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タイミング法で妊娠しない原因は何?成功のコツと半年から1年で検討すること
本記事の監修者
大石 明代(おおいし あきよ)
看護師歴17年。
正看護師。静岡県出身。
妊娠を目指す方法の中でも比較的負担が少なく、主に自宅で行えるタイミング法ですが、繰り返し続けてもなかなか妊娠できないことももちろんあります。
なんで妊娠しないのだろう…なにか不妊の原因があるんじゃないか…と不安になるかもしれませんが、原因を突き止めれば様々な対処ができます。また、タイミング法の成功率を上げるコツもいくつもあります。
今回は、タイミング法が上手くいかない場合の原因と、どうすればタイミング法の成功率を上げられるのか、そのコツを紹介したいと思います。また、タイミング法に取り組み始めて、半年から1年経っても妊娠できない場合に検討したい次の治療ステップについても紹介します。
タイミング法で妊娠しない原因は?
通常、性交渉による妊娠の確率はどのくらいなのでしょうか。
一般的に、健康な男女が避妊をせずに性交渉を行い妊娠する確率は、月経1周期あたり20~30%と言われており、この確率は年齢とともに徐々に下がっていってしまいます。
タイミング法の場合、ある程度の回数を行っても妊娠しない場合は次のステップに移行する必要があるため、6ヶ月程度が実施の目安となっています。
タイミング法を重ねても妊娠ができない原因は、大きく分けて4つ考えられます。ここからはそれぞれの原因について見ていきましょう。
性交の回数は足りていない
タイミング法は、クリニックでの検査などから妊娠に1番適した日時を医師に指導してもらい、そのタイミングに合わせて性交渉を行う方法です。
たしかに妊娠しやすいタイミングではありますが、そこで行う性交渉の回数もとても大切です。排卵日に合わせて1回だけ性交渉をするのではなく、複数回タイミングをとると妊娠の確率が上がります。また、パートナーとタイミングが合わない、疲れていてあまり性交渉ができない、という方にはシリンジ法という方法がおすすめです。
シリンジ法は、マスターベーションで採取した精液を、シリンジ法のキットという針のない注射器のようなもので女性の膣に注入する方法です。性交渉をしなくてもタイミングに合わせた受精を目指せるため、シリンジ法の活用も検討してみるといいでしょう。
年齢が35歳以上
先ほども少し紹介しましたが、妊娠の確率は年齢を重ねるごとに下がっていき、特に35歳を越えてからは確率の低下が顕著になり始めます。
これは男性も同じであり、妊娠することができても高齢での出産には様々なリスクも伴ってきます。35歳を越えてからの妊娠率の低下は、主に精子や卵子の老化による質の低下にあります。
例えば男性の場合だと
・男性ホルモンの分泌量の低下
・精液量の減少
・精子数の減少
・精子の質の劣化
などが起こり、精子の奇形率増加や精子運動率の低下などから、上手く受精する確率が下がったり、性欲の低下にも繋がります。
女性の場合は
・女性ホルモンの分泌量の低下
・卵子の数の減少
・卵巣機能の低下
・卵子の質の劣化
などから妊娠率の低下や、流産のリスクの増加が引き起こされます。
また、卵子は男性の精子と違い新しく体内で作られることはないため、年齢とともに卵子の質は低下し妊娠率の低下に繋がります。そのため、35歳を越えてからタイミング法を始めた場合では、なかなか妊娠することが難しいのです。
他に妊娠を妨げる何らかの原因がある
タイミング法でなかなか妊娠できない場合、不妊症など何らかの原因がある可能性も考えられます。不妊症は主に①排卵障害②受精障害③着床障害の3つに分類されます。
これらは基本的に自覚症状もないため、検査をしなければ分かりません。そのため、不妊症に気付かずタイミング法を続けてしまう可能性もあります。不妊症は検査によって原因を発見することができる場合が多く、またそれに合わせた治療も医師と相談できるため、まずはクリニックにかかることを視野に入れましょう。
また、検査で異常がない場合でも、悪いところがないわけではなく原因がわからない「原因不明不妊」というものも存在します。その場合はより高度な治療をする場合もあります。
精液に原因がある
最後に紹介するのが、精液の問題です。
性交渉によって女性の膣内に射精ができても、精液になんらかの問題がある場合は、上手く卵子に辿り着けなかったり、うまく受精できない可能性があります。例えば無精子症という不妊症の場合は、精液の中に精子が1匹もいない状態であり、膣内に射精しても受精させることができません。また、精子無力症と呼ばれる不妊症になると、精子の運動率が悪く、卵子まで辿り着きづらくなってしまいます。
WHO(世界保健機構)では「1ミリリットル中に精子が1,500万以上、そのうち活発な動きをする精子(精子運動率)が40%以上いること」が自然妊娠に望ましい条件とされています。そのため、精子の数や運動率に問題がある場合はなかなか妊娠することができないのです。
このような精液の問題を事前に確認できるのが、精液検査です。精液検査では主に以下の項目を調べることができます。
・精液の量
・精子の数・濃度
・精子の運動率
・精子生存率
・精子の正常形態率
・白血球数
例えば精液の量が基準より極端に少ない場合は精索静脈瘤、逆行性射精、精のう欠損、射精菅閉塞などの可能性が疑われます。このように、これらの細かな項目から男性不妊の様々な原因を具体的に調べることができるため、ぜひ精液検査を受けてみましょう。
タイミング法で成功するコツと気をつけたいこと
タイミング法には、成功させるためのコツがいくつか存在します。ここからは、そのコツや合わせて気を付けたいことを紹介していきます。
また成功するための効果的な回数やスケジュールについて解説した記事もあわせてご確認ください。
義務的にならないような工夫
まず1つ目が義務的にならないような工夫です。妊活やタイミング法を続けていると、なかなか妊娠ができず焦りや不安が出てくることもあります。
早く妊娠しなきゃ…と焦ったりしてしまうと、次第に妊活や性交渉が義務的なものになってしまうかもしれません。そうすると、長く続けることが負担に感じてしまったり、パートナーと気持ちがすれ違ってしまうこともあるでしょう。
タイミング法は、妊娠しやすいタイミングを狙って性交渉を行う必要があるため、パートナーとの連携がとても大切です。タイミング法の実施を優先しすぎてお互いに負担にならないよう、パートナーと気持ちを確認し合いながら、時にシリンジ法も活用し、義務的にならないような工夫をしていきましょう。
性交の回数を増やす工夫
タイミング法は排卵のタイミングに性交渉を合わせることと同時に、その回数も重要です。排卵日は生活をしていく中で数日ずれることもよくあり、必ずこの日だ!と当てることはできません。そのため、排卵予定日の約1週間前から、排卵をしたと確信するまで、2~3日おきにタイミングを設けるのがベストです。
海外の調査研究によると、最も妊娠しやすいのは排卵日の前々日であり、次いで前日、その次に排卵3日前であることが示されています。1周期あたりの目安として、排卵の2日前までに1回+排卵2日前に1回の最低2回、タイミングがとれると妊娠率が上がるでしょう。
また、性交渉のほかに先ほど紹介したシリンジ法のキットを選択肢に入れることで、負担はそのままに回数を増やすこともできます。回数を優先しすぎて負担にならないよう、パートナーと相談しながら進めやすい方法を探しましょう。
おすすめのシリンジ法のキット シリンジ法のキットmeeta
男性に協力してほしいこと
ここからは男性に協力してほしいこと、気を付けてほしいことを紹介します。
まずは飲酒・喫煙の制限です。喫煙はED(勃起不全)のリスクが高まるほか、精子の濃度や運動率が低下してしまう可能性があります。また、喫煙によって精子のDNAが損傷し、流産や死産のリスクに繋がるほか、先天性異常のリスクも高まることがあります。
飲酒に関しては精子の質の低下など、悪影響があるというデータはありませんが、過度な飲酒をした場合、ED(勃起不全)を引き起こしてしまう可能性があります。飲酒・喫煙どちらも習慣的に行っている方は、すぐに全てやめることは難しいと思います。そのため、徐々に量を減らすことや禁煙外来にかかるなど、自分のペースで準備を始めてみましょう。
次に気を付けてほしいのが、睾丸を温める行為です。
睾丸は、温度が1度上がるだけで精子濃度や運動率に悪影響を及ぼしてしまいます。睾丸の温度が上がるのには①感染症などによる高熱②長時間のサウナ③膝の上でのパソコン④肥満などの要因があります。
特に、膝の上でのパソコンは日常的に行ってしまうことがあるかもしれません。精子の質の低下を防ぐためにも、日頃から気を付けるようにしましょう。また、下半身の圧迫も精巣には良くないため、スキニージーンズのようなぴっちりとしたパンツは避け、ボクサーパンツよりはトランクスを選ぶと良いでしょう。
そして最後に、生活習慣の改善です。
規則正しい生活は、自律神経を整え、神経伝達物質であるセロトニンの分泌を活性化します。セロトニンは睡眠ホルモンとよばれるメラトニンの材料になります。夜更かしや不規則な生活リズムによる体内時計の変化は、夜間に分泌される最強の抗酸化物質であるメラトニンの分泌に悪影響を及ぼし、精子の質の低下を引き起こしてしまいます。
また、セロトニンは幸せホルモンと呼ばれ、精神の安定にも役立っていますので、生活リズムの崩れや夜更かしによる寝不足は、セロトニン不足を引き起こし、ストレスにも繋がってしまいます。
このストレスから過度な飲酒をしてしまったり、喫煙されている方はタバコの本数が増えてしまうこともあるでしょう。そのため、生活習慣を改善するとともに、適度な運動やバランスのいい食事をとるなどして、妊娠に向けた身体作り、そして精子の質の低下を防ぐことを心掛けましょう。
治療のステップアップを検討してみる
タイミング法を続けても妊娠できない場合は次の治療へステップアップすることが必要です。最後に、この治療の段階について1つずつ見ていきましょう。
ステップ1)排卵誘発剤の使用を検討
あなたの体が排卵しにくい状態であったり、確実に排卵をさせたい場合に、医師から排卵誘発剤の使用を提案されることがあります。
排卵誘発剤とはその名の通り、排卵を促すための薬です。この排卵誘発剤には経口薬と注射薬があります。タイミング法を続けても妊娠できない場合排卵がうまく行われていないことがあるため、その際にはこの排卵誘発剤を使用します。
ステップ2)人工授精
それでも妊娠ができない場合、次のステップとして人工授精が存在します。人工授精では排卵日を特定しタイミングを合わせることに加え、精子を洗浄濃縮することで運動良好な精子を選び出し、直接子宮に精子を注入します。
そのため、精子に少し問題があっても行うことができるほか、タイミング法で妊娠しなかった方以外にも、以下のような方に向いています。
・精子減少症や精子無力症など、男性不妊症状がある
・性交障害や勃起不全
・精子の進入障害
・精子に問題はないがタイミング療法を6周期以上行っても妊娠が成立せず、体外受精を行うことには抵抗が強い方
ステップ3)体外受精・顕微授精
人工授精でも妊娠しない場合は体外受精・顕微授精へと進んでいきます。これらは今までの治療と違い精子と卵子どちらも採取し、身体の外で受精させたのち子宮に戻すという方法になっています。
体外受精はシャーレ上で卵子と精子を出合わせる方法で、顕微授精は顕微鏡下で精子を卵子に注入して受精させます。日本産婦人科の2020年度の調査によると、1回の胚移植当たりの妊娠率は36.0%となっています。年齢によって異なり、30歳で45.8%、35歳で40.6%、40歳で29.2%と妊娠できる可能性が高くなりますが、その分費用も高額になってきてしまいます。
どの治療法にもリスクや負担はついてくるものです。自身が取り組んでいる・またはこれから取り組む治療法にほどのようなメリット・デメリットがあるのか、しっかりと把握していきましょう。
まとめ
今回はタイミング法で妊娠できない原因と、成功のコツについてまとめてきました。タイミング法は不妊治療の中でも比較的手軽に、また費用も抑えて取り組むことができますが、妊娠ができない場合は治療をステップアップしていかなければなりません。
しかし、妊娠を目指すうえで自身の身体に合った治療法を見つけることは、妊娠の確率を少しでも上げるために非常に大切です。そのためにも、まずは検査で自身の身体がどのような状態なのか、どの治療法が合っているのかをしっかりと把握し、医師やパートナーと相談しながら進めていきましょう。
タイミング法をうまくいかせるためのQ&A
Q1.タイミング法を重ねてもうまく妊娠できない原因はなんですか?
タイミング法を重ねても妊娠ができない原因を考える場合、以下の4つの項目を見直してみると良いでしょう。
1. 性交の回数は足りているか(排卵日に合わせて1回だけ性交渉をするのではなく、複数回タイミングをとると妊娠の確率が上がります。)
2.年齢は35歳以上の場合(主に35歳以上になると精子や卵子の老化により質が低下していきます。それにより様々な要素において妊娠率が低くなる可能性があります)
3. 妊娠を妨げる何らかの原因がないか?(不妊症など何らかの原因がある可能性も考えてみる。不妊症は主に①排卵障害②受精障害③着床障害の3つに分類されます。これらは基本的に自覚症状がないため原因を明確するには検査が必要です。)
4.精液に問題がないか?(性交渉によって女性の膣内に射精ができても、精液になんらかの問題がある場合、うまく受精できない可能性があります。WHO世界保健機構では「1ミリリットル中に精子が1,500万以上、そのうち活発な動きをする精子(精子運動率)が40%以上いること」が自然妊娠に望ましい条件とされています。そのため、精子の数や運動率に問題がある場合はなかなか妊娠することができないのです。このような精液の問題を確認するためには精液検査を受けるのがおすすめです。)
Q2.タイミング法で成功するコツや気をつけることはありますか?
まず1つ目が義務的にならないような工夫です。
早く妊娠しなきゃ…と焦ったりしてしまうと、次第に妊活や性交渉が義務的なものになってしまうかもしれません。タイミング法は、妊娠しやすいタイミングを狙って性交渉を行う必要があるため、パートナーとの連携がとても大切です。
タイミング法の実施を優先しすぎてお互いに負担にならないよう、パートナーと気持ちを確認し合いながら、時にシリンジ法も活用しながら義務的にならないような工夫をしていきましょう。
2つ目は性交の回数を増やす工夫です。排卵のタイミングに性交渉を合わせることと同時に、その回数も重要です。
排卵予定日の約1週間前から、排卵をしたと確信するまで、2~3日おきにタイミングを設けるのがベストです。海外の調査研究によると、最も妊娠しやすいのは排卵日の前々日であり、次いで前日、その次に排卵3日前であることが示されています。
1周期あたりの目安として、排卵の2日前までに1回+排卵2日前に1回の最低2回、タイミングがとれると妊娠率が上がるでしょう。
Q3.タイミング法を続けても妊娠できない場合の次の治療としてどのようなものがありますか?
タイミング法を続けても妊娠できない場合は、下記のような次の治療へステップアップしていくことが必要です。ステップ1)排卵誘発剤の使用を検討する ステップ2)人工授精を検討する ステップ3)体外受精・顕微授精を検討する
どの治療法にもリスクや負担はついてくるものです。自身が取り組んでいる・またはこれから取り組む治療法にほどのようなメリット・デメリットがあるのか事前にしっかりと把握していきましょう。
本記事の執筆者
ベビーライフ研究所編集部
ベビーライフ研究所では、妊活に取り組む多くのご夫婦に向けたタイミング法キットや栄養補給サプリメント等の商品を取り扱っています。
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本記事の監修者
大石 明代(おおいし あきよ)
看護師歴17年。
正看護師。静岡県出身。
静岡県立国際関係学部卒業。
社会人経験を経て看護学校に入学。卒業後、看護師となる。
現在産婦人科クリニックに勤務。自身も不妊治療経験者。
高度生殖医療は卵子と精子を出会わせてくれる手段であり、大切なのは自身の身体の力を高めること。
言われるがままの不妊治療では心身共に疲弊し、金銭的な不安も大きくなることから、妊娠の土台となる普段からの食事や運動、睡眠、心の持ち方が大事と考え、妊娠する力を高めるための発信の他、マンツーマンでの講座や施術を行っている。