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#75

38歳の妊娠確率は?高齢出産が難しい理由や今後の妊活&不妊治療について解説

コラムイメージ写真

高齢での妊娠・出産は難しいということを聞いたことはありますか?

実際、年齢を重ねるごとに様々な理由から妊娠が難しくなり、それに伴い出産も大変なものになっていきます。

今回は高齢出産が難しい理由を解説するとともに、38歳で妊活をする方に向け、どうすれば上手く妊娠できるのか、その心がけや不妊治療についてまとめていきます。

38歳での妊娠 どのくらい難しい?

高齢出産が難しいと言っても、実際どのくらい難しいものなのでしょうか?

まずは妊娠の確率などの各データから、ほかの年代と比較しながら見ていきましょう。

38歳で自然妊娠する確率

海外での研究の結果(M.Sara Rosenthal.The Fertility Sourcebook.Third Edition より)によると、1年間避妊をせず性交渉を行った際の年代別自然妊娠確率は以下の通りです。

1年を通しての妊娠率は20~24歳では86%もあるのに対し、35歳を過ぎると50%付近にまで低下します。この結果からは38歳の自然妊娠の確率は約52%前後と見ることができます。

年齢自然妊娠の確率
20~24歳86%
25~29歳78%
30~34歳63%
35~39歳52%
40~44歳36%
45~49歳5%

また、女性の排卵1周期当たりの妊娠率は以下の通りになっています。

年齢1周期あたりの妊娠率
25歳25~30%
30歳25~30%
35歳18%
40歳5%
45歳1%

このように、年齢を重ねるごとに自然妊娠の確率は下がっていき、特に1周期当たりの妊娠率は35〜40歳のあいだに一気に13%も低下してしまうのです。この数値から、38歳の年齢だと1周期あたりの妊娠率はおおよそ10%前後と読むことができます。

38歳で不妊治療をした場合の出産率

自然妊娠が難しい場合は不妊治療にステップを移行しますが、そちらの出産率も年齢とともに低くなっていきます。

厚生労働省によると30代の不妊治療による出産率は以下のようになっています。

年齢出産率
30歳19.9%
31歳19.4%
32歳19.1%
33歳18.1%
34歳17.7%
35歳16.3%
36歳15.4%
37歳14.2%
38歳11.6%
39歳10.2%

出典:厚生労働省 不妊治療における年齢別の出産率と流産率

自然妊娠の確率と同様に、やはりこちらも30代後半になると顕著に下がり始め、38歳の時点で11.6%まで低下してしまいます。

また40代になるとさらに低下してしまい45歳では0.6%しか妊娠率が無くなってしまうため、40~45歳で不妊治療を諦めるカップルが多いのも事実です。

38歳の平均妊活期間

年代別の平均妊活期間は以下のようになっています。

年齢平均妊活期間
20~24歳4ヶ月
25~29歳6ヶ月
30~34歳8ヶ月
35~39歳13ヶ月

このように、20歳~34歳までは各年代ごとに2ヶ月ずつ多く妊活期間が長くなっていますが、35~39歳になった段階で一気に5ヶ月も長くなっています。

これは先ほど紹介したデータが、35歳から一気に下がっていることからわかる通り、30代後半からは妊娠が難しくなり、それだけ妊活期間も長くなっているということです。

子供に障害・ダウン症が現れる確率

高齢出産の場合、胎児へのリスクの1つにダウン症の子供が生まれやすいというものがあります。

母体の年齢別のダウン症の確率は、37歳の時点で約1/243、39歳では1/147というデータがあります。

そのため38歳の時点ではおよそ1/200ほどと考えられます。

この原因の1つが加齢による卵子の劣化です。

この卵子の老化により染色体の異常が多くなると、受精が上手く行えない場合や、受精ができても上手く胚が成長しない、といった問題が起きてしまいます。

出典:15.超音波検査と染色体検査との関連(出生前診断について) – 日本産婦人科医会 (jaog.or.jp)

38歳での妊娠が難しい理由

ではなぜこのように38歳では妊娠が難しくなるのでしょうか?

ここからはその理由について解説していきます。

卵子の数が減るため

卵子は男性の精子と違い、毎日新しく作り出されることはありません。

卵子は女性が赤ちゃんとして生まれる前、お母さんのお腹の中にいる胎児のころに卵子のもととなる原子卵胞というかたちで一生分が作り出されます。

5~6ヶ月の胎児の時には500~700万個も存在しますが、生まれてくる時点で約200万個、思春期には約30万個ほど、子どもを産める年齢には10~30万個になってしまいます。

そこからは1ヶ月で約1000個ずつ減少していってしまうため、高齢になるほど妊娠がしづらくなってしまうのです。

卵子の染色体異常の割合が上昇するため

年齢が高くなると卵子の染色体異常の数が増えていきます。

この染色体異常の割合が高いと妊娠できる確率が下がってしまいます。

また例え妊娠ができても、胎児のダウン症のリスクが増加するほか、流産や早産などの確率が高まってしまうのです。

着床率が下がるため

妊娠は受精卵が子宮内膜と接着することで始まります。

このことを着床と呼びますが、着床率は年齢とともに下がっていき、その原因は先ほど紹介した染色体異常ではないかと言われています。

また着床率は36~37歳で21%、38~39歳では11.6%、40歳以上では6.5%と顕著に低下したという報告もあります。

参考:Informed Concent なぜ年齢の上昇に伴い妊娠が難しくなるのでしょうか? | 金山レディースクリニック (klc.ne.jp)

38歳で妊娠を望む女性が検討する不妊治療

年齢とともに低下する自然妊娠率ですが、近年は不妊治療の技術も進化してきているため、様々な方法で妊娠を目指すことが可能となっています。

では具体的にどのような不妊治療があり、向いているのはどのような人なのでしょうか?

タイミング法

タイミング法は、クリニックで行う最初の不妊治療です。

これは妊娠しやすい性交のタイミングを医師に指導してもらう方法で、クリニックでの検査から予測するほか、自宅で基礎体温表をつけることでもある程度予測することができます。

タイミング法は男性女性ともに明らかな不妊原因がない方に向いていますが、あくまでも「自然妊娠の確率」を引き上げる方法です。

そのため妊娠の確率が低下してきている38歳ではあまりおすすめできません。

人工授精

人工授精とは、妊娠しやすいタイミングに合わせて、男性の精子を直接子宮内に注入する方法です。

自然妊娠では膣に精液が入りそこから子宮に到達するのに対し、人工授精では直接子宮に精子を注入するので、精子と卵子が出会う確率が自然妊娠に比べて高いです。

また人工授精では、不純物を取り除くため精子を一度洗浄・濃縮します。そのため、男性不妊症状や性交障害がある場合などに有効な不妊治療となっています。

ですが、精子の数や運動機能が極端に悪い、卵管が詰まっているなどの問題がある方には向いていません。

体外受精

体外受精は人工授精のような精子の採取だけではなく、精子と卵子どちらも採取し、卵子と培養液を入れたシャーレに元気の良い精子を入れることで受精させる方法です。

基本的に体外受精は、タイミング法や人工授精でも妊娠できなかった方が次のステップとして取り組むことが多いほか、女性が高齢の場合に向いている方法となります。

こちらも人工授精と同様に精子の運動機能が極端に低い場合、うまく受精できないことがあります。

顕微授精

顕微授精は、針の先端に1個の精子を入れ、顕微鏡で確認しながら卵子に直接注入する方法です。

精子が自力で卵子に辿り着く必要がないため、精子の運動機能が低く体外受精でもうまく受精できない方などに向いています。

また、精子の数が少ない方にも向いている方法となっています。

番外編:卵子凍結

卵子凍結という言葉を皆様はご存知ですか?

これは、良好な状態の卵子を事前に採取し、凍結により保存する手段です。

卵子は年歳と共に老化してしまう事実を踏まえ、高齢になった後でも妊娠を望むケースに備えることができます。

しかし、卵子を凍結させた安心感から、逆に妊娠への取り組みが長期にわたる可能性があるという点も忘れてはなりません。

ですので、この方法が真に必要なのかどうかをしっかりと見極めることが大切です。

▼卵子凍結での妊娠率▼

卵子凍結を利用した妊娠成功率は、卵の採取時の年齢によって変動します。30歳以下で取り出した卵子における成功率はおおむね35%、31~34歳では30%、35~37歳では25%、38~39歳では20%となり、40歳以上では15%あるいはそれ以下となります。

▼採卵と凍結の方法▼

卵子凍結の過程では、通常、排卵誘発剤を使用して多数の卵子を成熟させます。毎回の治療サイクルにおいて、4個から15個の卵子を取り出すことを目指しますが、具体的な数は個々の差によります。取り出す卵子の理想的な数は15個です。

▼卵子凍結の年齢制限と保存期間▼

年齢的な制約として、卵子凍結は一般的に39歳以下の女性が対象となっています。大半の場合、卵子は49〜50歳まで保管されます。

▼リスクと費用▼

医療的なリスクとしては、卵子の採取過程における疼痛、出血、炎症、そして卵巣過剰刺激症候群があります。費用面では、採取費用は概ね20~50万円、卵子凍結の保管期間を延長するためにかかる年間費用は約2~3万円です。

※参考サイト:ミネルバクリニック六本木レディースクリニックTelling(朝日新聞)

38歳で妊娠するために心がけること

年齢を重ねてからの妊活では、妊娠のために普段から心がけておくべきことがいくつかあります。

できるだけ早く検査を受ける

38歳から妊娠を目指す場合は時間との勝負です。

そのため、妊活を始める際は、まずはできるだけ早く検査を受けて、妊娠・出産に影響を与える病気や感染症がないかを調べましょう。

診察、検査をすることで現在自身のからだがどのような状況なのかを知り、それをもとに医師と治療方針を相談し、決めることができます。

また、どのような方法で妊活を進めていくのかを素早く決めるためにも、まずは婦人科での診察、検査、相談をすぐに行いましょう。

体を冷やさない

体の冷えは血液循環の悪化を引き起こしてしまい、生理不順や子宮内膜症、無排卵など妊娠を妨げるきっかけにもなりかねません。

体が冷える原因は様々あり、例えば運動不足や食生活の乱れ、ストレスなどが影響してきます。

妊娠に備えた身体づくりのためにも、まずは健康的な生活習慣を意識しましょう。

規則正しい生活を送る

規則正しい生活リズムはからだのバランスを整えるためにもとても大切です。

特に睡眠は、エストロゲンという受精卵が着床しやすいようにする働きがある物質を分泌します。

睡眠不足が続くとこのエストロゲンがうまく分泌されないほか、自律神経が乱れてしまい、子宮や卵巣に悪影響を及ぼす可能性もあります。

そのため、なるべく8時間程度の睡眠を取るようにし、規則正しい生活リズムを意識しましょう。

適度な運動をする

出産や産後の早期回復には、適度な筋肉が必要です。

しかし筋肉は30代をピークに徐々に落ちていってしまうため、高齢妊娠の際は出産に時間がかかることが多いです。

そのため妊娠前から適度に運動をする習慣をつけておきましょう。

飲酒・喫煙などの習慣を見直す

主に男性側への影響ですが、喫煙はED(勃起不全)のリスクが高まるほか、精子の濃度や運動率が低下してしまう可能性があります。

また女性も妊娠後は飲酒喫煙が胎児に悪影響を及ぼしてしまうため、妊活の段階から飲酒喫煙の習慣を見直すようにしましょう。

食生活の改善

妊活において食生活で取り入れたほうが良い栄養素は多くありますが、その中でも特に大切なのが葉酸です。

葉酸は細胞の再生や生産に欠かせない栄養素で、妊娠中にも胎児のために多く摂取したほうが良いとされていますが、実は高齢での妊娠のためにも大変重要な役割があります。

それが「卵子の劣化を遅らせる」働きです。

先ほど、ダウン症のリスクや妊娠率の低下の原因として卵子の劣化を挙げましたが、葉酸は卵子の劣化の原因の1つである身体の酸化を防ぐ役割があるのです。

葉酸は野菜や柑橘類、納豆などに含まれているほか、サプリでも摂取することができるので、適度に取り入れてみましょう。

まとめ

38歳での妊娠・出産はたしかに確率の低いものですが、近年は高齢出産も増えており、また不妊治療という手段もあるためそこまで珍しいものではなくなってきています

ですが若い年齢と比べるとやはり難しいものでもあるため、普段から妊活のために様々なことを心がけておく必要があります。

まずは自分に合った妊活の進め方を見つけていきましょう。

本記事の執筆者

ベビーライフ研究所編集部

ベビーライフ研究所編集部
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本記事の監修者

藤本 彩巴(ふじもと あやは)

藤本 彩巴(ふじもと あやは)
胚培養士。宮城県出身。
山形大学農学部食料生命環境学科卒業。
生殖補助医療胚培養士資格、体外受精コーディネーター資格を取得。生殖細胞の操作以外にも、患者様夫婦とお話をする機会があり、その際、不要な治療を続けているご夫婦が多いことに気がつき、現在は食事・運動・睡眠の見直しを促す発信をしている。不妊治療はあくまでサポートであり、対処療法に過ぎないため、本来の身体の機能を最大限発揮できるようなポイントを、ご本人の生活に寄り添った内容でお届けしている。

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