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卵子と精子が受精するまでの妊娠のしくみをわかりやすく解説
本記事の監修者
小谷 早葉子(こたに さよこ)
医師 西福山病院 女医による婦人科&妊活外来勤務
香川大学医学部卒業 医学博士(岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科卒業
生殖医療専門医 産婦人科専門医 女性ヘルスケア専門医
妊娠には、男性の精子と女性の卵子が必要です。男性の精子は性交によって女性の体内に入り、女性の卵子は卵巣から放出されます。精子が卵子に到達すると、1つの精子が卵子と結合し、受精が起こります。
健康な精子と卵子の数や機能は、妊娠にとってとても重要です。もし何らかの理由で精子や卵子が健康ではなかった場合、妊娠することが困難になることがあります。
この記事では妊娠においてとても重要である精子と卵子について、それぞれ解説していきます。
精子の大きさやつくられる仕組み
まずは精子について詳しく見ていきましょう。
精子は運動能力のある生殖細胞です。大きさ(全長)はおよそ0.06㎜。頭部・中片部・尾部の3つから構成されています。
- 頭部:受精時に精子と卵子を融合できる状態にする「先体」と、からだの設計図であるDNAを含む「核」からできています。
- 中片部:「ミトコンドリア」とよばれるエネルギーを作り出す小器官があり、卵子のもとへ行くための推進力に必要なエネルギーを作っています。
- 尾部:曲げ伸ばして運動し、推進力を生みます。
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精子はいつからどのくらい作られる!?
個人差はありますが、10才くらいから1日約5千万~数億個ずつ、死ぬまで作られます。
人生70年だとすると、男性が一生に作る精子の数は、1兆~2兆個にもなるのです。
今出た精子は「過去3ヶ月の体調」に影響される!?
精巣の中で精子は精子のもとから約74日かけて細胞分裂によって絶え間なく作られています。(*1)
見かけ上は一人前になった精子は、精巣上体で約2週間出番を待っている間に成熟して動き始めます。
このように精巣で精子が作られてから射精されるまでは約3ヶ月が経っていることになります。
ということは。。。
過去3ヶ月の体調が、今の精子の状態に影響をあたえる可能性があります。
もちろん精巣上体には成熟した精子がたくさんスタンバイしているので、立て続けに射精することができます。
*1)男を維持する「精子力」(ブックマン社)獨協医科大学越谷病院泌尿器科主任教授 岡田弘著
精子の役割とは~DNAの運び屋さん⁉
精子の役割は、からだの設計図の半分を持ち込んで、卵子の新しい生命活動のスイッチをオンにすることです。割とシンプルです。
もともと精子はDNAという設計図データを圧縮したものに、エネルギー源のミトコンドリアをくっつけて、更に動くためのしっぽをつけただけのようなものです。
ほかにも細胞分裂を正しく導く要素もありますが、DNA以外は、精子が卵子に行き届くためのものであり、DNAを無事運び込みさえすれば、あとは用済みなのです。
ただし、絶え間なく新しいものが大量に作られるということは、それだけ精子のDNAが多様性に富んでいるということが言えます。
射精直後の精子は、受精能力がない⁉~精子の長く過酷な旅
射精された精子は、卵子と出会うために、膣から入って、子宮内から卵管を目指して移動していきます。
1度に射精される精子の数は、数億個といわれていますが、女性の膣内は細菌やウイルスが侵入しないように酸性度の高い状態に保たれています。
膣に入った精子は、酸に弱いので、酸から精子を守るアルカリ性の液体(精漿/せいしょう:精液の精子以外の液体成分)に守られながらも、99%は子宮に到達する前にバタバタと死んでしまうのです。
しかも精子は女性の生殖器に入ってはじめて受精する能力を獲得します。実際能力を獲得するは射精後の5~6時間後。そしてその後30~40時間程度は受精能力を保持するといわれています。(*2)
幸運にも卵子の目前までたどり着けるのはおよそ数十から数百個程度といわれています。
*2)[受精・着床シリーズ]受精現象のメカニズムおよびその異常 杏林大学医学部 産婦人科助教授 神野正雄
卵子とは~生命の原材料のすべてが入っている~
次に卵子についてお話しましょう。
「精子」のお話の時には、精子はDNAの運び屋さんと卵子のスイッチをオンにする役割があるといいました。では、「卵子」とは何なのでしょうか?
「卵子」には、「精子」が運んでくるDNAの半分以外の、生命の原材料のすべてが詰まっています。
大きさについても、成熟した卵子はヒトの細胞の中で最大のものです。約0.12㎜と肉眼で見える唯一の細胞です。
以上のことからも卵子は妊娠の主役といえますね。
卵子はいつから作られる?
卵子はじつは、女性が赤ちゃんとして産まれる前の『胎児』としてお母さんのおなかの中にいるときに作られています。
しかも卵子の大もとの「原子卵胞」という形で、一生分がすでにちゃんとできあがっているのです。
女の子の胎児としてやっと形作られたころから、次の世代を産み出す準備をしているなんて、すごく不思議な感じがします。
卵子の数の変化~一番多いのは生まれる前!?~
下の表1をご覧ください。
なんと、卵子の数で一番多いのは、5~6ヶ月の胎児の時で、500-700万個あるといわれています。
ところが産まれるころには約200万個まで減って、さらに子どもを産める年齢になるころには10-30万個まで減っていきます。
さらに新たに作られることはなく、生理(月経)に関係なく1ヶ月で約1000個が減り続けていくのです。
卵子は選ばれしもの!?
思春期を迎えるまでずっと卵巣で蓄えられていた「原子卵胞」は生理周期とは無関係に活動し始め、1日30-40個、月1000個が育ち始めます。
ほとんどはすぐに消えてしまうのですが、ごく一部が数か月かけて成熟して大きくなります。そのため色々な発育段階の卵胞が卵巣には存在します。
その中で一番成熟した大きな卵胞の中の卵子1個だけが、月1回の周期で卵巣の壁を破って外に飛び出します。これが排卵です。
その卵子も、たまたまそのときの周期に合ったタイミングで発育しているものが選択されるので、エリートが選ばれるといったわけではないのです。
さらに排卵する卵子が決まると、残りはすべて消えてなくなってしまいます。
こうして一生に排卵される卵子は、ひとりの女性の生涯で400-500個といわれています。
精子と卵子の1分まとめ
精子まとめ
- 今射精されたばかりと思っていた精子は、じつは3ヶ月も前から準備されていた
- 精子が大量に作られ、億単位で射精される理由は、膣の中の厳しい環境を乗り越えるためだった
- 精子の大きな役割は、多様性を持つDNAの運び屋さんだった
- 精子の受精能力は女性器に入ってから5-6時間後からの50時間程度
卵子まとめ
- 卵子は胎児のときから作られる
- 卵子は増えることなく減っていく
- 卵子はタイミングに合った一番成熟したものが排卵される
- 卵子には生命の材料のすべてが詰まっている
本記事の執筆者
ベビーライフ研究所編集部
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本記事の監修者
小谷 早葉子(こたに さよこ)
医師 西福山病院 女医による婦人科&妊活外来勤務
香川大学医学部卒業 医学博士(岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科卒業
生殖医療専門医 産婦人科専門医 女性ヘルスケア専門医
大学卒業後、岡山大学産科婦人科学教室に入局し、関連病院にて産婦人科全般を幅広く研修。
岡山大学病院、岡山二人クリニックにて専門的な生殖医療、研究に従事した後、産婦人科医の少ない地元で地域医療を担うために現職へ。
幅広い年齢の女性の相談に乗りながら、専門的な不妊治療も行い、福山地区で初となるFT(卵管鏡下卵管形成術)を導入。
現在は、病気の根本原因を知るために分子栄養学を学んだ知識も生かし、Instagramで妊娠しやすい身体作りのための情報発信も行っている。