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精子の寿命は?射精後に妊娠しやすいタイミングや精子の疑問を徹底解説
本記事の監修者
小谷 早葉子(こたに さよこ)
医師 西福山病院 女医による婦人科&妊活外来勤務
香川大学医学部卒業 医学博士(岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科卒業
生殖医療専門医 産婦人科専門医 女性ヘルスケア専門医
いつの間にかからだの中で作られている精子。気付いていないだけで、毎日たゆまず精子の生産は続けられています。
そんな精子の一生をみなさんはご存知でしょうか。自分のDNA情報を女性の卵子まで届ける、いわば「分身」ともいえる精子の一生や寿命について、詳しくご紹介します。
また、精子の寿命などから考えられる妊娠しやすいタイミングについても考えていきましょう。
精子の寿命は1週間?
精子の寿命は1週間と耳にしたことがある方も多いかもしれません。
実際、精子は射精しないでいると数日でだんだん劣化していき、1週間ほどで死んでしまうと言われています。
まずはこの精子の寿命について詳しく見ていきましょう。
精子が元気な期間
精子は毎日毎日作られるため、射精されなければどんどん古くなっていきます。この精子の劣化は3日ほどで始まるとされています。
そして古い精子から死んでしまい、タンパク質系の老廃物として体内に吸収されてしまいます。この精子の寿命が約1週間と言われているのです。
そのため、精子は常に新鮮なものが射精されるようになっています。
また、射精後の精子は、外気の中では数時間しか生きられません。しかし女性の膣内に入ると3日から5日程度は生きていられると言われています。
女性の体内に射精された精子は射精後から5~6時間で、精子貯蔵所の役割があるとされる頸管粘液(けいかんねんえき)で一時的に蓄えられ、持続的に供給されます。
そして、48時間経過した時点から徐々に老化していきます。頸管粘液は、子宮の入り口である子宮頸管を満たしている液体です。
結果として、精子は女性の膣内では女性ホルモンの影響もあり3日から5日程度は生きていられると言われています。その間に卵子と出会えれば受精する可能性も高くなります。
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▼よくある質問
射精後、1番妊娠しやすいタイミングは?
実は精子は射精された段階では卵子を受精させる能力を持っていないと言われています。
男性のからだの中で貯蔵されている間もテストステロンという男性ホルモンの影響を色濃く受けて成長しますが、実は女性のからだの中でも成長を続けます。
女性の子宮や卵管を通る段階で、プロゲステロン(黄体ホルモン)という女性ホルモンの影響を受け、卵子の表面を溶かして内部に入り込む力を蓄えると考えられているのです。
そのため、射精直後の精子は受精能力に欠けており、女性の体内に取り込まれて5~6時間たったころから、受精する力が備わります。
精子も射精後時間が経つほど衰えていくため、受精能力を備えた射精後6時間から3日後の72時間後まで、約60時間前後は受精する力を持っていると考えられるのです。
しかしこれはあくまでも精子の視点での妊娠しやすいタイミングであり、妊娠には排卵のタイミングや卵子の寿命など、女性側の妊娠しやすいタイミングも非常に大切です。
そのため、次は妊娠しやすい「夫婦のタイミング」について見ていきましょう。
妊娠しやすい夫婦のタイミング
男性の精子は基本的に毎日作られており、射精によって出すことが可能ですが、女性はそうはいきません。
女性の卵子は生まれた時点で数が決まっており、排卵という工程を経て排出されます。
またこの排卵後の卵子にも妊娠しやすい期間があるため、精子の寿命などと合わせて夫婦での妊娠しやすいタイミングを考えなければなりません。
卵子の寿命と排卵のタイミング
女性は基本的に、約28日前後の周期で排卵を行うサイクルを繰り返しています。
卵子はこの排卵から約12~24時間が寿命と言われており、しかも受精しやすい時間は排卵後6~8時間と言われています。
この24時間のあいだに精子と出会えなかった卵子は体外に排出され、その後月経がはじまりリセットされる、という仕組みです。
詳しくはこちらをご覧ください。
妊娠しやすいタイミング
ここまで紹介してきた精子と卵子の寿命や排卵のタイミングを考慮すると、妊娠しやすいタイミングは「排卵日の前日から当日にかけて」が1番だと考えられます。
そうすると受精できるタイミングは、月に1~2日間しかありません。それを考えると、受精のチャンスはとても貴重ということが分かりますね。
しかも、精子は射精され、生きているうちに卵子に出会うことができれば必ず受精させることが可能というわけではありません。
精子と卵子が受精するまでの妊娠の仕組みについては、こちらの記事に詳しくまとめていますのでぜひご覧ください。
知っておきたい精子の一生
ここまでは精子の寿命や妊娠に適したタイミングなどについて考えてきましたが、ではそもそも精子とはどのようにつくられ、どのような一生を送るのでしょうか。
ここからは精子の一生について見ていきましょう。
精子ってどこで作られているの?
精子が作られているのは、精巣の中です。精巣はからだの外側にある睾丸の中で守られています。からだの外側にあるのに「守られている」というのも不思議な話ですよね。
精子はとても熱に弱く、体内に存在すると上昇した体温でもダメージを受けてしまうことがあるのです。そのため、からだの外側にぶら下がる形で、熱から守られています。
精巣の中には、精細管という非常に細い管が約1000本ほどギッシリと詰まっています。精細管は精子を作るための器官で、管のひとつひとつが精子の製造工場になっています。
ここで精子は作られているのです。
精子ってどうやって作られるの?
男の子が思春期ごろになると、精巣が精子を作り始めます。精細管には、ひとつひとつに精子の原細胞が発生します。
精祖細胞と呼ばれる細胞から、精原細胞、そして精母細胞へと分裂をしていきます。精母細胞からは精娘細胞となり、さらに精子細胞となります。
ひとつの精母細胞から4つの精子が作られます。精祖細胞から精母細胞に至るまでには6回もの細胞分裂を行い、64個の精母細胞になります。
ひとつの精祖細胞は、最終的に256個の精子になります。精母細胞から精子に至るまでは減数分裂と呼ばれる、染色体が半分に分かれる細胞分裂を起こします。
こうして、卵子と合わさってひとつの「受精卵」となる準備が整っていきます。
精祖細胞から精子に成長するまで、なんと74日間もかかります。
精子は成長すると精巣のすぐ近くにある精巣上体という場所に移り、そこにある男性ホルモンによって受精能力や運動性などを身につけます。
その後、精管と呼ばれる尿道まで続く40cmもある管を通り、精嚢と呼ばれる膀胱の近くにある場所へと到達します。
精管を通り抜けるまでには、14日もの時間がかかります。精祖細胞から精子として精管の旅を終えるまでには、3ヶ月もの長い長い旅になるのです。
成長した精子は、0.06mmほどの大きさです。核としてDNAを運ぶ頭部の細胞質、エンジンとなるミトコンドリア、泳ぐための鞭毛からできています。
とにかく前進して泳ぎ、卵子に出会ったらその表面を溶かす酵素を出して受精するための能力に特化した姿です。
精子から精液へ
精子は前立腺に後ろにある袋状の器官「精嚢」で精嚢の分泌物と混じります。さらに前立腺で分泌される前立腺液や尿道腺液などとまじりあい、精液となります。
一度に射精される精液量は、だいたい3~4mlと言われています。実はそのうちのほとんどが精嚢腺液で、さらに前立腺液と尿道腺液が1mlを占めます。
精液の中に含まれる精子は、たった1%程度の量に過ぎないのです。
しかし、精子を泳がせているこの分泌物には、精子が卵子にたどり着くための新たな旅に欠かせないものがたくさん含まれています。
精嚢腺液は酸性に弱い精子を守る弱アルカリ性で、精子の運動エネルギーとなる果糖やたくさんのタンパク質を含んでいます。
前立腺液は粘り気があり、クエン酸、亜鉛やポリアミンなどを含みます。クエン酸は精液をアルカリ性に保ち、亜鉛は精子の運動性を促進させる、必要不可欠な成分です。
精子が射精されるまで
作られた精子は、精巣から精巣上体と呼ばれる精巣の上にある器官「精巣上体」へと運ばれます。精巣上体は副睾丸とも呼ばれており、精子が一時的にプールされる場所です。
なんと10億もの精子を貯めておけると言われています。精巣上体は、蛇行した5~6メートルの管になっています。
精巣上体は頭部・体部・尾部の3部分に区分されており、未熟な精子はこの中を10日近くかけて移動します。
精巣上体にはタンパク質などの分泌やカルニチン・イノシトールなどの濃縮が行われ、ここを通過する間に精子はテストステロンのシャワーを始めさまざまな物質の影響を受け、成熟した精子として運動性や受精能力の基礎などを身につけていきます。
また精巣上体には、精子を老化させる活性酸素から守る働きがあります。
精巣上体の機能が不十分だったり、精巣上体内で精子が充分成熟できなかったりする、なんらかの原因があることが男性不妊に影響を及ぼすことも考えられているのです。
精巣上体に貯められた精子は、どうやって射精されるのでしょうか。男性が性的興奮を覚えると、睾丸がせりあがって陰嚢が引き締まります。
同時に、精嚢や前立腺から液体が分泌されます。
精嚢から分泌される精嚢腺液は精液の6割以上を占める粘り気のあるアルカリ性の粘液です。
精嚢腺液には、自身は栄養のタンクを持たない精子の栄養源となる果糖が多く含まれており、ヒアルロン酸が含まれているのでゼリー状になっています。
前立腺からは、前立腺液が分泌されます。前立腺液は精液の3割程度を占める成分で、白い粘り気のあるアルカリ性の液体です。
前立腺液には滋養強壮や新陳代謝に欠かせないスペルミンと呼ばれるポリアミンの一種が含まれており、さらにセックスホルモンと呼ばれるほど男性の性的能力に欠かせない亜鉛が高濃度で含まれています。
精子は精管と呼ばれる長い管の中を「運ばれて」進みます。
精管の中を泳ぐのではなく蠕動(ぜんどう)運動によって運ばれることで、無駄なエネルギーを使うこと無く男性の体内最後の旅に出ます。
この旅の終わりは、精管膨大部に貯蔵されるところです。本当に男性が射精をする時になると、前立腺の筋肉が収縮し、尿道をふさぎます。
すると前立腺や精嚢から分泌されたそれぞれの分泌液に、精子が混ざりこんで精液が完成します。
前立腺の筋肉が激しく収縮することで、射精管から勢いよく精液が射精されるのです。
精子が卵子と出会い受精するまで
精液はアルカリ性でできているゼリー状で、精子を包み込んで守ります。精子は熱にも酸にも弱いのですが、女性の膣内は感染予防のために弱酸性に保たれています。
この環境は精子にとって厳しいため、精液はアルカリ性になっているのです。
また精嚢腺液内の果糖を栄養に精子はエネルギーを得て、前立腺液の中の亜鉛などの成分をたっぷり吸収して、精子は運動率を高めます。
女性の膣の中で射精をした場合、女性の膣の内壁からも性的興奮とともに粘性のある分泌液が出てきます。
この分泌液は性交をスムーズにすると同時に、普段は酸性に保たれている膣内をアルカリ性にする働きがあります。
さらに性的興奮によって、女性の子宮口が膣の方へと降りてきます。
そこに勢いよく射精が行われることで、子宮口が精液に浸かる状態になり、精子が子宮の中へとより早く導かれるようになります。
粘性の高い精液に守られていた精子ですが、30分もすると精液はサラサラに変わります。
そして子宮頸管の中へと侵入した精子たちは、卵子を目指して一心不乱に子宮の中をまっすぐ泳ぎます。
そのまま子宮から、卵管に入り卵管膨大部まで到達したときに、卵巣から吐き出された卵子と幸運にも出会うことができたら、精子はさっそく受精の準備に入ります。
実は子宮は精子を迎え入れるために蠕動運動(ぜんどううんどう)をして、精液をスポイトのように吸い上げ、精子の運動をサポートします。
さらに子宮頸管の中にはさらさらな分泌液が分泌され、精子の泳ぎを助けます。
また、精子は女性の体内に入ると、黄体ホルモンという女性ホルモンにさらされることで影響を受け、受精力を完成させると考えられています。
卵子に出会った精子は、培った能力を駆使して卵子の表面を少しずつ溶かします。そして、たった1匹だけが卵子の中へと入りこみ、見事に受精を遂げるのです。
精子の疑問を徹底解説
ここまでで、精子がどのような一生を送るのかわかっていただけましたでしょうか?
ここからは精子の一生を踏まえて、様々な疑問について解説していきたいと思います。
精子のかたちの特徴と精液内の精子の数は?
精子は、ご存じの通りオタマジャクシのような形をしています。その精子の各部分の役割について見てみましょう。
まず頭部にあたる部分には、大切なDNA情報、染色体などが詰まっています。
身体の部分に集まっているのはミトコンドリアで、ここをエンジンとして鞭毛(べんもう)というしっぽを元気に動かして子宮の中を泳ぎます。
このように精子は、各部分がそれぞれのはたらきをしながら卵子を目指していきます。
続いて精子の数に注目してみましょう。
精子は、一度に射精される3~4mlの精液中にはたった1%しか存在しないにも関わらず、なんと1~4億個も含まれています。それほど精子は小さな存在なのです。
しかし卵管までたどり着ける幸運な精子は、たった100~200個。それまでの長い旅路の間に死んでしまったり、運動性を失ってしまったりしてどんどん減ってしまいます。
しかも卵子は1匹の精子を受け入れたとたんに表面の性質を大きく変化させてしまい、他の精子の侵入を許しません。
そのため精子が射精後どれくらい長く前へと泳いでいられるか、また精子のうち、どれくらいの割合で強い前進力を持つものがいるのか、という「運動率」は、精子の質の中でも大変重要なものとなっているのです。
精子が作られるサイクルはあるの?
精子は精原細胞が分裂を始めてから74日間かけて作られます。その間には、曲精細管や精巣上体、精管など非常に長い旅路をたどります。
ですが、精液としてすべてが射精されるわけではありません。
また、せっかく女性の体内に射精されても、卵子とめぐり合えずに死んでしまう場合も多いのです。
精子が作られる74日間という長いサイクルを考えると、たった数日の受精可能なタイミングに合わせて次々と新鮮な精子が作られ続けなければならない理由がわかりますよね。
「なんだかすごく多すぎて無駄なのでは?」と感じるかもしれませんが、精子に与えられた旅の過酷さと生存競争の激しさは途方もないものなのです。
射精されないままの精子はどうなるの?
精子は射精の時を精管膨大部と呼ばれる貯蔵庫にて待ちます。しかし射精されないまま貯蔵されていると、3日ほどで劣化し、1週間ほどの寿命で死んでしまいます。
そして死んでしまった精子はその後、体内に吸収されてしまいます。
さらに性交もせず、マスターベーションもせずに長い間作られた精子が死んで吸収されることを繰り返していると、精巣は「精子を作っても使わないの?もういらないの?」と捉え、精子づくりをサボりはじめます。
基本的に精子は思春期から男性が生きている限り作られ続けますが、精巣がサボりはじめると精子量が減ってしまいます。
精子量が減れば、もちろん妊娠させる力にも悪影響が出てしまいます。
射精できるのに受精できないケースはあるの?
射精できるのに受精できないというケースは実際に多く、このような場合精子になんらかの異常があると考えられます。
その際に医師に診断されることの多い症状の名前をご紹介します。
- 乏精子症…精子の数が非常に少ない状態
- 無精子症…精液内に精子が居ない状態
- 精子無力症…精子の運動率が非常に低い状態
- 精索静脈瘤…精巣の静脈に血液が逆流する、乏精子症などの原因になる病気
- 造精機能障害…何らかの原因で健康な精子がちゃんと作られない状態
これらが主に見られる精子の異常や精子の異常を生み出す原因の病気です。もちろんほかにもさまざまな原因が存在します。
これらは泌尿器科やメンズクリニックなどできちんと検査をしてもらわなければわかりません。
ここで、精子の正常値を知っておきましょう。
- 精子濃度が1mlあたり1600万以上
- 射精後2時間以内で前進運動をする精子が42%以上
- 正常な精子が4%未満の場合は奇形精子症とされる
(2021年WHO基準)
こうした正常値に満たない場合、上に挙げた精子の異常や、その原因となる病気などが潜んでいる可能性があると言えます。
精子の異常って?
精子に起きる異常は、先ほど紹介したような病気であり、症状を細かく上げると以下のようなものがほとんどです。
- 精子がいない
- 精子がいるが、ほとんど動かない
- 精子があまりいない
- 元気な精子があまりいない
- 精子が射精後すぐに動かなくなってしまう
- 正常な形の精子がほとんどいない
中でも特に注目したいのが精子の濃度と精子の運動率、そして奇形率です。精子は少なくとも1回の射精において6000万~1億くらいは存在しなければ受精に至ることが難しくなります。
またまっすぐに力強く泳ぎ続ける「運動率」も、精子の質に非常に大きく関係します。精子がいくらたくさんいても、全然動かなければ卵子にまで到達できません。
精子には奇形が多く存在する?
精子は正常なものが4%を切ると「異常」と診断されます。つまり、精子には奇形が多く存在するということになります。
実は正常な男性の精液に含まれる精子でさえ、80%は奇形が見られると言われています。
(エスセットクリニックhttps://sset-clinic.com/guide/kikei_seisi.html)
「奇形」と言われると非常に恐ろしい病気と感じてしまいますが、実際には奇形の精子から必ず奇形児が生まれるというわけではありません。
奇形の精子は前進力が弱かったり、無事に受精ができなかったり、受精しても流産の原因になってしまうなど、妊娠させる力が欠けている場合が多いのです。
正常な精子は、頭の部分、つまりDNA情報や染色体を積んでいるもっとも重要な部分がきれいな楕円形をしています。
ですが奇形精子症の場合、頭の部分が細すぎたり、大きすぎたり、未成熟で丸かったり、つぶれていたりします。二つ頭のある精子がいることもあります。
こうした奇形の精子は、内部で核がつぶれてしまっていたり、変形してしまっていたりする可能性が高くなり、自然と妊娠させる力が落ちてしまうのです。
この異常は病院で顕微鏡による検査をしてみなければわかりません。
精子の奇形を専門的に「治す」ことは難しいそうですが、健康な精子を生み出し、育てて優秀な精子を多く送り出せる体内環境を整えることができれば、少しずつ改善していくと考えられます。
奇形精子症についてはこちらの記事をご覧ください。
精子のコンディションは人それぞれ
ここまで紹介してきたように、一言で精子と言っても精液中の精子の数や運動率、奇形率などそのコンディションは人それぞれです。
もちろん、女性の卵子や子宮内のコンディションも人それぞれで、せっかく精子に出会えてもコンディションが整っていなければ妊娠することはできません。
精子はすべて正しく「コピー」されるわけではない
精子の中には、男性の持っているDNA情報のうち半分が詰まっています。それが卵子の持っている女性側のDNA情報と出会い、ひとつの受精卵となって細胞分裂が行われます。
そのメカニズムはとても精密なものです。精子が持っているDNA情報にコピーミスがあれば、受精はうまく行きません。
そればかりでなく、精子が作られる段階で精原細胞から精子に至るまでの間になにかコピーミスや操作ミスがあれば、精子は正しく機能するように作られなくなってしまいます。
たとえば、精子はどこまでもまっすぐに突き進む性質を持っています。
しかし正しく作られなかった精子の場合、鞭毛の動きがすぐに衰えてしまうものがたくさん生まれたり、ほとんどの精子が運動性を持たなかったりすることもあります。
精子のうち、充分な運動率を持っているものが42%を切る、あるいは前進している精子が30%を切ると、精子無力症という不妊症の一種と診断されます。
また基準はいくつかありますが、形に異常がある精子が精液の中の精子の96%以上を占めた場合に、病院では「奇形精子症」(精子奇形症)と診断されることが多いようです。
精子自体の数が非常に少ないケースもあります。
これらは造精機能、つまり精子を作る機能の異常で起こります。その他に、精子が旅をする精管などに生まれつき欠損(とぎれ)があり、精子がきちんと送り出されないと無精子症という不妊症と診断されることもあります。
射精できるからといって、精子が元気とは限らない
男性に知っておいていただきたい事実のひとつに、「射精できるからといって、精子が元気であるとは限らない」ということがあります。
精子に関する病気は、ほぼ自覚症状はありません。勃起障害を抱えていなければ、普通に射精もできます。
射精もでき、一見普通の精液が出ていれば「自分に問題がある」とは思えませんよね。でもご紹介したように、精液のほとんどが分泌液。
精子はそのうちの約1%に過ぎません。目で見てわかる違いではないのです。
まずは自分のコンディションを知ろう
そこで、まずは女性のパートナーとともに妊活のための検査を受けることが重要なのです。
産婦人科でも受けられますし、泌尿器科や男性専門のメンズクリニックも増えつつあります。
またサプリメントを購入すると、精子の検査キットがついてくる商品もあります。
不妊症に悩むカップルのうち、約半数は男性に原因が存在します。不妊原因を抱えている男性のうち、約10%の精液には精子が存在しない無精子症という調査結果もあります。
また一見健康な男性であっても、精液や精子にまったく異常がみられない男性は5割から6割程度と言われています。
つまり、男性の約半分は精液や精子になんらかの問題が見られるということです。
男性不妊は、勃起障害やセックスレスなどが無い限り、検査しなければまず原因はわかりません。
原因がわかれば治療方法も模索できますし、現在は多くの方が治療の末に嬉しい結果を手にしています。
ストレスやタバコの影響
ストレスは、男性の健康を大きく蝕みます。ストレスといっても、さまざまなストレスが存在しますね。
- 肉体的なストレス
- 精神的なストレス
- 環境ストレス
肉体的なストレスは、過労や睡眠不足、睡眠の質の低下、運動不足、乱れた食生活や喫煙習慣、老化といったさまざまな要因です。
働き盛りの男性なら、ひとつふたつは思い当たることがあるのではないでしょうか。
精神的なストレスは仕事のストレスや夫婦関係、人間関係のストレスなどです。特に「妊活・不妊治療に対するストレス」はかなり大きなもの。
「今日がタイミングの日だから」と朝奥様に声をかけられただけで緊張したり、うんざりしたり、ストレスを感じて萎えてしまう男性も少なくありません。
環境ストレスは一般的に暑さや寒さなども指すのですが、この場合は環境ホルモンを指しています。
ダイオキシンなどの環境汚染によって、ここ数十年のスパンで男性の精子の量が減ってきているという研究結果も出ています。
ストレスは体内に活性酸素を増やし、DNAなどの遺伝子のコピーミスを起こしたり、新陳代謝が衰えて老化が進んだり、さまざまなダメージを及ぼします。
そのため、ストレスフルな生活自体が、精子の質を落とす原因になっていると言えます。
また、普段タバコを吸われている方は、妊婦さんやお腹の赤ちゃんにも、生まれてからの赤ちゃんにとっても非常に悪い影響を与えることを再確認しましょう。
妊婦さんや赤ちゃんがタバコの副流煙を多く吸い込んでしまう環境下にあると、乳幼児突然死症候群のリスクが高くなります。
またタバコを日常的に吸っている男性の精子は、確実に質が落ちます。活性酸素を増やし、肺を毒素で満たす、百害あって一利ないものです。
赤ちゃんがハイハイするようになれば誤飲の原因にもなります。
まずは妊活・不妊治療をきっかけに禁煙してみましょう。ほかに病気が無ければ、それだけで低かった精子の質や量が、正常値に戻る可能性があります。
健康的な精子を作るために
では健康的な精子を作るにはどのような取り組みが必要なのでしょうか?
まずは先ほど紹介したように、精子に悪影響となるストレスを減らす取り組みです。
生活習慣を改善することや、適度な運動や趣味に取り組むことで少しずつストレスを解消していくことはとても大切です。また、食生活において精子の質を向上させるなどの効果を持つ栄養素を取り入れることも非常に重要となってきます。
ですが、なかなか毎回の食事において、栄養素を意識することは大変ですよね。そういった方におすすめなのが、サプリメントを使って足りない栄養素を補う方法です。
例えば精子に必要と言われる亜鉛などは牡蠣などの魚介類に多く含まれますが、吸収率があまりよくありません。そのため、サプリメントを使用することで効率良く体内に取り入れることができます。
また、精子の質に影響を与えている可能性が示唆されているコエンザイムQ10も、還元型のサプリメントを使用することでダイレクトに体内で働いてくれます。
これらのサプリメントについては以下の記事にまとめてありますので、ぜひご活用ください。
そして精力に影響するとしても有名なマカですが、マカにはアミノ酸やミネラル・ビタミンが非常に豊富に含まれており、実際に健康維持や男女の妊娠力向上に役立つと考えられています。
こちらも多くのサプリメントに使用されておりおすすめです。詳しくはこちらをご覧ください。
このように、精子の質の向上には様々な栄養素が関わっており、サプリメントを使用することで負担も少なく取り入れることが可能となっています。
これからサプリメントに取り組んでみようという方は、ぜひこちらの記事を参考にしてみてください。
精子に不安がある方へ
ここまで精子の一生や寿命、そして精子の異常について見てきて、自分の精子は大丈夫かな…と不安になられた方もいるかもしれません。
そんな方はまず、クリニックで精液検査を行ってみましょう。
精液検査とは、1回の射精における精液の量と、精液内の精子がどのような状態なのかを調べることが目的の検査です。
精液検査は以下の項目を調べることが可能となっています。
- 精液量
- 精子濃度
- 総精子数
- 正常精子形態率
- 前進運動率
- 総運動率
- 白血球数
これらの数値を正常値と比べることで、自身のどこに問題があるのかがわかり、その結果から様々な選択肢へ進むことができます。
精子の質は年齢によっても低下していってしまうため、まずは早めの検査を心掛けましょう。
健康な精子と精子の寿命を知って、タイミングよく妊活しましょう
実は精子が原細胞段階から射精され、受精能力を身につけるまでの遠い旅路については、まだ研究段階。詳しいことがはっきりわかっているわけではありません。
妊娠には神秘的な「神の領域」がまだ残されていると言えるかもしれません。
しかし、これだけは確かと言えることがあります。それは「質の良い精子は健康な男性のからだで、良質な食生活の結果育まれる」ということ、そして「質の良い精子への道は、1日にしてならず」ということです。
質の良い、受精能力の高い精子をたくさん生産するためには、まず3ヶ月以上は生活習慣・食生活習慣を改めなければ結果を得ることはできません。
そうして健康な精子をどんどん生産しても、禁欲が長すぎて射精が行われないと生産能力自体が衰えていきます。
健康な精子が生まれてから受精できるタイミングは月にたった2日。そこを女性の排卵日に合わせるためには、適度にパートナーと触れ合いを持ち、生活・食生活を見直してみることが必要なのです。
本記事の執筆者
ベビーライフ研究所編集部
ベビーライフ研究所では、妊活に取り組む多くのご夫婦に向けたタイミング法キットや栄養補給サプリメント等の商品を取り扱っています。
私たちが長年培ってきた妊活の知識や経験を活かして、より多くの方に正しい情報を発信いたします。
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本記事の監修者
小谷 早葉子(こたに さよこ)
医師 西福山病院 女医による婦人科&妊活外来勤務
香川大学医学部卒業 医学博士(岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科卒業
生殖医療専門医 産婦人科専門医 女性ヘルスケア専門医
大学卒業後、岡山大学産科婦人科学教室に入局し、関連病院にて産婦人科全般を幅広く研修。
岡山大学病院、岡山二人クリニックにて専門的な生殖医療、研究に従事した後、産婦人科医の少ない地元で地域医療を担うために現職へ。
幅広い年齢の女性の相談に乗りながら、専門的な不妊治療も行い、福山地区で初となるFT(卵管鏡下卵管形成術)を導入。
現在は、病気の根本原因を知るために分子栄養学を学んだ知識も生かし、Instagramで妊娠しやすい身体作りのための情報発信も行っている。