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39歳で妊娠する確率は?不妊治療にかかる期間、出産率について解説
本記事の監修者
藤本 彩巴(ふじもと あやは)
胚培養士。宮城県出身。
山形大学農学部食料生命環境学科卒業。
高齢での妊娠・出産は若い年齢の時と比べて次第に難しくなっていくものです。
その要因は様々ありますが、近年は不妊治療の手段も増えてきており、高齢出産の割合も全体的に増えています。
今回は39歳で妊活をする方に向け、妊娠が難しくなる理由をはじめ、39歳で出産できる確率や不妊治療の種類・期間などについて解説していきます。
39歳での妊娠はどのくらい難しい? 40歳以上での妊娠との違い
年齢とともに難しくなる妊娠ですが、具体的にどのくらい確率が下がっていくのでしょうか?
各データで比較するとともに、40歳以上との妊娠確率の違いについても注目してみましょう。
39歳で自然妊娠する確率
海外での研究の結果(M.Sara Rosenthal.The Fertility Sourcebook.Third Edition より)によると、1年間避妊をせず性交渉を行った際の年代別自然妊娠確率は以下の通りです。
年齢 | 自然妊娠の確率 |
20~24歳 | 86% |
25~29歳 | 78% |
30~34歳 | 63% |
35~39歳 | 52% |
40~44歳 | 36% |
45~49歳 | 5% |
また、女性の排卵1周期当たりの妊娠率は以下の通りになっています。
年齢 | 1周期あたりの妊娠率 |
25歳 | 25~30% |
30歳 | 25~30% |
35歳 | 18% |
40歳 | 5% |
45歳 | 1% |
これらのデータからわかるように妊娠の確率は年齢とともに下がっていきますが、35歳を超えたあたりから顕著に下がっていきます。
また40歳を超えると1周期当たりの妊娠の確率はわずか5%にまで下がってしまいます。
39歳という年齢はそれだけ自然妊娠が難しい年齢なのです。
39歳で不妊治療をした場合の出産率
自然妊娠が難しい場合、基本的に不妊治療へステップを移行します。
厚生労働省によると30代の不妊治療による出産率は以下のようになっています。
年齢 | 30代の出産率 |
30歳 | 19.9% |
31歳 | 19.4% |
32歳 | 19.1% |
33歳 | 18.1% |
34歳 | 17.7% |
35歳 | 16.3% |
36歳 | 15.4% |
37歳 | 14.2% |
38歳 | 11.6% |
39歳 | 10.2% |
また40代では以下のような確率になっています。
年齢 | 40代の出産率 |
40歳 | 7.7% |
41歳 | 5.3% |
42歳 | 3.7% |
43歳 | 2.0% |
44歳 | 1.3% |
45歳 | 0.6% |
出典:厚生労働省 不妊治療における年齢別の出産率と流産率
このように30代では、不妊治療での妊娠率が10年間で約10%ほど下がってしまい、39歳の時点で10.2%にまで低下してしまいます。
その後40代に入ると6年ほどでさらに10%ほど下がり、45歳の時点で0.6%しか無くなってしまいます。
そのため、不妊治療の場合であっても39歳の方は素早く取り組まないと、一気に妊娠が難しくなってしまうのです。
39歳の平均妊活期間
年代別の平均妊活期間は以下のようになっています。
年齢 | 平均妊活期間 |
20~24歳 | 4ヶ月 |
25~29歳 | 6ヶ月 |
30~34歳 | 8ヶ月 |
35~39歳 | 13ヶ月 |
このように、20歳~34歳までは各年代ごとに2ヶ月ずつ多く妊活期間が長くなっていますが、35~39歳になった段階で一気に5ヶ月も長くなっています。
これは先ほど紹介したデータが、35歳から一気に下がっていることからわかる通り、30代後半からは妊娠が難しくなり、それだけ妊活期間も長くなっているということです。
子供に障害・ダウン症が現れる確率
高齢出産の場合、胎児へのリスクの1つにダウン症の子供が生まれやすいというものがあります。
母体の年齢別のダウン症の確率は、39歳の時点で1/147というデータがあり、この原因の1つが加齢による卵子の劣化です。
またこちらも40歳を越えるとさらに確率が上がってしまいます。
出典:15.超音波検査と染色体検査との関連(出生前診断について) – 日本産婦人科医会 (jaog.or.jp)
39歳での妊娠が難しい理由
ではなぜ年齢を重ねるごとに妊娠がここまで難しくなるのでしょうか?
ここからはその理由について、様々な視点から見ていきましょう。
卵子の数が減るため
男性の精子は基本的に毎日作り出されますが、卵子は生まれる前に一生分が作り出されます。
5~6ヶ月の胎児の時では500~700万個ほどですが、そこから減少し続け生まれてくる時点で約200万個、思春期には約30万個、子どもを産める年齢には10~30万個になってしまいます。
卵子はその後も1ヶ月で約1000個ずつ減少していくため、高齢になるほど妊娠がしづらくなってしまう、というわけです。
卵子の染色体異常の割合が上昇するため
卵子は母体の年齢が高くなるにつれ、染色体異常の数が徐々に増えていきます。
染色体異常の割合が高いと妊娠できる確率が下がってしまい、例え妊娠ができても、胎児のダウン症のリスクが増加するほか、流産や早産などの確率が高まってしまうのです。
着床率が下がるため
受精卵が子宮内膜と接着することを着床と呼びますが、着床率は年齢とともに下がっていってしまいます。
その原因は先ほど紹介した染色体異常ではないかと言われています。
また着床率は38~39歳では11.6%にまで下がるという報告があるほか、流産の可能性も年齢とともに上がってしまいます。
参考:Informed Concent なぜ年齢の上昇に伴い妊娠が難しくなるのでしょうか? | 金山レディースクリニック (klc.ne.jp)
39歳で妊娠を望む女性が検討する不妊治療
高齢での出産の確率自体は低いですが、令和3年には出生数のうちの約30%が高齢出産であり、その割合が意外にも多いことがわかります。
これを可能にしている1つが不妊治療です。
ではこの不妊治療にはどのような種類のものがあり、向いているのはどのような人なのでしょうか?
タイミング法
タイミング法は、妊娠しやすい性交のタイミングを医師に指導してもらう方法で、からだへの負担が少ないです。
また妊娠しやすいタイミングは、自宅で基礎体温表をつけることでもある程度予測することができます。
こちらは男性女性ともに明らかな不妊原因がない方に向いていますが、あくまでも「自然妊娠の確率」を引き上げる方法です。
そのため妊娠の確率が低下してきている39歳ではあまりおすすめできません。
人工授精
人工授精とは、事前に採取した精子を妊娠しやすいタイミングに合わせ、子宮内に直接注入する自然妊娠に近い方法です。
自然妊娠では膣に精液が入りそこから子宮に到達するのに対し、人工授精では直接子宮に精子を注入するので、精子と卵子が出会う確率が自然妊娠に比べて高いです。
人工授精では、不純物を取り除くため精子を一度洗浄・濃縮します。
そのため、男性不妊症状や性交障害がある方に向いていますが、精子の数や運動機能が極端に悪い、卵管が詰まっているなどの問題がある方には向いていません。
体外受精
タイミング法や人工授精でも妊娠できなかった方が次のステップとして取り組むことが多いのが体外受精です。
体外受精は人工授精と違い、精子と卵子どちらも採取し、卵子と培養液を入れたシャーレに元気の良い精子を入れることで受精させる方法です。
体外受精は、人工授精と同様に精子の運動機能が極端に低い場合、うまく受精できないことがあります。
顕微授精
顕微授精は体外受精と同じように精子と卵子を採取したのち、針の先端に1個の精子を入れ、顕微鏡で確認しながら卵子に直接注入する方法です。
こちらは体外受精と違い、精子が自力で卵子に辿り着く必要がないため、精子の運動機能が低く体外受精でもうまく受精できない方などに向いています。
また、精子の数が少ない方にも向いている方法となっています。
番外編:卵子凍結
「卵子凍結」この言葉、馴染みはありますか?
健康な卵子を早めに採取し、冷凍により長期間保管することを指します。
卵子の老化は避けられない自然現象ですが、この手段により高齢になったときの妊娠を視野に入れることが可能となります。
しかしながら、卵子の凍結による平穏な心情が、思わぬ形で妊娠に向けた取り組み期間の延長を招くこともあるのです。
そのため、自身に果たしてこの手段が必要かどうかを吟味することもかかせません。
卵子凍結を利用した妊娠成功率は、卵の採取時の年齢によって変動します。30歳以下で取り出した卵子における成功率はおおむね35%、31~34歳では30%、35~37歳では25%、38~39歳では20%となり、40歳以上では15%あるいはそれ以下となります。
卵子凍結の過程では、通常、排卵誘発剤を使用して多数の卵子を成熟させます。毎回の治療サイクルにおいて、4個から15個の卵子を取り出すことを目指しますが、具体的な数は個々の差によります。取り出す卵子の理想的な数は15個です。
年齢的な制約として、卵子凍結は一般的に39歳以下の女性が対象となっています。大半の場合、卵子は49〜50歳まで保管されます。
医療的なリスクとしては、卵子の採取過程における疼痛、出血、炎症、そして卵巣過剰刺激症候群があります。費用面では、採取費用は概ね20~50万円、卵子凍結の保管期間を延長するためにかかる年間費用は約2~3万円です。
※参考サイト:ミネルバクリニック、六本木レディースクリニック、Telling(朝日新聞)
不妊治療の保険適用について
不妊治療が長く続くと、心身への負担だけではなく、経済的にも負担がかかります。
妊活を進める方の負担が少しでも少なくなるよう、ここで不妊治療の保険適用について解説します。
対象治療法
保険適用となる不妊治療には大きく分けて2つの種類があります。
それが一般不妊治療と、生殖補助医療です。
一般不妊治療はタイミング法と人工授精、生殖補助治療は体外受精・顕微授精のことを指します。
また、これらに加えて実施されることのあるオプション治療というものも、保険適用される場合や、先進医療として保険診療と併用できるものがあります。
対象年齢
保険適用の不妊治療には、治療開始時において女性の年齢が43歳未満であるという年齢制限と、それに合わせて以下のような回数制限があります。
初めての治療開始時点の女性の年齢 | 回数の上限 |
40歳未満 | 1子ごとに通算6回まで |
40歳以上43歳未満 | 1子ごとに通算3回まで |
このように40歳になってしまうと回数の上限が減ってしまうため、39歳で不妊治療を検討している方は早めに治療を開始しましょう。
39歳で妊娠するために心がけること
39歳で妊娠を目指す方は、以下の項目を意識するようにしましょう。
できるだけ早く検査を受ける
加齢による妊娠率の低下は、年齢を重ねるごとに顕著になっていきます。
そのため、婦人科での診察、検査、相談をすぐに行い、できるだけ早く治療を始めましょう。
診察、検査をすることで現在自身のからだがどのような状況なのかを知ることもでき、それをもとに医師と治療方針を相談し、決めることができます。
高齢妊娠・高齢出産に関わるリスクを理解する
高齢での妊娠・出産はただ難しいものというだけではなく、リスクも多く存在します。
例えば高齢出産の場合に発症しやすい妊娠合併症です。
こちらは特に高齢になるとリスクが高くなるもので、重症化するとけいれんや脳出血、肝臓の機能障害などの可能性もあります。
また、早産や流産も体への負担が大きいため、これらのリスクをあらかじめ理解しておきましょう。
体を冷やさない
体の冷えは血液循環の悪化を引き起こしてしまい、生理不順や子宮内膜症、無排卵など妊娠を妨げるきっかけにもなりかねません。
体が冷える原因は様々あり、例えば運動不足や食生活の乱れ、ストレスなどが影響してきます。
まずは生活習慣を整え、体を冷やさないよう心掛けましょう。
規則正しい生活を送る
規則正しい生活リズムはからだのバランスを整えるためにもとても大切です。
特に睡眠は、エストロゲンという受精卵が着床しやすいようにする働きがある物質を分泌するため、睡眠不足が続くと子宮や卵巣に悪影響を及ぼす可能性もあります。
そのため、なるべく8時間程度の睡眠を取るようにし、規則正しい生活リズムを意識しましょう。
適度な運動をする
出産や産後の早期回復には適度な筋肉が必要ですが、筋肉は30代をピークに徐々に落ちていってしまいます。
そのため高齢妊娠の際は出産に時間がかかることが多いです。
妊娠後に急に運動を始めても逆にからだに負担がかかってしまうため、妊娠前から適度に運動をする習慣をつけておきましょう。
飲酒・喫煙などの習慣を見直す
主に男性側への影響ですが、喫煙はED(勃起不全)のリスクが高まるほか、精子の濃度や運動率が低下してしまう可能性があります。
また女性も妊娠後は飲酒喫煙が胎児に悪影響を及ぼしてしまうため、妊活の段階から飲酒喫煙の習慣を見直すようにしましょう。
食生活の改善
妊活において食生活で取り入れたほうが良い栄養素は多くありますが、その中でも特に大切なのが葉酸です。
葉酸の効果の中には「卵子の劣化を遅らせる」働きがあり、葉酸は卵子の劣化の原因の1つである身体の酸化を防ぐ役割があるのです。
葉酸は野菜や柑橘類、納豆などに含まれているほか、サプリでも摂取することができるので、適度に取り入れてみましょう。
まとめ
妊娠率の低下などは35歳を境に大きく下がり始めますが、40代に入るとさらに急激に下がります。
また、不妊治療の保険適用も40歳を越えてから初回治療を開始すると上限回数が減ってしまいます。
そういった意味でも39歳は節目の歳。
妊活を39歳から始める方は、素早い動き出しをしつつ、からだに無理な負担をかけないよう自分に合った妊活を進めていきましょう。
本記事の執筆者
ベビーライフ研究所編集部
ベビーライフ研究所では、妊活に取り組む多くのご夫婦に向けたタイミング法キットや栄養補給サプリメント等の商品を取り扱っています。
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本記事の監修者
藤本 彩巴(ふじもと あやは)
胚培養士。宮城県出身。
山形大学農学部食料生命環境学科卒業。
生殖補助医療胚培養士資格、体外受精コーディネーター資格を取得。生殖細胞の操作以外にも、患者様夫婦とお話をする機会があり、その際、不要な治療を続けているご夫婦が多いことに気がつき、現在は食事・運動・睡眠の見直しを促す発信をしている。不妊治療はあくまでサポートであり、対処療法に過ぎないため、本来の身体の機能を最大限発揮できるようなポイントを、ご本人の生活に寄り添った内容でお届けしている。