはなかなか難しいことが多いです。

そこで、性交の他にシリンジ法という選択肢を増やすことによって、今日は性交、今日はシリンジ法と、通常よりも多くのタイミングを確保することができます。

そうすることで、1回の排卵あたりにとれるタイミングを増やし、成功率を上げることが可能となってくるのです。

精液は採取して5~10分放置し、液状化後すぐに膣に注入する

精液は最初、ゲル状のためシリンジによって吸い上げづらい状態です。そのため、まずは5〜10分ほど放置しサラサラになってからシリンジで吸い上げます。

この時に注意したいのが、精液がサラサラになったらすぐにシリンジで吸い上げ膣に注入することです。

精子は乾燥に弱いため、放置しすぎてはいけません。サラサラになったのを確認して素早く膣に注入しましょう。

精液注入後漏れないように注意

精液を膣内に注入した後は、漏れてこないように少しの間横になって安静にしていましょう。

液状化しているため多少漏れてしまうことがありますが、通常の性交時でも漏れることはありますし、漏れたからといって妊娠しにくいということはありません。

また元気の良い精子は頸管から子宮に進入していくので、一部が流れ出ても心配はありません。

しかしすぐに動いて多くの量が漏れてしまうことは避けたいので、安静にしましょう。

また、腰の下に枕などを入れ、物理的に漏れずらい体勢をとることもおすすめします。

シリンジ法でよくある質問

ここで、シリンジ法についてよくある質問を紹介します。

Q.精子は空気に触れたら死滅して妊娠率が下がる?

皆さんの中には、「精子が空気に触れると死滅する」といった話を聞いたことがある方もいるかと思います。

特にシリンジ法は、一度精液を液状化させる際に空気に触れさせているため、この部分が不安に感じると思います。

しかし、この情報は完全に間違っているとは言えないものの少し誤った認識です。精子は精液の液体が完全に乾燥した時に死滅すると言われています。

具体的には、精子は精液によって守られているため、精液が液体のままであれば、空気に触れたとしても精子が死滅することはありません。

つまり、空気に触れた精液でも膣内に注入することで、精液を直接膣内で射精する場合と同様に、十分に妊娠する可能性があるのです。

Q.奇形や障害の心配はあるの?

また、性交による自然な妊娠とは違うことから、奇形や障害を持った赤ちゃんが生まれてきたりしないかとの不安の声も聞きます。

こちらも、そういったデータは存在しないため心配ありません。

シリンジ法は性交をしないだけであって自然妊娠とほとんど同じと言われております。そのため、特別リスクがあるという訳ではないのです。

このように、シリンジ法はまだ一般的に知られていない方法のため、様々な疑問を持つ方も少なくありません。

ですがこのシリンジ法は、クリニックでも先生に提案されることもある安全な方法です。そのため、クリニックで進め方の相談なども行うことができます。

自身の身体がどういった状態で、シリンジ法が合っているのか、ぜひ一度クリニックでの検査も検討してみてください。

シリンジ法の成功率についてのまとめ

ここまでシリンジ法の詳細についてまとめてきましたが、いかがでしたでしょうか。

使い方が簡単・費用が抑えられる、といった理由から使ってみようかなと思った方もいるかもしれません。

ですがお伝えした通り、明らかな不妊原因がなく自然妊娠が可能な方でないとシリンジ法での妊娠は難しいです。

そのため、まずはクリニックでの検査で、自分の身体とあっているのか、自身とパートナーは自然妊娠を目指しやすい状態なのかどうかをしっかりと調べてみましょう。

また、排卵誘発剤の使用や正確な排卵日の特定のための超音波検査など、クリニックでしか行えないものもあります。たくさんある妊娠への選択肢から、自分にあった進め方を探していきましょう。

シリンジ法成功率についてのQ&A

Q1.シリンジ法の成功率はどのくらいですか?

シリンジ法は通常の性交と同程度の妊娠率とされています。具体的な研究結果として、排卵予定日の前後でシリンジ法のキットを用いてタイミングをとり、排卵日6周期目までに妊娠した確率として、20~33歳で68.9%(29組)、33~36歳で42.8%(14組)、36歳以上で25.0%(12組)という妊娠率でした。ただし通常の性交における妊娠率と同様で、20代から40代と年齢が上がるにつれて妊娠率は低下していきます。

Q2.シリンジ法と人工授精の違いはなんですか?

シリンジ法は採取した精液をそのまま膣に注入するのに対し、人工受精は運動機能が良好(運動率が高い)な精子を回収し、雑菌や死滅した精子を排除した後に、子宮内に注入するという点です。また精液を注入する場所の違いもあります。シリンジ法は、膣に精液を注入し上記のような通常の過程での受精を促しますが、人工授精では、より受精がしやすいように医師が専用のカテーテルを用いて直接子宮に精子を注入します。

Q3.シリンジ法はどんな人におすすめですか?

膣内射精障害などにより性交が難しい人、仕事の時間や疲れで性交の時間を確保できない人、連日での性交にストレスを感じている人、タイミングを増やし、少しでも妊娠の確率を高めたい人

本記事の執筆者

ベビーライフ研究所編集部

ベビーライフ研究所編集部
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本記事の監修者

塚田 寛人(つかだ かんと)
株式会社QOOLキャリア所属の胚培養士。日本獣医生命科学大学卒業後、検査会社にて動物の検査業務全般を担当。2015年から医療法人三秀会中央クリニックにてヒト胚を培養し、研究。2019年に千葉のクリニック開業に伴い培養室立ち上げに参画。2022年より、不妊治療情報センターにて妊活、不妊治療の技術について情報発信を行いつつ、QOOLキャリアの福利厚生サービス「TUMUGU」の学術統括として、企業へのプレコンセプションケアの導入促進を行う。

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